さて五ヶ瀬からギュギュギュッとふもとに降りて、宮崎県北部の延岡市へ。 あっ よく考えてみたら、延岡に来たのはこれが初めてだ!もう数十回も宮崎に来ているのに、こちらへは無沙汰というかまったく足を向けることがなかったわけだ。実は延岡へはいつか行かねば、と思っていた。それは僕が愛する宮崎の郷土食の一つであるチキン南蛮の元祖がここにあるからだ。
「直ちゃん」は、チキン南蛮を生み出した店である。その元祖チキン南蛮は、宮崎市内などでチキン南蛮に慣れ親しんだ人からすると、大きな違いがある。タルタルソースがかかっていないのだ。
「いや、こっちが元祖で、タルタルなんてかけてなかったんだから、驚かれても困る」
と延岡の人は言うかもしれない。が、いま全国的にチキン南蛮として識られているのはタルタルをかけたものである。ちなみに、宮崎県の学校で家庭科実習で習うチキン南蛮のレシピには、タルタルが記載されている。このブログの2003年の過去ログに紹介してあるとおりだ。
■2003年11月21日 これがチキン南蛮のレシピだ!
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2003/11/post_89.html
以来、いろんなチキン南蛮を食べてきたけど、直ちゃんはこれが初めて。詣でるのがおそくなって申し訳ありませんでしたという気持ちで一杯です。
初めて歩く延岡の繁華街だが、実にいい感じに地方都市の繁華街っつう空気が漂っている。
和風スナック「延岡すずめ」入ってみたいぜ!
そんな、細い通りに直ちゃんが、飾り気なしに建っている。
店内手前のカウンター席は結構うまっていて(昼時だからね)、奥の座敷へ。
お品書きは実にいさぎよし。チキン南蛮と鶏のタタキ風、鶏もも焼き、串焼きという感jじで、一貫して鶏肉料理の店である。
チキン南蛮定植と単品で鶏モモ焼き、タタキ風をオーダー。程なくして、元祖チキン南蛮が登場した!じゃじゃーん!
出てきた瞬間、オオッと思った。というのは、チキン南蛮の最大の特徴である衣が実にふんわりと立っているからだ。
勝手ながらチキン南蛮の最大の特徴は、衣の作り方にあると思っている。普通は小麦粉やパン粉などが外に来るところを、チキン南蛮は先に小麦粉をまぶし、それを卵液にくぐらせたのを脂に投入する。つまり卵が外になるのだ。こういう揚げ物って結構少ない。
ただし宮崎市内でみかけるチキン南蛮は、その多くが純粋な卵の衣ではないことが多い。つまり、独自に卵液にさまざまな粉を配合したものを使っているところが多いように思う。つまり唐揚げ甘酢づけにタルタルをかけた、というものが結構に多いのだ。
しかしこの直ちゃん元祖のチキン南蛮は、ほんとうに卵が外側だ。このちりちりに縮れている衣は、したたるような卵液をまとった鶏肉が油に入り、ゆらゆらと踊りながら火が通り固まったという様を実にダイレクトに想起させてくれる仕上がりになっているではないか!
しかし、面白いことに気がついた。
ご覧の通り、表面はちりぢりに縮れているが、裏面はほとんどこのちぢれがない。これはなぜ?とおもいつつ一口。卵の衣は甘酢を通したことによってふんわりした食感となっている。甘酢の酸味はマイルドにねかされているのでむせかえるほどの強さではなく、実にやわらかな香り。肉はもちろんチキン南蛮の正道である胸肉。若鶏特有の柔らかさで、ボソッとしないいい火加減で熱が通っている。
美味しい、、、
タルタル付きチキン南蛮の、わりと獰猛にズンズン押してくる味ではなくて、ホッとするような柔らかな味だ。甘酢の味が本当にマイルドなので、全体的にやわらかいイメージとなるのだろう。でも白飯はズンズン食える。ほんと、宮崎のおぐらチェーンが広めたチキン南蛮とは別物の味である。ちょっと、感動してしまった。
タタキ風と鶏モモ焼きも食べてみて思ったのだけど、同じ宮崎県でも北と南で全然違うな、と。直ちゃんで出てくるものは基本的に若鶏か銘柄鶏を使っているからだろうが、炭火で真っ黒に焼いたあのインパクト系の鶏肉ではなく、あくまで柔らかな感じ。
だから宮崎市内の人間からすると「味気ない」「おとなしすぎる」と映るかもしれない。
けど、きっとこれがこの延岡周辺の人たちの舌に合う味なのだろう。とにかく、全体的に丸く柔らかい。そんなイメージの昼餉でした。
元祖チキン南蛮のタレが売っていたので、もちろん購入!
ご主人にあの、チキン南蛮のちぢれがなんで片面しかないのか聴いてみた。
「そりゃあ、揚げる時に裏か表かになるわけだから、どっちかしかちりぢりにならないよ」
あ、そうか! なるほどおそらく上になった方の衣が、鍋底から上に向かう油の対流によってちりぢりになっていくわけだ。納得しました。
元祖チキン南蛮、大変に美味しくいただきました。そして、歴史を学んだ気分です。うん、また食べたくなってきた、、、