直売所「愛たい菜」のオープンに向けてお手伝いをした縁で、愛媛県の中予と南予の境目にある大洲市とは縁が深くなった。その仕事の中で、市長さんとも数回お会いしたのだが、大洲市長の清水さんが大の料理好きなのだ(笑)
しかも自分で釣りもされるので、原料調達から料理までずーっと一貫してできてしまうというすごい市長さん。ボソボソッと何か話しておられるな〜と思ったら、「ここ大洲ではトマトがたくさんできますのでね、これをニンニクとオリーブオイルで煮詰めたら美味しいトマトソースになるんですよ、、、」などと言っておられる。
一度、直売所に総菜や弁当を出荷してくれるご婦人型のイベントを開催した折には、なんと清水市長自ら大洲市の特産物を料理したものを出品してくれた!
「あらまあ、市長さんがこれ作ったの?美味しいじゃないのぉ〜」
と大好評を得ていたのであった。
そんな市長さんだから、大洲を対外的に売っていくのに、食材や食文化を使わない手はない。
「ということで、『大洲ええモンセレクション』という、大洲市の佳いものをセレクトする企画を立ち上げました!やまけんさんにはぜひ審査員を、、、」
という頼みが、あの大洲市の興奮すべき食堂「アポロ」の息子である谷本氏から来た。アポロ食堂は、このブログ右側にある過去記事セレクション内、「ライブ・アット・ジ・アポロ! 伊予大洲再訪 ~大洲の郷土料理...」に出てくるあそこである。そうかあ、それは引き受けないとな、ということで大洲へ飛んだのである。
審査はこんな感じで行われた。
審査員が待ち構えるところに申請者が入り、試食と共にあーだこーだ質疑応答。その中で、最終的に審査に通ったもので、実に佳い!というのがいくつかあったので、ここに紹介していきたい。まずそのトップバッターが冒頭の写真にある「しめどうふ」だ。
大洲市内で豆腐商品を製造販売している中川食品さん。国産大豆を使ったすくい豆腐、油揚げ、そしてこのしめとうふを出してくれた。
この中でぶっちぎりに僕の関心を引いたのが、一番右側にある、見た目にもギュッと締まった感じの「しめとうふ」。なんですかこれは?
「これはこの辺では昔から食べられるもので、、、豆腐を巻き簀でギュッと巻いて、それを煮るんです。そうすると堅くなりますので、これをお好みで切って、ゆざらしにしてみがらしで食べていただくのがこの辺の普通の食べ方です。」
ここで審査員一同が「えっ?」となる。
「あの、"ゆざらし"とか"みがらし"ってなんですか?」
そう訪ねると、大洲市役所の人たちまでもが「えっ?」となる。もちろんこれは「なんで識らないの?」という「え?」だ。
「みがらしというのはですね、この辺の麦たっぷりの甘めの味噌に辛子を混ぜたものなんですよ。しめとうふを切ったものにそれをつけて食べるのが"ゆざらし"なんです」
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
「みそがらし」 → 「みがらし」
なんだね!?
で、早速しめとうふをみがらしにつけていただいてみたのだけれども、これが実に乙!
豆腐にぽつぽつと気泡が入るくらいに強く煮られたことで、豆腐はほんとうにぎゅっと堅く煮染められている。けれども味はついていない素朴なものだから、ここにみがらしをつけて食べるわけだ。そのみがらしの甘くてツンとくる感じが、無愛想なしめとうふを美味しく食べさせてくれる!
「この食べ方が普通だと思ってましたので、特に説明してませんでした、、、」
というのだけれども! マジで一切の説明ナシ。上の画像にもどって、パッケージの宣伝文句を見てください。
「煮物や湯ざらし(みがらしをつけて)でお召し上がりください」
煮物はわかるけどさ、「湯ざらし」わからない!そしてその湯ざらしの説明文のはずなのに「みがらしをつけて」がわからない!
いや、最っ高なカルチャー隔絶感である!これがあるから郷土食はおもしろいんだ。
ということで、非常にできの良い国産のすくい豆腐よりもなによりも、僕はこのしめとうふが気に入ったのである。
大洲ええモンセレクションはこのほか、11品目が認定されている。その中でも気に入ったものを随時掲載していきたい。