茨城県で最大の農畜産物直売所であるポケットファームどきどきへ数年ぶりに来ている。この施設は年間で10億円近くの売り上げを誇る、国内有数の直売所だ。直売所は全国で14000軒を超えたと言われるが、売り上げ1億円未満の店がほとんど。その中でこの店が成功してきた要因は、資本力や規模の大きさだけではない。
このポケットファームどきどき、JA全農いばらきの経営だ。農協が出している直売施設ということ。しかしいい意味で農協らしからぬ方針をとってきた。例えば施設内で販売されている加工食品やハムソーの類いは、100%無添加とはいわないにしてもほぼそれに近く、非常に添加物の量が少ない。しかも直売所が体験農園として確保している農地はなんとJAS有機の認証を取得している。
そして、ビュッフェスタイルのレストランは、熊本県の有名なティアの指導を受けているのだが、そこに並ぶ料理に使っている素材も、調味料も、すべて食の世界で評価の高いレベルの高いものばかり使われている。お酢はもちろん富士酢でっせ。もちろん化学調味料の類いは一切使用されていない。
スタッフの人たちの意識も高い。全国の佳い食材を生産しているメーカーさん達が集う「食の学校」や、佳い取り組みと言われるレストランに、自費で、休みの日に勉強しに行く人たちがいる(もちろん強制ではない)。なんと僕の母校である自由の森学園の食堂にも数人が勉強に行ってくれているそうだ。下の写真は食事をご一緒したスタッフの皆さん。
シェフ長は日本食の板前からこの店に転職するとき、全農いばらきの担当者さんから「いままでのお店の感覚は捨ててください。素材は畑や、生産者さんが持ってくるもので構成しましょう。冬に絹さやはありません。そういう前提でお願いします」と言われた。料理人にはなかなか大変な条件だったようだが、ご自身のお子さんがアトピーになってしまったこともあり、徐々にどのような料理を出すべきか、自分の内部変化もあったそうだ。
ビュッフェスタイルのレストランでは、30品目以上の料理が並び、食べ放題でランチが1800円、ディナーが2000円。冒頭の写真には全ての料理を載せようと思ったが、とても乗らない。デザートも充実していて、その全ての原料乳や素材が、「えっそんないいもの使ってるわけ!?」と驚く内容だった。
そのポケットファームどきどきも、東日本大震災以降、客数の減少に苦闘している。特に、震災前には東京圏からの顧客も多かったのが、純減しているそうだ。
やっぱり放射能のことが心配なんでしょうね、、、と担当の小泉さん。このポケットファームでは、全取り扱い商品の放射能検査を毎週実施している。むろん、ほぼ問題が出ることはなく、あったとしても検出限界値に近い値が出るか出ないかという状況だそうだ。しかしそれでも、損なったイメージは大きく、「もう東京からのお客さんはあきらめてます」という。
とても残念だ。一般の人にはピンとこないだろうけれども、農協グループでこんな思い切った佳い取り組みと経営をしている直売施設は他にないのだから。もっと人が来ていい場所でありお店である。数年ぶりに来て、心からそう思った。
これからスタッフの人たちに講演してきます。大切な定休日に、スタッフさんが集まる一年のうちで大切な研修イベント。少しでも元気づけないとな。
そんなわけで、やまけんの出張食い倒れ日記は本日で10年目を迎えます。これからも私が独断で「佳い」と感じたたべもののことを、自分の好きなように書いていこうと思います。私の書くことに趣味が合わない人もいらっしゃるかもしれませんが悪しからず。これからも方針を変えずにやっていきたいと思います。
いつも読んでくださってありがとうございます!