栃木県の認定農業者さんたちに講演をしてきた。当日、控え室に入ると、認定農業者の優良事例に対する表彰を行う来賓の方々がいる。すこしして、恰幅のよい方がいらっしゃり、この方が会長さんだということで名刺交換。
うーん、俺はこの人と会ったことがあるような、ないような、、、
世間話は当然、安倍政権がいきなり出してきた農政改革方針に関するもの。農政にあまり通じていない人にはわからないだろうが、戦後農政の中でも一番か二番目に大きな改革をしようとしているのである。
当然、現場は大混乱だ。政策を決める側は発令するだけでいいが(もちろんだけ、ではないのだが)、それを農業者達に説明し、事務処理を行うのは自治体である。しかも山のように問い合わせは来るにも関わらず、説明できる情報はいつまでたっても降りてこない、という状況で、彼らも本当に大変だ。
「いやしかしね、私が農林水産副大臣をしている時に、いろいろと制度改革をやったけど、今回のはちょっとスゴイね。竹中平蔵だってここまではやらなかったよ。」
とおっしゃったのを聴いて、脳裏に彼の顔がフラッシュバックする。
国井正幸さん——そうだ、僕はこの方が農林水産副大臣の時代に、たしか僕が所属する「農政ジャーナリストの会」で政策についての話しをしに来てくれたのだ。その時、こんな人が副大臣なら大丈夫だな、と安心感をもったことを覚えている。
「おお、そうでしたか、、、まあ今は私も代議士ではありませんけど、地元栃木の農業団体の会長をやらせていただいてます。」
その後、ぽつりぽつりと、自民党小泉政権時代以降の農政がらみのトピックについて、大変面白い話を聞いた。あの法案はすんでのところでこうなったのだ、とか、ちゃんと農家が生計を立てられるように制度設計したのだ、とか、、、
運ばれてきた弁当は、大きなお重に入った仕出し弁当。おそらくは一番高級なやつに、熱い味噌汁。塗りの蓋をとると、野菜の煮染めにお刺身、銀ダラ(メロかな?)の煮付け、フライ盛り合わせ、豚の焼肉、大福と豪華絢爛なお弁当だった。
食べながら話は続いた。今回の改革で、一般の人が見れば「こういう施策がなされるなら農家も大丈夫でほ?」と思うような部分に、かなり落とし穴があるようだ。ただ、国井さんに掲載の許可をいただいているわけではないので、ここには書かない。
「先生、今度ぜひ一献やりにきませんか。呑めるんでしょ?」
もちろん!本当に、きちんと農政の話を聴きに来たいと思ったのであった。
今回の農政改革の方向性については、産業競争力会議の農業分科会のメンバーのとりまとめが大きく影響しているときいた。しかし、そこの主査は農業とはほぼ縁のないローソン社長の新浪氏である。ナチュラルローソンで自然派を売る一方で100円コンビニで安値を煽るような商売上手が、果たして一国の食について正しい政策を提言できるのだろうか?
なぜ、検討の場に国井さんのような政治と地方をつなげる人がいないのだろうか?
そう思いながら、弁当を美味しくいただいた。ごちそうさまでした。
講演終了後の帰り道、ソースどばどばかけの名物やきそば「石田屋」に寄ったが、なんと定休日。中におやじさんとおかみさんが居たので、半年前に週刊フライデーの連載に掲載させてもらった礼を言う。
「なんだー山本さんくるなら食べてもらいたかったなぁ、ゴメンナサイ!」
こちらこそ。次回は水曜日を外してきますね。