■撮影:オリンパスOM-D レンズ:ZD35mmF3.5マクロ ZD25mmF2.8
いやー NYから帰ってきたと思ったら、本日から熊本に入り、木金はそのまま京都に抜けるという、ウィークデーでずっぱり出張である。体力保つかな!?
そんな生活が続いているので、土日は何も無いときは、住んでいる木場周辺でぼやーっと脱力しています。土日にお誘いがあってもあまりおつきあいをしないという無愛想さがここんとこ続いているのですが、ゴメンナサイ。さすがにここで気力・体力を回復しないとやっていけません。寝て、穀物と野菜中心の料理して、ジムで汗を流して鋭気を養っています。
そんな木場中心の生活に、基本的にフレンチが絡むことはほぼ無し。実は木場という場所に住むことになったきっかけは、前々職の時に仕事で月に数回来ていたことがあったのだけれども、ランチ場所を探して気に入った店があったからだ。その一つが餃子の宝屋で、もう一つがいまは閉店したタンメン・餃子の来来軒。
(元・ファンの方が来来軒のご主人に教えを請うて新規開店しているが、僕にとってあれはあくまで新しい店であって、元の来来軒ではない)
そしてもう一店が駅近くにあるビストロ・ド・リヨンというお店。社会人になって自分のお金でフレンチなんぞ食べられるという浮かれた気分で、ランチコースの鯛のポワレなんぞ美味しくいただいていた。それで、農産物流通の会社に転職する際に社員寮を出ることになり、どこに住もうかと思ったときに「あっ 木場にしよう」と思ったのだ。
ところがいざ住んでみると、、、自分の住んでいる場所でなかなかフレンチには足が向きませんナ(笑) 二度か三度くらいしか足を運んでない。出張先や仕事関係でフレンチをいただくことはあっても、自宅近くで休日に行くということはほぼないんだなぁと自分でも驚いた。
そんな中、柴田書店「専門料理」のカメラマンでもある大山君と話をしていたとき、彼がこそっと言うのだ。
「やまけんさん、木場にすごい店が引っ越ししてきますよ!」
それが恵比寿で営業していた「アタゴール」。それも、木場公園の真ん前に寝台特急のホンモノの車両をドスンと置いて、店を建てているという。あっ あれかぁ、レストランになるの?と驚いた。それから開店してかなり好評を得ているときいてはいたけれども、前述の通りでなかなか食べには行かなかった。けど、今月号の専門料理に掲載されているアタゴールの料理写真があまりに素晴らしくて、、、
「食いたいっ!」
と思ってしまったのだ。ホント、自分的に異例のこと。そんで嫁さんを誘って予約を取り、まずはランチに行ってきたのでした。
木場公園側からみると、信号のふもとにブルーの電車が。
よもや、これがレストランとは思えないけれども、実におもしろい!
反対側から観るとこんな感じ。
最初、この電車の中がレストランになっているのかと思ったら、その奥にレストラン部の建物があるのであった。外光がタップリ入ってくる開放的な店内。
なお、シェフの曽村さんはホテルオークラ、ベルギー日本大使館の公邸料理人、そしてオリエント急行のシェフを歴任してきた。だからこの店はオリエント急行のモチーフが一杯。
壁に掛かったポスターもオリエント急行の停車駅にちなんだもの。あっ 沢木耕太郎の「深夜特急」の表紙のシリーズだね。
ヒューガルテンのドラフトをやりながらメニューを愉しむ。平日のランチは2000円以下らしいが、週末は3500円と4200円(だったかな、メモしてなかったからうろ覚えですゴメン)の二種となる。もちろん内容も豪華版に変わる!
この日のコースは前菜がフグのカルパッチョ、メインは鴨か魚(甘鯛またはまながつお)だった。どちらも食べたいが、僕は専門料理誌に掲載されていた夜のメニューにある、北海道女満別産の羊を食べたかった。その旨を店員さんに相談したら「ではアラカルトでご用意させていただきます」とのこと。やっぱりね、食べられる時に食べないと。
ふぐのカルパッチョ。たしか玄界灘のものだそうだ。オレンジ風味の塩をふりかけて。ディルの香りを移した油を添えている。
オレンジソルト、、、レモンなどシトラスの果汁を塩と結晶にしたものは確かにオリエント文化の中にあるよな、と思いをはせつつ。
ぷにんくにゃんというフグの身肉の柔い弾力が美味しい。さばきたてのフグではない、肉をねかせた食感。添えてあるワサビ菜との相性もいい。
さて、メニューの説明を聞いていて旨そうだったまながつおの一皿。
奥の三角の切身がマナガツオで、炭火で焦がしたように黒いのは、イカスミでマリネしたから(!)。ホタテ、青唐辛子、ズッキーニを添えて、色鮮やかなオレンジのソースはガスパチョベース。
これが素晴らしく重層的な味わいだった!
イカスミのとろんとした味をまとったマナガツオ、火が入りすぎるとこの魚はとたんに退屈なバサバサ感が出てくるが、しっとりした絶妙の火入れ。旨味の強い身肉に、ガスパチョの派手な味と香りがバチッとあって美味しい。ガスパチョの酸味によってマナガツオが色鮮やかな魚になったように感じた。
そして、嫁さんが頼んだ鴨がまた素晴らしかった!
小食な人を相方に持って本当によかったのは、料理の半分が僕に回ってくること(笑)。
鴨肉の質、火入れのよさによる美味しさももちろんだけれども、取り合わせの妙が素晴らしい。鴨肉を一切れ大きく切って口に運ぶ。写真にも写っているオレンジの切身と共に。けれども、オレンジの果汁とは全く違う、もっと濃くて奥深い香りが立ち上ってくる。
ん? これってタイ料理の香りだ!
サービスの人に「ねえ、これってミカンの葉っぱ?」ときいたら「そうです!」という。もしかしてバイマックルー?と訊くとやはりそうですとのこと。
「シェフはバンコクでも料理をしていますので、エスニックスパイスをよく使うんです。でも、それをオリジナルにアレンジしているのですが」
まさしくそうだね!バイマックルーの使い方も実にピンポイントで派手ではない。でも決定的なアクセントになっている!
さて、通常の週末コースはここまでだが、今回は「専門料理」に掲載されていた、女満別産の羊をアラカルトでいただくことにした。
これこれ、このプレゼンテーション、、、
焼き上がったこいつを切り分けて盛りつけして持ってきてくれる。
手前左の、マッシュポテトが載っているのはなんとシェパーズパイ。
リプリゼンテーションされた一皿がこちらだ!
野生アスパラガスのソバージュをくるんと結んだデコレーションが可愛らしい。
羊の香り、豊かに溢れるジュース、焼き目の香ばしさと生成された旨味、ケイパーのクセと酸味のきいたソース、すべて素晴らしい。
そして、このシェパーズパイも実に美味しい。
これだけ食べているのに、胸焼け感が全くしない。いつもは二皿でギブアップするうちの嫁さんも、美味しくこの羊を食べている。どんな油を使っているのかわからないが、バシッと決まる味なのに実にすっきりとした食後感。
デザートのあとはオリエント急行の内部(?)へ移動してお茶という趣向。
会計時に、シェフとご挨拶。「専門料理」の連載を読んでいただいているとのことで、嬉しい限りです。また伺いますね。
いやぁ、 木場はどんどんいいスポットになっていくなぁ。木場に来てくれてありがとうアタゴール!