延岡のビジネスホテルにチェックインし、すぐに向かうは漁師料理の店、と訊いていた。リエちゃんが「とにかく美味しいらしいから!東京からわざわざここに食べに来る人もいるんだって!」という店に行くのだが、なかなか見つからない。夜の延岡をフラフラ歩くうちに、見つけましたよ密やかなたたずまい。
■日本料理 きたうら善漁。
宮崎県延岡市本町1-3-14
http://zenryomaru.jp/
店内は実に清潔感あふれ暖かな照明だが、ピーンと張り詰めた感じの空気。日本料理の一本勝負!という感じだ。ちなみにこの店はEM豚のヘビーユーザーだという。だから、ずいぶんと手厚く遇していただいた。
しかし、、、この店、ものすごい実力の持ち主だったのですよ!
まずは白和え。
あまっぽい感じの味付けがベースになる宮崎だから、白和え餡の味はどうだろうかと思ったら、実にその中庸というか、ふっくりとした甘さに品がある。菜も茸類も素材の食感が活きている。おおっこれは期待できるぞと思ったのだ。
そしていきなり椀が登場。
鱧 菜っ葉 佐土原茄子のお椀
出汁、淡すぎず力強さがあるが、品を保つ。微かに浮かぶ玉になった油がどこからしみ出てきたのかと思ったら、宮崎市の佐土原町に伝わる佐土原茄子を、事前に油で揚げていたらしい。
美味しい、、、トロリとしながら、油でカラメリゼされた部分に香りと甘さが宿っている。
魚は、34時間熟成させたハタ、日向灘の真鯛、島野浦よりゴマサバ。
いやもう、、、美しいね、、、何より、マグロがのっていないのが嬉しい。
ここの主人は、フォーマットにはこだわらず、その日仕入れて旨いと思えるものしか出さないという意気込みが伝わって来るじゃないか。
醤油は宮崎特有の甘醤油ではない。小豆島のものらしいが、熟成によってアミノ酸を発生させたハタや鮮度のいいマダイの身肉の香りを消さずに旨さを引き出している。
眼を見張ったのは揚げ物。ちょっとビックリするくらいに大ぶりなメヒカリの唐揚げが出てきた。しかも二尾!
比較対象するスケールがないので伝えにくいけど、とにかくでけぇ!
「こんなんが、けっこうこの辺の海では釣れるんですよ。ほかんとこの海から魚買うより、地元のが一番旨いんです」
という大将。
ほれこのとおり、ほっこりホロホロと口にほぐれる身肉は、実に上品な旨みとホクッとした香り。素晴らしい!
この間、ヨシチクのお母ちゃん、そして跡取りの勇作君と楽しい語らい。
ヨシチクの養豚はこれまで、さまざまな気づきをえながら、苦労して進化してきたということがよくわかった。そして時代を担う勇作君は、業務をひととおりこなせるようになったところ。でも、僕が「これはやったの?あれは?」と尋ねると、「えっ そこまで試してみませんでした!」と、、、ということは、まだまだこれから伸びしろがあるってことだぜ!ヨシチクの肉はあと5年すると、もっと佳くなる!末恐ろしいことです。今の時点で十分旨いのに、、、
こういう席で実は僕はあまり酒を飲まないようにしている。なぜなら酒はカロリーの塊。食べることと呑むことを一緒にガンガン俺のペースでやってたらすぐに成人病になっちゃう。
けれどもこの日は美味しい酒を飲みたかった。亮天という地酒、軽やかで料理によく合いました。
酢の物のなますを挟んで、いよいよメインディッシュ!
吉玉家より 上ロースとフィレ
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ
なんちゅう火入れなの?
ロースにもじんわり中まで火が入り、、、
ヒレにも絶妙な火入れ。双方を同じタイミングで出せるところが経験を語る。
いや、絶品ですよこの豚ロースト!いわゆる「休ませ焼き」だと思うが、この技術はいったい、、、?日本料理でこんなことやるんだっけ?
実は店主の吉田善彦さん、日本料理を修行した後、フレンチでも修行をしている。そして、彼は気づいたそうだ。
「あ、俺、修行はもうこれでいいわと思ったんです。大阪の一流店で出している素材も料理も味わったけど、やっぱり地元の延岡の漁港で水揚げされた魚の方が旨いわって思ったんです。なんで、戻ってきました。」
こういう風にさらりと、地元を誇ることが出来るのが羨ましいね!
さて〆のご飯は土鍋炊き。
僕の大好きなミルキークイーンです。もちろんこれも北浦産。
定置網でひっかってたよ、という風情のなにげない魚の干物。しかしこいつが極めつけに旨かった!吉玉のお母ちゃんが残したのをいただいちゃった位です(笑)
アラ汁の味噌はやはり麦中心の甘やかな汁。俺好みだぜ!
いやぁ、素晴らしい!ワンダフル!感動的な3時間でした!
ようやく、笑ってくれた店主と女将(笑) 「いやー緊張しましたわ~」 マジですか?
宮崎に、それも延岡にわざわざ行く用事ってあまりないかもしれないが、もし行くことになるのなら、、、必ず予約をして行った方がいいお店であることは間違いない!
俺はもうすでに再訪したくてしょうがない、、、吉田さん、吉玉一家のみなさん、ご馳走様でした!