もう、書いたとおりです。ブリンブリンしたコシのうどんは、たしかに20代後半から30代にかけて大好きだった。けど、もうあんまし食いたくない。うどん県にももうあんまりそそられない。その傾向は、愛媛県松山市の名店「踊るうどん永木」で、ブリブリ系ではない、やんわりふんわりギュッとした絶妙なコシのうどんを味わって、「ああ、これが旨いな」と思って以来だ。
その僕が夢中になっているのが宮崎うどんである。宮崎出身の漫画家、かの東村あきこ女史も、「ひまわり!」の中で「宮崎のうどんにコシはいらねーんだよ!」という名言を記している。まさにその通りだ。宮崎のうどんにコシはいらない。
代わりに、甘辛く濃い煮干しベースのあたたかな汁に、やんわりしっとりした食感の中太麺の釜揚げうどんがあればいい。とはいっても、これがまた店によって全く個性が違うのが面白い。以前、とある講演会の後、こうした釜揚げうどん店に出汁素材である煮干しや昆布を納入している業者さんとお話しをさせていただいたことがある。興味深い話ばかりだったが、やっぱり九州の中でも宮崎のうどんの立ち位置はかなりユニークらしい。
そんな宮崎うどん、橘通り周辺の店や西都市の「満所茶屋」などをこれまで紹介してきたが、弟分である沼口君より、新たな店を紹介してもらったのだ!
「アニキ、もうね、ここで食べたらヤバイよ!なんか、他の店がふっとぶよ。」
ほんとかよー と思いつつ、午前中のコンサル仕事を終了させてお店へ。市街地ではなく、ちょっと郊外に抜けるあたりにある。なんでも、市内で蕎麦店をやっていた店主が引退した後、ひまなのでちょこっとうどん店やろうかということで家を改築し、小さく営業しているそうだ。そういう趣味的な店って、行きにくいところにあるけど、リーズナブルで旨いんだよね、、、
店名は「大輝」です。各自ご自由にお調べ下さい。それにしてもこの店、沼口君いわく「すごいよ、駐車場には県外ナンバーばっかりなんだよ。きっと、営業とかできてる人たちが、口コミで知って通ってるんだよ」とのことだったんだけど、確かに福岡ナンバーの車とかが停まっている!
店内は土間にテーブルがおかれただけの実にざっくばらんなつくり。テーブル二客、12名分のみ。みな相席で座ります。
それにしても宮崎のうどんは安い!普通盛りで400円だよ、、、沼口君は前職のとき、ここにしょっちゅう通っていたそうで、店の母ちゃんは顔を見るなり「いつもの?」と聴いていた(笑)
ぼくは大盛。これぞ典型的な宮崎スタイルだ! 丼の中に湯がためられ、ゆでたてのうどんに満たされている。
汁は甘辛なのがよーくみてとれる濃度。ここに天かすがぶちこまれているのが宮崎うどんの特徴だ。
ネギは葉ネギ。九州ではだいたいそうです。
そんで、沼口君いわく「ここのうどんは、汁につける前になんもつけずに食べて欲しいんですよ!もうね、小麦の香りがばーんと!」というので啜ってみる。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
確かにすごい! 小麦の香りがブワーンと立ち上るではないか!これは素晴らしい!
コシは、無いわけではない。中太というか中細な平打ち麺だから、シクーッという絶妙な食感で歯が通っていくだけで、若干のコシはある。けど、あくまで優しい食感なのだ。そのうどんを噛むと、小麦のいい香りが溶け出て、鼻にのぼっていくのである。うわあ、こんなうどん、宮崎で初めて食ったぜ。
汁につけて食べる。もちろん美味しい、けれども、、、汁が甘辛で、濃口醤油ベースのものなので、麦の香りはやや消えてしまう。ま、それでいいんだけれども、もう少し淡口醤油をベースにして、うどん麺の個性を活かしてもいいんじゃないかな、とも思った。
けれども、間違いなくここんとこ食べたうどんのなかで、麺だけでいえばナンバーワン!
汁の濃さは、実はおにぎりを食べ進むためのものなのかもしれない。
うどんにおにぎり、合います。
「ね、アニキ、ほんとだったでしょ?」
はいまったくもって本当にすごい店でした、、、
このお父ちゃんが店主さんです。素晴らしいうどんですわ。こういう店は郊外にあっていいのだ。細々と、長くやっていただきたい。
ということで、また食べに行きマース。