というわけで、NHK宮崎の番組収録は無事終了。途中、VTRの不調で一時中断となったりしていろいろありました。東京でどうしても外せない予定があり、飛行機がけつかっちんだったので焦ったけど、関東の荒天のせいで、飛行機も遅れてたので結果オーライ、なのかな。
その前の晩、最終便で前ノリしてすぐに焼肉店を訪ねる。宮崎市の繁華街からタクシーでワンメーターのところにある「岡崎牧場焼肉店」だ。NYでのドライエージングビーフ視察ツアーの際にも参加してくれた、岡崎社長の牧場の直営店である。
NYに行く前は、熟成を1ヶ月以上しているのに、特に味は変わらん変わらん、どんなんがドライエージングビーフ(DAB)なのか識りたくて来ました、と言っていた。それが、NYにきてDABに触れ、「これが熟成か!よし、これを目指すぞ!」と奮い立ち、南国である宮崎で熟成を成功させようと頑張っている。その成果が出だしたということで、ぜひ足を運んでみたかったのだ。前日の晩に、もし店が開いてるなら行くよと電話したら、
「なに、ようやく来てくれるのか!わしゃ、なんかヤマケンさんに避けられてるンかとおもっとったわ~」
などとおっしゃる。避けてるわけないジャン~
パイン牛というのは彼の牧場のブランド牛で、その名の通りパインを乾燥させた滓を餌に混ぜている。酵素たっぷりの餌だから、牛の腸内環境がよくなり、臭みの少ない肉になる。これを岡崎さんは経産牛で実現しているのだ。このブログにも何回か書いているように、一般的に肉牛の世界では処女の牛が高く取引されているが、お産を経験した牛つまり経産牛(けいさんぎゅう)の方が美味しいヨ、という人も少なくない。僕も実際、2産程度した雌牛のほうが、味と香りに深みが出てくるように感じている。
ただし、経産回数が多くなればなるほどに、肉に独特の香りというか臭いが出てくることも事実で、ある程度若い層にはこれがいわゆる加齢臭のように感じられることもある。また肉の色が深くなるので、フレッシュに見えるピンク色の肉と一緒に並べると小売しにくいという側面もあり、いい値は着かない。
岡崎牧場は直営店を持っているので、冒険的な牛の飼養管理(しようかんり)をできるのだ。
まずはドライではない通常の肉、経産牛とF1の肉をいただく。パイン滓を与えているせいか、まったく臭みはない。一方で、これは諸刃の剣なのだが、臭みも消えるが肉のコクも薄くなって、ややあっさりした味になる傾向もある。でも岡崎牧場の焼肉のスタイルで食べさせる場合、この味はアリだなと思った。ツケダレもあっさりめの味なので、肉の風合いと調和するのだ。
そしていよいよ、8産ほどしたパイン牛でドライエージングにチャレンジしたもの。すくなくとも35日は経っているとのことだ。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ
熟成香がでている!
DABにとって35日はまだちょっと若い(日本では)こともあり、そんなに強い熟成香ではないが、あのナッティーなDABでしか感じられない香りがするではないか!
やりましたね岡崎さん、ここまできたら熟成庫の状態はそうとうに佳くなっている気がしますよ。あとは、あまり人を入れすぎて雑菌が入らないようにご注意を。
と感動してたら、もっとすごいのが出てきた!40日以上DABにしたもので、もう真っ黒けになってる「ブラック」と読んでいる状態のもの。ブロックで見せてもらって、ああこれは来てますね、ということでカットしていただいた。
実は、DABに仕上げたものを一度骨抜き&カットして真空をかけ、食べる直前に真空パックを開けるとナッティーな香りがしなくなるという。ただ、真空を剥いた状態で2~3日おいておくと、いきなり熟成香がブワッと戻ってくるのだそうだ。どういうことだろうね。このブラック肉、たしかに真空から剥いたばかりなので生の状態では香りは薄かった。
これを焼いたら、、、
おおおおおおおっ これは旨い! 腐敗ではなく熟成で黒くなってる! 非常に旨みは増し、香りも心地よい範囲でついてます。ナッティーな熟成香は薄かったが、3日おいたのを食ってみたい、、、
ていうか、宮崎の人は、このエントリを見て興味を持ったら、月~火曜日が狙い目だよ。「やまけんに食べさせた”ブラック”食わせて」と行ってみて、食べて感想を聞かせて欲しいです。
いや、それにしても感動しましたね、、、岡崎さん、今後も頑張ってくださいネ!
ところで発売直後ですが、「専門料理」12月号は牛肉特集です。
月刊 専門料理 2011年 12月号 [雑誌] 柴田書店 2011-11-19 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
私が絡んでいるページも多数。しかも、僕が土佐あかうしの写真提供しているページもあり、これがなにげに嬉しい(笑)
NYで僕らが感動したブライアント&クーパーに編集長のI女史が言って、より詳細な記事を書いている。それ以外にも牛肉にまつわるネタが多数。赤肉サミットの報告も4ページ掲載されています。何より、多くのトップレベルの料理人が、黒毛和牛一辺倒ではなく、徐々にだけども地方特定品種を使い始めている、関心をもってくれているのがよくわかる。嬉しいことだ。
牛肉に興味あるひとはぜひ買ってみてください。基本、料理人や業界の人に向けた専門的な内容の雑誌なのだけども、一般向けグルメ誌とは全く違うおもしろさがありますよ。ぜひぜひ手に取ってみてください。