実は密かに今週、大変なイベントが関西で開催される。――ていうかタイトルに書いたとおりなんだけど、大阪の熟成肉名店「又三郎」で、土佐あかうしの「強力」そして「優男」を長期熟成してもらっていたのだ。それを「食べる会」を開催してくれるのである。しかも、又三郎の大森シェフの料理だけではなく、牛込神楽坂「カルネヤ」の高山シェフの料理も供するという、東西熟成肉料理合戦という恐ろしい企画をやるのだ!
コトの起こりは強力が出荷される前のことだ。大阪の長居でながく焼肉&熟成肉を続けてきた「又三郎」さんがリニューアルされ、美しい店構えに規模も大きくなった。毎回、土佐あかうしのよいものが出ると、ドカーンと買っていただいているという話は三谷ミートの専務から聞いていた。粗飼料多給の強力と優男の肉は、引き取り手がつくかどうか決まっていない。もし売れ残ったら試験場と三谷ミートに迷惑をかけてしまう。
「荒井さん、申し訳ないんですが、強力&優男の肉を買っていただけませんか、、、」
とおそるおそる声をかけると、力強くお返事いただいたのだ。
「やまけんさん、安心してください!うちは土佐あかうしに惚れ込んでますから、交わせていただきますよ!」
そればかりでなく、ぜひこういう特別な育て方をしたなら、食べる会をやりましょう、ということになったのだ。荒井さん、まさしく女傑である。ということで、挨拶もかねて、先日の料理人4人を連れて高知へ行ってきた!の旅のあと、僕は又三郎に伺ったのだ。
あたらしくなった又三郎は、長居駅からすぐのパークホテル一階に店舗として入っている。面積ゆったり、そして冷蔵庫もでかいのがドカンドカンと増設された!
冷蔵庫スペースが大きくなったことで、荒井さんの厳しい審美眼に耐えうる熟成肉が完成するまで、好きなだけ熟成させることができるようになったんじゃないだろうか。
置いてある肉は、土佐あかうしと黒毛和牛。
個体識別番号の違うロースが何本も入っていたから、いいあかうしが入ったら三谷ミートから連絡が行くようになっているのだろう。それをどかんどかんと入れて、とにかく50日以上熟成をかけているわけだ。
そしてこれが、強力のバラ!荒井さんありがとうございます!
以前のザ・焼肉店という感じの店もよかったけど、今回の店は実にシック!
そして前の店との大きな違いが、調理場がオープンになっているということ。
熟成プロセスは冷蔵庫内で起こっているわけだが、やっぱりその肉をどう切り分けるかとかそういうことも見ておきたい。とてもいい感じです。
まあとりあえずはお食べください、ということで、何種類かの熟成肉を焼いていただく。
大森さんが焼くのかと思いきや、手が空いている時は店主の荒井さんご本人が焼いてくれるので驚く。僕以外にもけっこう、驚く人が多いらしい。
「好きなんですよ、肉焼くの、、、」
又三郎の焼き方は七輪を使った炭火焼きだ。使い込んで真ん中が凸になったこの網を駆使して、焼いては寝かし、焼いては寝かしで火を入れていく。
こんな近火でいいの?と思うが、実際に火に当てる時間は3~5分程度。その後はアルミホイルに包んで10分くらい寝かす。
これを数回繰り返し、肉を食べることができるのは最速で40分後だ(笑)
「じゃあ、まず普通の土佐あかうしからお食べください」
うん、熟成、しかもドライエージングをかけた肉にしかあらわれない、繊維の柔らかくなったお肉。噛みしめたときになんともいえないシットリとした食感になるのだ。
そして、肉の中枢部分に潜むナッツのような香り。この香りがついていないと、ドライエージングというのがためらわれる。美味しい肉です。
「で、こちらがね、土佐あかうしなんですけど、なんか草しかあげなかったあかうしなんですって。」
え!? 草しか食べてないあかうし?強力と優男以外にそんなのいないはずじゃ、、、と思ってたら、なんと試験場に一頭、そういうのが居たらしい(笑)
「でもね、このお肉は本当に時間がかかりました。三谷さんも来て「美味しくないなぁ」と言っておられたんで、もうこれは意地でも美味しくなるまで待とうと思ったんです。50日、60日、もっと超えてようやく美味しくなってきました。」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
なんと色気のある肉よ! やっぱり、サシが無いと純粋な赤い断面になって、実になまめかしい。そしてこの二区のお味が、、、実に素晴らしかったのだ! 熟成に成功した肉に脂があると、その脂自体にも熟成(酸化だけではないらしい)がかかって、マイルドで香りのよいサシになる様な気がする。赤身の肉にはそれがないわけだから、よりストイックな、アミノ酸の美味しさだけで食べるということになるから不利である。
しかし、このグラスフェッド土佐あかうし、実に味わい深かったのだ。やはりストイックではあるけれども、サシの入った肉とグラスフェッドという二種を並べて食べると、どちらも素晴らしい!と手を叩きたくなる。
それにしてもグラスフェッドは時間がかかるというのは、わかる気がするな。堅く引き締まった肉がほどけるには、それなりの時が必要なのだ。
最後は、宮崎県産の黒毛和牛。
これも美味しくいただいた。やっぱり脂の質は黒毛だなぁ、という感じで、少し冷めてくると重く感じる。けれども、満足感という意味では、大役を担うことができるだけの重さを感じる。一般的な肉好きの人は、グラスフェッドの肉だけでは満足できないかもしれない。この三種を食べることができるというのが、ベストだな。
このコンソメは熟成肉の端肉でとったもの。こいつが絶品なのだ、、、通常、ガビガビに熟成した周りの部分は酸化がきつくて、もう使い物にならない。けどなぜか、又三郎の熟成肉の端肉は酸化のいや~な味がしないのだ。ごちそうさまでした!
さて、打ち合わせ打ち合わせ。
「やっぱりね、うちの大森だけじゃなくて、できたら関東で熟成肉の創作料理をしてくださるようなシェフに来ていただきたいんですけど、どなたかいらっしゃいますか? その二人か三人で料理対決みたいなのしたらいいと思うんですけど、、、」
うおおおおおお 怖いこと考えるなぁ! そんなん、びびっちゃうでしょ!
と思いつつ、カルネヤの高山君ならOKだろうなぁ、なんて思ったり。この数時間前まで高知に一緒に行ってたしね。
「あら、カルネヤさん、、、ぜひお会いしてみたいわぁ!」
ということで以後、とんとん拍子で高山君の参戦が決まったのである。
迎え撃つ又三郎のメインシェフ・大森氏。
髪は金色だがシャイな兄ちゃんである。さあてどんな対決になるんだろう。
ただし、ゴメンナサイ、もうこのイベント、公表前から超満員でありまして、もう一人も参加できません。無理押ししても入れないので、問い合わせはお控えください。ちゃんとこのブログで報告しまーす。