カッツでパストラミサンドを堪能した後、宮田タケトラの先導によりいくつかの注目点を散策。
それにしてもNYのたたずまいは、東京の澄ましたそれとは違って味がある。
古いビルディングの存在感がすごいのだ。
まあ、この辺は旅をする人の一過性の興奮で、慣れればなんともなくなるのかもしれない。日本を訪れる旅人も、神田の古い裏通りを歩けば同じようにエキゾチックだと興奮するのだろうけれども、数年ぶりのNYの風景は実に好ましかった。それになにより、日差しは強いが湿気が無くて非常に過ごしやすい!
まずは、評判のピクルス専門店を目指すが、iPhoneでのグーグルマップ表示ではどう考えてもここだというのに、店が見つけられないという自体に。
「あ、でも近くにもう一件、ピクルス専門点の「ピックル・ガイズ」てのがあるらしいんで、行ってみましょう!」
なんだその名前は(笑)! その店はすぐに見つかった。
これが驚いたことに、店内から行列がはみ出るほどの客を集めて、大入りである。店内はシンプルで、なんもない打ちっ放しの壁に囲まれた部屋に、樹脂製の樽(よく、中国製の山菜とか塩蔵キュウリが保存されてるやつだ)が一杯並んでいる。その中には当然ながら各種のピクルスが漬け込まれていて、客はテイスティングをしながら(たぶん)買うのだろう。
日本では、酢漬けピクルスが上品なもののように売られているし、それを使うシーンもウインナーやスモークサーモン、ハンバーガーを食べる時に限られていて、特別な扱いになっている。けど、アメリカでパストラミサンドやハンバーガー類などの油脂類たっぷり、塩分濃度つよめ、しかも単調な味のものを食べていると、無性にこのぱりぱりした歯触りと酸っぱさ、香草の風味を摂取したくなる。まあ、日本におけるぬか漬けというか、付け合わせとして愛されているんだろう。
「買ってく?」とタケトラに訊くが「いえ、だいたい想像つきますんで、もういいです」とあっさり。
「それよりこっちに、ドーナツプラントの新店ができたみたいなんで、みにいきましょう!」
とすたすたと歩いて行く。iPhoneのGPS機能とグーグルマップの組み合わせを、こいつほどに使い切ってるヤツも居ないんじゃないだろうか、、、
そのドーナツプラントに行く途中にあるコーシャーベーカリー。ユダヤ系のパン類が並んでいるそうだ。
甘くないベーグル。買わなかったけど、ちょっと後悔。どんな味でしょうか。
右手にあるのがドーナツプラントの新店。拍子抜けするほど小さい。カウンターにはドーナツが並んだガラスケースがあるだけだが、注文を待つ人でここも店内は満杯!
買うのか?と思ったらタケトラ氏、
「いや、買うほどじゃないッス。」
といってすたすたと歩いて行く。つまりディスプレイやメニューなんかを確認して、宮崎の食品スーパー「フーデリー」の店頭ディスプレイに参考にできそうなものがなければさっさと見切りをつける。そのスピードと潔さに、惚れちゃうよ! タケトラ、達人である。
さて、そこからまた数ブロック歩いて、チャイナタウンとイタリア街の狭間に位置する、イタリアンフードのデリ「ディ・パロス」へ。
どちらかというとデリというよりも、いろんな種類のハムやサラミ、チーズをスライス&量り売りしてくれるのに並ぶような店。ちょっと初心者・外国人には敷居が高いな。
でも、生パスタや、みたことないちじれ細ラーメンのようなパスタとか、買いたいものがいっぱいあった。アンチョビのでっかい瓶詰めが1000円程度。うーん重くなければなぁ、、、
この店を出て、タケトラ君が次なるスポットを検索中に、喉の渇きを癒そうと歩いていて、中国のスイーツ店みたいなのに入る。
スイカのジュースやタピオカジュースが2.5ドルとかで売っている。
目の前で切って氷とミキサーにかけ、しかもふたをシーリングしてくれる。そこへ太いストローを突き立てて飲む。こいつが実にうまい。NYを歩いていると、自動販売機はそんなにない。屋外にはまずないし、警備の行き届いている店内とかにあるくらいだ。その代わりこんな感じで、持ち帰り用のジュースを買うところがけっこうある。その方がいいね。自販機があふれる日本はやっぱり、おかしいね。
飛行機雲がクロスしてるのを見ながら、ホールフーズマーケットへ。昨日も行ったけど、あまり品ぞろえがよくなかったので、別の店に行こうということになったのだ。
あいかわらずディスプレイは巧みだ。とくに、生の果物や野菜をカットしたものがカップに入れて売られているのが、実にうまそうでよい。
日本で同じことをやるとすんごくまずそうで、しかも高い。次亜塩素酸水を通して滅菌処理し、一般性菌数を気にしながら商品化するから、なんだかどこの店でもカット野菜はうまそうにみえないのだ。これは、ツアーに同行した、大阪の一頭丸買い焼肉「牛心」の伊藤さんや、札幌の肉卸である大金さんも同じ感想を漏らしておられた。
日本の衛生関係の規制はちょっとおかしい。衛生のために様々なものが犠牲になってる。それは、「この規制なくしてよ、消費者側が自分で責任持つからさ」と言わなければ永遠に続くような気がする。そう、鍵は結局、消費者が持っているのだ。
飲料の棚に行くと、かなり日本茶のPET製品が並んでいるのに驚く。
しかも、伊藤園の製品である。やってますなぁ。
いろいろ物色してると、こんな製品があった!
左端の青いラベル。「KOMBUCHA」こぶ茶である!こんなん、誰が飲むんだ!?清涼飲料水だと思ってゴクッと飲んだアメリカ人が、思わず噴き出すんじゃないかと思ってしまう。
さて、このホールフーズでは、はっきり確認したかったことがあったのだ。それは精肉売場にある。
コルクボードに「5 STEP ANIMAL WELFARE RATING」と書かれて、色が描かれている。これは、ホールフーズ社が独自に内部基準として策定した、いわば「ホールフーズではこういう基準に沿って畜産製品を扱ってますよ」というものだ。
この基準のことを教えてくれたのは、愛媛大学の准教授である野崎健也だ。僕のブログには学生時代からの盟友としてしょっちゅう載っているから、ご存じの方も多いだろう。
彼がアメリカで研究している時に痛烈に感じたのは、EUや米国ではすでに畜産をエシカル(道徳的・倫理的)に行うという明確な路線ができていて、少なくとも国民のある程度はそれに賛同し、倫理性を満たすものを購買するということ。そして、人間に対してエシカルというだけでなく、動物にもエシカルに対応する、それが動物福祉(アニマルウェルフェア)という概念にまとめられて洗練されつつある。
「日本人はけっこう、向こうから笑われてるで」
と野崎に教えられて、むかっと来たけれども、でも何も言い返せねぇな、とも思う。日本では、富裕層も一般も、ぜーんぶたべものを「美味しいか」「安いか」「健康にいいか」というような、自分にとって利益となるかという観点だけで選ぶ人が多いことは真実だろう。
「ヨーロッパは階級社会やけど、少なくともアッパークラスはそれに見合った食をとろうとしてる。けど、日本人はアッパーもそうでないのも同じや」
と言う野崎は、まずは料理人に対する動きとして、サステイナブル・シーフード研究会を立ち上げた。こういうこともあって、僕は野崎の活動に協力しているわけだ。
さて、くだんのホールフーズの5ステップとは、こんな感じだ。
Step 1: No cages, no crates, no crowding
狭いカゴや柵に閉じ込めず、密飼いの無いこと
Step 2: Enriched environment
豊かで快適な環境(動画では敷き藁などが挙げられてた)
Step 3: Enhanced outdoor access
野外へのアクセスが容易なこと
Step 4: Pasture centered
放牧主体であること
Step 5: Animal centered; no physical alterations
動物本位で身体的な改変がないこと(鼻輪や断尾や焼き印などがされてない)
Step 5+: Animal centered; entire life on the same farm
動物本位で生まれてから死ぬまで同じ農場であること(以上、野崎健也准教授が訳してくれました。)
そして、ホールフーズでは最低限、ステップ1を満たしたもののみを置いているというわけだ。さて実際の精肉売場はどうだったかというと、ちゃんと冷蔵ケースにこのステップを表す色カードが貼られている。また、この基準意外にもローカルな地域で獲れたもの、生産者が明確なものについてカードで表記している。
こちらはオレンジ(STEP1)のポーターハウスカットの牛肉。
そしてなんと、グリーン(STEP4)の上位にあるのが、完全グラスフェッドで放牧飼育された牛肉なのである!
残念ながらこのグラスフェッドビーフについては、ポーターハウスカットが売っていなかったので、同一部位で穀物飼育のものと比べることが出来ない。しかし、この誇らしげな表示。
しかもこの表示にはLOCALマークもみえる。NY近郊で飼育しているのか、と思いきや、野崎に写真を見せたら
「農場まで54マイル、と表示してるのもさすがやね。米国では100マイル=160km以内は余裕で「ローカル」。」
だそうだ。なんだ、結構離れてるな。この辺は国土の広さの違いか。
それにしても見事に真っ赤っかな肉。はたしてアメリカ人はこれを食べて何というのか、識りたいところだ。WholeFoodsLoverな米国在住の方、もし情報あれば教えてください。
いやー 実物を見られてよかった。ここで一端ホテルに帰ったのでありました。