■ニコンD700 +ニッコール50mmF1.4 F4.0 1/400
今日は川越市で、埼玉県の入間地区の農業委員さんが集まった会で講演をさせてもらった。入間といえば僕の母校である自由の森学園があるし、川越は毎日通学して通り、途中下車して高校生の味方・シャノワールで親友と延々だべっていたところだ。60歳以上の方がほとんどで、13時半からという最も眠くなる時間帯だったが、講演は大受け。ねる人少なくてよかった~
帰り道に、サトイモ畑がいい感じに枯れてきていた。時はまさしく日が沈みかけたマジックアワー。タクシーの運転手さんにちょっと待っててもらって、畑で作業しているお母さんに「写真撮らせてください~!」とお願いして、畑の中へ。緑色のピンとしたサトイモよりも、収穫間際の、全栄養を根茎に蓄えた感がいっぱいの茎葉のさまがとてもいい、と思ってしまったのだ。
埼玉県て、東京の隣という印象しかないかもしれないけど、北や秩父方面にいけば、まだ町の中に畑が残っている。僕はその景観に子供の頃から慣れてきた。小学校への通学路には桑畑があって、桑の実が赤く熟すと帰り道でつまんで食べていた。麦も植えられていて、子供心になんで寒い秋冬にこんな緑の葉が出てくるのか不思議だった。そんな、町中の畑というのがある、というだけでもこの国は佳いと思う。
さて、講演ではTPPがらみの話から農業界が世間に対して正しく自分たちのやっていること、置かれている状況をPRしなければならないということをお話しした。TPP議論で農業界に対する批判をみると、どれもこれも正しくない、正鵠を射ていない問題が多い。例えば再三ここで挙げているように「大規模化すれば外国とも戦える」や「企業が参入すれば農業はまともな産業になる」といったことが、さも真実であるかのように語られている。
でも、それがここ20年以上ずーっと続いている気がする。僕が大学生の頃から変わっていないということだ。それはなぜなのかというと、マスメディアや論壇ではわかりやすいストーリーであったし、おそらく農業側にとっても、そういう間違った言説が流布することで、真の問題が気取られないからいいやという都合のいい考え方もあっただろう。
けれども、もうそういう時代は終わったと思う。これからは、たべものを生産し、流通し、それを国民が食べるという当たり前のことの真実を積極的にPRしていくべきだ。
先日、某大手広告代理店に務めている後輩が面白いことを言っていた。
「PRってパブリック・リレーションズて意味です。それをわかってないでPRっていってるヤツがすごく多い」
あ、そうだった。社会に対して、自分のことを理解してもらうための働きかけをPRというのだった。忘れてましたよ、、、それを、農業界たとえば農協組織が正しく有効にやってきたかというと、実にプアな広報戦略しかやっていないと思う。だって、ビジネスマンのほとんどが「農協って悪いヤツらなんでしょ」「農協潰せば農業よくなるんでしょ」と言っちゃう国なんだから。もちろん、「農協」とは例えば「商社」というのと同じようなもので、「○○物産の△△事業部はよくないことをしている!」ということはできても、「商社は悪だ、世の中から無くしてしまえ」などという幼稚なことを言う人は居ないはずだ。それと同じで、「農協は悪だ」というのは、非常に抽象化しすぎだし、間違った抽象化だ。けれども、農業や農協組織を疎ましく思うメディアや企業によって、巧妙に農協=悪という構造は、ほぼ真実と受け止められてしまっている。
だから、ただしくPRをする方向に舵を切らないとイケナイでしょう、農協さん、そして農協外の独立系の農業生産者・団体さん。
さて、講演の後、すぐさま都内に戻り、文京区民センターで開催されたTPP関連シンポを聴講。
聴いていて、心に残った部分を書いておきます。聴きながら打鍵していたので、誤記している可能性大。ご指摘お願いします。
■佐賀県 百姓 山下惣一さん
「TPPの議論が起こってから、出版されている関連書はすべて目を通してきた。不思議に思うのは、TPPに参加するとこんなに世の中が悪くなるとという本はたくさん出ているが、TPPに参加したらこんなにいいことがある、という本は一冊もない」
うん、確かにそうだ。TPPに参加するといったいどんなメリットがあるのかを具体的に著した本は未だにないのだ。
■全国ユニオン代表 鴨桃代さん
「TPPうんぬんだけではなく、これ以上日本の労働を劣悪なものにするわけにはいかない、歯止めをかけなければならないと思ってきました。」
TPP参加によって、企業は儲かるかもしれないが、労働者の賃下げ・条件悪化が進むだろう。逆に言えばTPP推進派企業は、労働単価を安くするTPPを歓迎しているわけだろうか。
「労働においては、何か法改正などある場合、どうしても条件的に低い方へと合わせられるというのが、これまでのあり方です。日本の労組法は一人でも労働組合を結成できるが、アメリカではもっと高いハードル。組合を作れても企業と交渉できないというのが法としてあります。(そういう国の基準が日本でもまかり通ることになったら、、、以上筆者山本)」
[例えば韓国においては非正規労働者は労働者ではないということになっていて、まず非正規でも労働者であると言う権利を勝ち取る戦いから始めなければならないそう。こんな風に、グローバル化するということになると、より低い水準のところに合わせられてしまうでしょう。まだ日本の労働法の中身にはまだまだ問題があり戦わなければいけないのに、TPPで他の国レベルに低められることになってしまうことになることは、許してはいけないのではないでしょうか。」
■佐久総合病院の医師・色平哲朗さん
「日本の医療費は先進国中ではダントツに低い医療費だということがあまりしられていない。医師不足をどうするか?医者を輸入するか、患者を輸出するしかない(笑)現実では、イギリスが医療崩壊した際、医師はカナダなどへ流出してしまった。医者は言葉もできるし、国境を越えて動く時代になってしまった。そんな中で国民皆保健の仕組みを、可能性だとしても変える方向にいっていいのか」
「TPPは憲法に優越する協定であろう。つまり国家より企業が優越されるということである。デフレ下の日本に外資が参入すれば、さらなるデフレになるだろう。国内法規よりTPP協定遵守が優先され、他参加国からも突き上げられ、企業からも訴追され、国内法規の変更を強いられるだろう。」
■慶應義塾大学 金子勝先生
「この国は加工貿易の国で、貿易黒字さえあれば食料でも何でも買えると教育されてきたが、その裏には大きな意図があるとみなければならないのではないか。バブル崩壊後、不良債権処理でもたついて、財務省、大手銀行は危機管理能力を問われてきた。小泉政権で国をめちゃくちゃにして、、、驚くのは、「誰も責任をとっていない」ということ。」
「TPPで何を交渉するのか明らかにしないということが非常におかしい。これは、、、作戦はすでに失敗しているが、国民には伝えないことで、進めてしまおうということではないか。交渉能力がないことは、イラク戦争や普天間問題で明らかだ。普通は国民の要望に応えてアメリカと交渉するのが外務省だが、現実はアメリカの意向によって動いている。誰も追求されない、誰も責任を問わないからこんな風になる。」
「郵政民営化は出てくるだろう、BSE規制の基準緩和などもおそらく出してくるだろう。「今の段階ではそんな議論は出てきていない」当たり前だ、日本だけがそうしたことを基準として遵守しているのだから、議論に乗るわけがない。」
「挙げられている項目は沢山あるが、ご存じのようにここまで行くにはいくつものウソがある。農業さえ救えばいいという構図はまずウソ。次にあるのが、米韓FTAが結ばれたので日本も遅れちゃいけないというのは大きな論理の飛躍だ。FTAは二国間交渉だ。つまりそういう言い方をする人には「じゃあ日米FTAをすべきでは?」という話をすべき。」
「韓国は「ランドラッシュ」。FTAで開国して農業を犠牲にしたので、他国内の農地を買うなどして食料を調達するつもりだった。マダガスカルでは開発援助の見返りに農地を獲得するつもりだったが、住民の大反対で立ち行かなくなった。つまり、韓国はすでに失敗しているのです。」
「条項を明確にして他国と交渉するポジティブリスト方式を採ればいいのだが、日本はネガティブリスト方式で「これは譲れない」という方式。これだと、本当に主張しないと押し切られやすい。」
とこんな感じだったでしょうか。
書きたいことはいろいろありますが、非常に疲れました、、、帰宅します。
最後にサトイモをもう二景。
もうしばらくしたら掘り時ですかね、、、
芋煮会をしたいものですな。ああ、山形へ行きたい! 明日は都内にて、第三回フードアクション・ニッポンアワードの選考委員として審査会です。