2013年4月30日 from ドライエージングビーフ,出張
先般、大阪に出張した時。翌日の午前中が少しだけ空いたので、昨年オーストラリアに一緒に牛と羊を観に行ったトップトレーディングの塩津ちゃんに連絡。
「そしたらぜひ、中央卸売市場にご一緒しましょう!うちの肉を熟成してくれてる店があるんですよ。やまけんさんもご存じの方がやってます」
え!?と思ったら、なんとこのブログの「又三郎」関連の過去ログに写真で出てくる渡邊さんがやっているお店だというではないか! 大阪は長居の熟成肉専門店「又三郎」にてしばし修行し、いまは肉の精肉卸・販売をしているという。しかも市場内の店舗では、簡易ながらキッチンもあって試食も可能とのこと!これは行ってみたいね!ということで足を運んだのであります。
この日、実は卸売市場は休みだったのだけど、会いたいと言って開けて待っていてくれた。どうもありがとう渡邊さん!
Feriaとはスペイン語で市場という意味だそうだ。41番区画の店舗には、肉を入れた冷蔵庫のスペースと、それ以外の食材を陳列販売する二コマが割り当てられていた。
余談だが、「肉以外の食材」はイタリア・スペインなどの輸入食材がメインで、これが異様に安い!特にアンチョビが格安で、つい5瓶ほど買っていってしまった(笑)
いんやーご無沙汰してます渡邊さん。そう、又三郎が開催してくれた、粗飼料を多給した土佐あかうし「強力と優男」を食べる会(又三郎大森シェフとカルネヤ高山君が対決したアレね)の時にも肉を焼いてくれていた方である。
「もちろん又三郎さんとはいまもお付き合いをさせていただいてます。」
とのこと。早速冷蔵庫をみせてもらうと、こんなかんじだ。
黒毛和牛の売れ線は圧倒的にモモだそうだ。
もちろんもっと大きなプレハブ冷蔵庫もあって、本気の熟成はそちらでも行っている。やっぱり、いろいろ入れすぎると旨く熟成コントロールできなくなるもんね。
寄ってみると、しっかりとカビが着いています。手前の白い粉状のシミは熟成仕上がり目安でもある、微生物の死骸だろう。庫内環境は整っているように見える。
また、牛のモモやロースのみならず、豚肉と羊肉も入れているのが特徴だ。特に渡邊餡が力を入れているのがこの羊肉。
これがトップトレーディングから仕入れられている穀物肥育のラムで、渡邊さんに熟成実験をしてもらっているとのこと。「ものすごく評判がよくて、売れてます。」という言葉通り、売約済みだ。
スパニッシュスタイルと書かれているが、肉の表面をオイルでコーティングし、水分の蒸発を防いでいることらしい。上の写真を見てくれればわかると思うが、低温で固まる油脂で肉の表面を覆っている。
又三郎で経験を積んだこともあり、人為的なカビづけをあまり意図しない、ナチュラルな熟成環境づくりをしておられるようだ。
他食材の熟成も意欲的に取り組んでいて、鴨もみせてもらった。
もちろんこうした野生肉は、先の冷蔵庫とは別の環境で熟成をしている。ぜーんぶ一緒じゃだめなのよん。
さてそれではぜひお薦めのお肉を試食させていただこう! このお店にはありがたいことにカット&キッチンスペースが併設されているのだ。
「店を立ち上げる時にこれだけは!と思って、なんとかスペースを捻出しました。小型コンロしか入れられないのでその分、溶岩プレートを使用することで、火入れがなんとかできるようにしています。」
黒毛和牛モモ、ホルスタインのサーロイン、豚肉、そして羊肉。まだどれも熟成途上ということだったが、ご無理いただきました。
まずは豚肉を溶岩プレートで。
なかなかこのプレートが優れもの。蓄熱できるので冷めず、遠赤外線で内部への火の通りも早いのだろう。
軽く休ませただけで、この断面!
ああ、実にいい!豚の場合は、牛のようにナッツ香がブワンブワン来るという感じではなく、旨みが凝縮し、しっとりした繊維感を感じられる熟成になる。とはいて、適度な熟成香も楽しめる。バランスのよい、綺麗な肉質の豚が熟成によって一段上質になっていると感じた。
それにしてもやっぱり気になるのはこの羊ですね。家畜としても中型で、しかも肉のサイズも小さいので、熟成期間はそれほどとれないだろう。どんな変化をしているのか?
いやぁ~ これがですね、実にじっつに旨い!
羊の香りのする脂のクセがまろやかになり、身肉のほぐれ具合もとても心地よい。元来、穀物肥育の羊は柔らかいものだけれども、それだけじゃなく熟成によって筋繊維そのものが脆くなり、歯で肉がちぎれる時にジュースがジョロッと染み出てくるのだ。
熟成により香りは控えめだが、香りよりも旨みの増加のほうが強くなるのだろう。これは文句なしに美味しい!
そして定番のホルスタインのロース、牛はあのナッツ香がほどよく醸されている。もう少し大きな個体だともっと旨み凝縮もあるんだろうなあ。
まだ早いと言っていた黒毛のモモ。やっぱり黒毛の持つ香り成分は強くて、先のロースよりもこちらのほうが深みを感じる。それに熟成がもっと進んだら、凄いことになるだろう。
トップトレーディングがオーストラリアのタスマニアから輸入している極上のフレーバーマスタードを添えてくれたんだけど、あまり使わずに肉いただきました。熟成肉は塩以外にあまり何も要らないんだよね。
いやーひととおりいただいたけど、実に興味深かった!
熟成は微生物との関係性なので、ムロが違えば味も香りも変わる。だから、熟成業者はもっと出てきてよいと思う。フェリアのような業者さんがあれば、例えば量的にちゃんと買うのであれば、一般の人も買いに来ることができる。正直な話、大阪の人がとっても羨ましい!東京には小売でちゃんとした熟成肉を買うことができる店がほとんど無いからね。
渡邊さん、これからますます熟成庫の状態がよくなっていくでしょう。すでにいまの状態でも美味しい。またぜひ渡邊さんの手による熟成肉をいただきにあがりますね。ご馳走様でした!
■Feria本店
〒553-0005 大阪市福島区野田1-1-86 大阪中央卸売市場本場関連棟1F41号
http://ameblo.jp/feria-da/
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