タキイ種苗のSさんより、新品種のピーマンが送られてきた。ちなみにSさんは僕の好みど真ん中の涼やかな美人で、結婚して欲しくない度No.1だった女性なのだけれども、先頃ゴールインされてしまった。人生とは本当に非情なものである(笑)
で、この子供ピーマン、外観だけ観ると、縦の筋が入っていないので、ピーマンというよりはトウガラシのように見える。まあ、ピーマンとは辛くないトウガラシとも言えるので、当然と言えば当然だけど。
さっそく割って観ると、ご覧の通りかなり肉厚だ。通常のしし型ピーマンの通常出荷規格からすると1.5倍くらいの厚みがあるような感じ。ただし、この子供ピーマンを成熟果にしたときにどれくらいの大きさになるかわからないので、もしかしたらもっと厚くなるのかもしれない。ちなみに、緑色のピーマンは未成熟な段階の果実です。成熟すると赤くなります。
大きさはこんな感じ。表面が滑らかで、ヘタ部が長く切ってある。一番の特徴は、横に切ると断面がこのように二室に分かれていることか。
ただ心室数は生育状況によるから、もっと大きくしたら別れるのかもしれない。それにしても容積における果肉の比率が非常に高い。
生のままでかじってみたが、ジューシーで甘みがある。ターゲット層はそのネーミングからもピーマン嫌いな子供ということだろう。これなら確かにピーマンが嫌いな理由の上位である「香り」「苦み」をクリアしているので、非常に受けそうだ。
家に帰ると、「富士酢」の飯尾醸造から、お祖母ちゃんの畑で獲れた万願寺トウガラシを送ってきてくれていた。おお、これはよい比較ができる、と双方を加熱して食べ比べてみた。
万願寺トウガラシはほとんど辛みのない在来品種であり、ピーマンよりも濃密な香りとほどよい苦みがあり、甘辛く炊いたときにはこれが最高に旨く感じる。一方、子供ピーマンはまず食感に特徴がある。厚みのある果肉は、加熱してもとろりとせず表面のプチッと感が残る。万願寺がとろりと溶けるのに対して、子供ピーマンはサクリとした食感が強く残る。そして、やはり加熱したときに甘みが最大限に発揮される。これならピーマン嫌い、という子供も好きになるだろう。
タキイのマーケティング戦略としては非常に的を射たものだと思う。数年前、タキイの実験ほ場を見せていただいたとき、「内緒ですよ」といわれつつ色とりどりのトウガラシが試験栽培されているのを観た。インドなど新興国向けの品種開発の一環だったわけだが、子供ピーマンはこの中で出てきた派生品種なのではないか、と推測する。
本当は、こんな風に甘くてジューシーな野菜ばっかりになってしまうのは嬉しいことじゃない。日本人は「苦み」や「えぐみ」などの複雑な味の奥に美味しさを感じることができる繊細な味覚を持っている。けれどもそれは先天的なものではなくて、子供の頃にそうした「美味しくないもの」を食べさせられることで味覚のタネが生まれるのだと、僕は考えている。子供の頃から甘くてジューシーなものばかりに囲まれて育ったら、いつまでたっても苦みは苦みであり、美味しさに転じることはないだろう。
だから一方で、苦みやえぐみ、匂いの強い野菜をもり立てていかなければならない。タキイさんには、売れにくい在来系の品種も残してね、とお願いしておきたい。
それはともかく 非情に美味しいピーマンでした。これを一杯ぶち込んだカレーを食べたくなった! Sさんご馳走様でした。
PS
この撮影は、ニコンD700を買ったときに同時購入した、カールツァイスのマクロプラナー50mmF2.0 を使った。先日の赤肉サミットで、柴田書店のカメラマンE氏がD3Sにこれを着けて撮っていたのだ。「いいっすよこのレンズ!」と言われ、俺も持ってるけど全然使ってないや、と反省。久しぶりに使ったのだけれども、マニュアルでピント合わせが大変ではあるけれども、実にイイですなぁ、、、もっと使おうっと。