※売り切れた!との連絡がはいってきました。もう発注できませんのでよろしくお願いします!
本当に珍しいことだけど、京野菜農家として著名な、京都市上賀茂の田鶴さんとこのすぐき漬けの「深漬け」が、いま売られている。発酵食品が大好きな人はぜひ買ってみて欲しい。このブログ(長いよ!)の文末に販売情報を書いておきます。
田鶴さんは、かの「瓢亭」が使う賀茂ナスを生産している、京都市内屈指の農家さんだ。田鶴さんの京野菜を使いたいという店は多いのだが、畑の面積が限られているので生産量が少ない。だから、いまのところ注文に応じられないので、取引先はかなり限定されているという農家さんである。
その田鶴さんをなぜ識っているかというと、僕が大学院にいた頃からのつきあいがある、京都大学農学部で教鞭をとる大石が、なんと田鶴さんの家のはなれを間借りしているのだ。彼が博士過程にいた頃、遊びに行って泊まった晩、田鶴さんから分けていただいた賀茂ナスをあろうことか麻婆ナスにしたりして、「おまえこれ見つかったら怒られるわ~」などと言われたこともある(しかしその麻婆ナスは旨かった。当たり前か!)。
その田鶴さんとこの賀茂ナスは、9月くらいの割と早い時期に畑をしまう。本来ならもっと長く引っ張って、秋なすまで収穫すればいいのにと思っていたら、すぐきを植えるために畑をあけなければならないのだという。すぐきを冬に漬けるためには、秋なすの時期にはもう種蒔きをしないと間に合わないのだ。
そうまでしてすぐきを植えないといけないの?という素朴な疑問は、田鶴家のすぐき漬け光景を撮りに行った時、吹っ飛んだ。すぐき漬けは京都の、大事な大事な文化なのであった!
このわさわさした畑から、すぐきを引き抜く。その時点でひげ根や泥を可能な限り鎌でこそいでおく。
収穫したすぐきをトラックに積み込み、作業場に搬入。山積みになったすぐきの光景に、初めてみる人は圧倒される。
翌朝、これを綺麗に皮むきして下漬けする。
ピーラー(皮むき器)をつかって皮を剥き、形を整えていくのだ。
綺麗に皮むき・整形されたすぐきには長い葉がつきっぱなしだ。実は、すぐきを美味しく発酵させるための菌は、葉に付いている。だから葉付きで漬け込むのである。
大きな樽にすぐきを入れ、塩をふる。
えっそこまで積むの!?というくらいもりもりにすぐきを積んでいく。
それに蓋をしたら、、、
ながい棒をテコの状態にいれて、、、
その棒の先におもりをつけていく。一個10キロだったと記憶している。30キロ吊すと、これがテコの原理でもっと重くなって作用するわけだ。
この木桶がまた、素晴らしい風情の手造り品なのだ、、、
下漬けを数時間行うと、塩の浸透圧ですぐきから驚くほどに水分が出てしまい、目方はどんどん減っていく。それを樽から出して、もっと小さい樽で再度塩をして、新たにてんびん棒をかけておもりを漬け、どんどん水分を抜いていく。
写真のすぐきはまだまだ水分が残っている。重しをして圧縮すると驚くほど水が出るのだが、下の写真を見て欲しい。最初の段階では蓋が樽のふちより高かったのに、こんなに沈み込むまで重さをかけていくのだ。
それをまた徹底的に、どんどん塩漬けをかけていく。
冬の極寒のなかの水作業だ。
これら全ての樽にてんびん棒をかけておもりを吊していく。
こんな光景になるので、この作業場を「てんびん場」というらしい。
このてんびん場で「もういいか」となったすぐき漬け。
でもこれで終わりじゃない。この段階のものを最後、「ムロ」とよばれる発酵室へ入れるのだ。ムロには熱源がしつらえてあり、すぐきの葉に付いた菌類が活発にはたらき、乳酸発酵を薦める最適な温度帯になっている。
このムロはすぐき農家それぞれの家の秘伝になっているらしく、熱源に何を使い、何度でどれくらいの時間をかけるかということが全て秘密になっている。田鶴家にもNHKやいろんなメディアがその模様を放送させて欲しいと頼みに来るそうだが、すべて断っているそうだ。もちろん僕も撮影はできないので、ここまでだ。
さてこのすぐき漬け、田鶴さんところで直接販売をしているのだが、特例的なことに、まだ冬に漬けたすぐきが残っているという。
おそらくものすごーく発酵しまくっているはずだ。もし関心がある人はぜひ注文して、ホンモノのすぐきがどんなものか、食べてみて欲しい。もちろんカブの部分と葉の部分すべてがついてくる。葉も刻んで、すべて食べて欲しい。
一度樽から出したのを置いておくと、数日でしろっぽいカビのようなもの(とはいってもカビじゃあないと思う)が出てくる。保存料など一切使ってないし、発酵が進んでいるので、早めに食べて欲しい。
売り切れた!とのこと。今年の冬まで待ちましょう!
お楽しみあれ!