先のエントリアップしたあと「カレーちゃんぽんはいつ出てくるんだ!」とおしかりの言葉を数件いただいた(笑)ので、はい、書きますとも。けどその前に冷や汁なんです。
宮崎空港ビルの社長さんが自信満々にみせてくれたメニューを見て、ぼくは正直、心の中で「あちゃー そっちの方にいっちゃったの!?」と声を上げてしまった。先に書いたように、冷や汁を展開するならば、ぜひ宮崎県内の地域別の味、魚が違うとか味噌が違うとか具材が違うとか、そういう差異を押し出していくつかのラインナップを作ったらいいのではないか、という提言を宮日新聞上のコラムでしていたのである。
しかし!
宮崎空港ビルの向かった方向性はちょっと違う方を向いていた、、、
魚山亭あらため「夢かぐら」ののれんをくぐる。と、魚山亭時代から顔なじみの店長さん(なのかな?)が迎えてくれる。知った顔が残っているのは嬉しいね。
そして、この写真奥のにある三つの定食メニューをみて欲しい。
夏の特選「冷汁」メニュー、、、 じゃじゃじゃーーーーーん!
海鮮冷汁定食(たこ・イカ・ホタテ貝)
トロピカル冷汁定食(バナナ・パイナップル・アボカド)
元祖冷汁定食
なんと「海鮮」と「トロピカル」ですよ、、、 うーん 俺のコラム、ホントに読んで参考にしてくれたの?とこの時点でかなりがっくり。いくら何でもトロピカル冷汁はないでしょう、トロピカルは! と、この時点では思っていた。(←伏線です)
さて、奥の部屋で運ばれてきたこの3種の冷や汁。
こんな風に、3種を食べ比べするセットもあるそうだ。
通常の冷や汁メニューは温かいご飯に冷たい冷や汁をかけて、生暖かい状態で食べるものだ。しかし、昔ながらの郷土を知っている人からすると、もう一段深掘りすると違うらしい。
「あのですね、もともと冷汁は冷やご飯で食べるもんだったんです。炊飯器も無かった時代は特にね。それでいま、節電ムードもあって冷房がきいとらんでしょう。だから、暑いもの食べたくない人が多いわけです。そこでね、この冷や汁セットには砕いた氷を添えようと言うことになったんです。」
なぬ、氷!?
「ええ、もちろん氷が溶けると汁が薄まるので、冷や汁の塩分濃度などは強めにしてあります。あと、ご飯も冷やしたものをお出しします。これで、食べていただくと爽やかに涼しくなるということなんですよ。」
と社長さんがニコニコしておっしゃる。
実はこの時点で僕は不安を感じていた。冷たすぎるんじゃないか?という不安だ。 人の舌は、冷たいものの味はよくわからなくなる。コーラを常温で飲んでみると、たまったもんじゃない甘さだということはご存じだろう。しかし冷やすととっても美味しいと思えてしまう。つまり、清涼飲料水は冷やして美味しくなるように、常温では飲めたもんじゃない程の糖分を使っているのだ! だから、ただでさえ冷たい冷や汁に加え、ご飯も冷やし、かつ氷までいれちゃったら、味がよくわからなくなるんじゃないか、と。
とりあえず一番ゴージャスなメニューである海鮮冷汁に冷えた白飯、氷も投入していただいてみた。
、、、不安、的中! やっぱり味がよくわからない。塩分さえよく感じないのだから、魚味噌の風味も何も効かない。しかも、海鮮として入っているタコ・イカ・ホタテがいまいちだ。というのは、これらが刺身状態の生で入っているのだ。醤油につけて食べるならともかく、汁飯として啜り込むのに、グニョグニョした食感は実に気持ちが悪い。
ということで、
・この「器も白飯も冷やして、氷までつける」方式はやめにした方がいい。ご飯は温かいものを使い、食中にぬるい状態になるようにすべし。
・海鮮は刺身状にするのではなく、食感が欲しいので軽くゆであげるべし。なおかつ、イカソーメン的なカットではなくキューブ状のカットにして、よりその食感を際立たせるべし。
という二点を指摘しておいた。そこさえやってもらえれば、ベースとなるこの店のオリジナル冷や汁は鯛を使っている高級バージョンなので旨いはずなのだ。
、、、と指摘はしたが、僕はあまり期待していなかった。社長さん、いろんなところを食べ歩いておられるし、ご自身が非常に食べることがお好きな方とお見受けした。その人が自らアイデア出したメニューに、外のなんだかよくわからんコンサルタントが言ったことなんかで手を入れるなんてこたぁないだろう、と。
ところがどっこい、この冷や汁はたったの2日間で劇的に変化することになるのだ! 僕が帰京する土曜日、空港ビルディングの大久保課長さんに挨拶したら、、、
「実はあの後、すぐにうちの社長自ら試食をしまして、、、氷入りと温かい白飯の双方を食べ比べて、『 うん、明日から温かいご飯に変えよう』 と言ったんですよ! 私どもビックリしました。うちの社長も食べることが好きなので、なかなか自分が考えたものを変えることはしないんですが、、、」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
これは素晴らしい! 僕のごとき若造の意見をよくぞ取り入れてくださいました、、、ちなみに海鮮冷や汁の具材も、茹でてキューブカットに変えるそうだ。現場のオペレーションが大きく変わってしまうので、店で提供する女性陣の練習が大変だったそうだが、それでも鶴の一声で即決。 こういうトップダウンは、正しいよなぁ。
さて、海鮮ばかりの話をしてしまったが、、、もう一つ、実にその名前を聞いただけでプッと吹き出しそうになっちゃうのがあるのであった!
そう、トロピカル冷や汁である!
バナナ、パイナップル、アボカドというトロピカルフルーツが入ったこの冷や汁、みなさんどう思いますか? いやー正直僕は、これほど安易かつ陳腐なメニューはないよなぁ、社長の手前だから言えないけど、と思っていた。
けど食べないとわからないからね。一応は食べますよ、、、と箸をつけた。
ム!!!!!!!!!! これはビックリ!!!!!!!!!
意外に美味しい、、、いや、冷や汁にフルーツという違和感がないぞ、、、
バナナがあまり熟しすぎてないからか、タロイモのごときでん粉感があってすんなり調和。パインも意外に、それほど甘みが強く主張しておらず、違和感がないのだ。アボカドは甘さがないから、冷や汁に合わないわけではない。
ということで、この一皿、僕の予想を覆して、美味しく食べられる仕上がりであった! いやー 超・ビックリ。
でもね、そうは言っても、これを手放しで喜ぶわけじゃありません。本当は冷や汁の美味しさを、こういう奇抜なトッピングで訴求するのではなく、土台となる焼き味噌の味、魚の違いで違いを出して表現して欲しいのだ。
と、ここで和食部門の料理長である阿部さんご登場。
本当は、こういうイロモノメニューじゃなくて、旨い冷や汁を隠し持ってるんじゃないですか?と訊いてみたところ、、、
「実は、この店ではなくて、レストランコスモスの方では太刀魚を使った焼き味噌の冷や汁を出しています。」
ええええええええええええええええええええええええ 太刀魚!? それは食ったことがない!
運ばれてきましたこの冷や汁、具材をすくってみると、、、
豆腐、キュウリに加えてシイタケを煮たやつと、小さなちりめんじゃこが入ってる!
結論からいいますが、こいつがめっぽう旨い! 太刀魚の上品ながらビシッとした直線的なコクが冷や汁全体のトーンを鋭角的に決めている。シイタケのような個性の強い素材が入っていても、魚を感じるのである。これは旨い!
「これこれ、これですよこれ! 冷や汁のベースになる焼き味噌に使う魚で違いを出して欲しかったんですよ!これも夢かぐらで出してくださいよ!」
と言うと、もぞもぞしだした阿部料理長。
「あの、実はまだ開発途上なんですけど、もう一品食べてもらっていいですか?」
もっちろんですよぉ もうすでにかなり大量の白飯と冷や汁を摂取してるけど、食いますよ!
そして出てきたのがこいつだ!
なーーーんと、鶏の炭火焼きである!
「これは、鶏のセセリなんです。とても美味しい部位なので、炭火焼きにした後、酢と醤油ダレを熟成させた特製のタレに漬けてあります。ベースの冷や汁なんですが、こちらも普通は焼き味噌をだし汁で割るんですが、半分を鶏スープで割っています。」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
これはイイ! イイですよこれ! 早速いただいてみると、確かにひとすすりしただけで魚とは違うコクと風味を感じる。ぜんぜん違う路線の味になる。それに、真っ黒黒になるまで焼いていない、じんわりした暖かみに焼き上がったセセリがジューシーで、食欲をそそる!飯との相性も抜群である。
なんだなんだ、つまりこの宮崎空港ビルでは、すでに変わり冷や汁3種の正道ともいえるものが出来ているんじゃないか! 普通の、鯛をつかった上品バージョンにくわえ、太刀魚バージョンの濃厚かつシャープな味、そしてスタミナ系といえる鶏のセセリ乗せ冷や汁! どれも完成度、非常に高い。特に鶏セセリ冷や汁は単品で980円で食えればいいんじゃないの、というくらいのボリューム感。あ、もうちょっとするかもしれんが、、、
ということで、現在「夢かぐら」では、改良版の3種変わり冷や汁を食べることが出来る。改良版はまだ口にしていないので何とも言えないが、きっと美味しくなっていると思う(そもそもベースの鯛の冷や汁が上質だからね)。しかし、ド本命はなんといっても太刀魚と鶏セセリ冷や汁だな。これらがメニューに載る日を心待ちにしている。
さて、普通ならここで終了するんだが、、、
次に、ラスボス的な素晴らしい料理が出てきてしまったのだ。そう、カレーチャンポンである、、、
(またまた続く)
PS 大事なことを書き忘れた。宮崎空港の出発ロビー内の売店でも、とうとう冷や汁を売り出したそうだ。宮崎を離れる惜別の時に、ぜひ冷や汁を一杯!食べてみてくださ~い!