僕は、関東風の蒸したうなぎも好きだけど、同じかそれ以上に蒸さないでばりっと焼いた西日本のウナギの方を好む。なかでも足繁く通う宮崎のウナギは大好きなのだけれども、今回ばかりは未体験ゾーンへの突入だった。驚愕の味、である。
宮崎市内の端っこの方にある「うなぎのやまぐち」。この辺は100メートルおきに鰻屋の看板が見えるかんじだ(笑)
■うなぎのやまぐち
http://www.calcium.co.jp/user_page_unayama.html
今度、とある会で招かれて話をするのだけど、その実行委員にここの若旦那が名を連ねているのだ。それもあって、店で作戦会議。
「やまけんさん、宮崎のウナギは西都市でいろいろ食べていらっしゃるようですが、ウナギのあらいって食べたことありますか?」
と若旦那の上山さんが訊いてくる。うーん、過去にどこかでウナギの刺身というのは食べたことがあるな。けどそんなに美味しいものだとは思わなかった。やっぱり、独特の臭み、脂、小骨などの問題から、焼いて食べる方がいいのではないだろうか。
「そうですよね、それが普通の反応ですよね。で、うちの祖父が創り出したのが名物”うなぎのあらい”なんです。ちょっと食べていただこうかと、、、」
と出てきたのがこれだ!
ごらんのように白皿の中に、特注であろう、はめ込み式の網というかザルというかよくわからない部分があり、その上に生のウナギのみを細切りにしたものが置かれている。そして、宮崎特有のあの甘い醤油がついてくる。
「これはですね、食べ方があるんで、よーくみておいてください」
と上山さん、やおら醤油皿の中にウナギの身をズザッと投入!
「ウナギの肉を醤油によーく絡めてください。そんで、絡んだらこの中央の網に戻します!」
おおおおおおおおおおおおおおっ! なんたる大胆な!
「こうすることで味はウナギの肉にまんべんなく回り、かつ余分な醤油は網目から流れ落ちるという寸法です。」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
そうきたか!そのための特注の皿だったのか!こんな使い方している食器、なかなかないのではなかろうか!?
僕もやってみることにするが、それにしてもウナギの生の身肉ってこんなに美しいものなのか、と思ってしまう。
それを醤油皿にざざっといれてよーく絡め、網皿の上に戻す!
ひえええええ うまいのかよ本当に、と疑うでしょ? でしょ?
驚いてください!
これは、特筆モノの美味しさなのです!
口に運ぶとまずは甘い醤油の香りと甘さが舌に伝わるが、よく引き締まった身肉を噛みしめるとなんとも不思議な、柑橘?と思うような独特の香りが染み出てくるのだ。焼いたウナギとは全く違う繊細な香り。キュッキュッと言うような引き締まった食感がだんだんとやわらんでいき、上品な旨味を感じるようになり、嚥下。
これは正真正銘、初めての味である! いやビックリしたぁ、、、
「私もこれをよく喰ってましたから不思議はないんですが、他の店ではありません。うちのじいちゃんが編み出した秘技があるんですが、門外不出です。以前、この店をテレビが取材しに来たときに、プロデューサーが「作っているところも撮りたい」とうちのじいちゃんに行ったところ、いきなり不機嫌になって「技を盗みにきたんか!?帰れ!!」と一喝して終了、となったことがありました。」
いやぁ、確かにコレはスゴイ秘技である。ウナギには独特の匂いやエグみのする脂をまとっているので、それを抜くためにも蒸したり、焼き切ったりするわけだ。その脂が、火を通していないのに一切感じない状態になるというのはいったいどんな手を使っているのか。うーんしかしそんなことはともかく、うまいぞウナギのあらい!
ちなみに一匹分が盛り込まれてきて、945円。安いぜコレは!
「うちの家族もいつも食べてますが、これを食べると、不思議なことに身体がぽかぽかと温まるんですよ。いま、どうですか?」
あれっ? そういえば寒くて着てたダウンとか、脱いじゃったよ。たしかに身体が温かい感じがする。この日僕は38度に届きそうな熱がでている状態で出張していたんだけど、なんだか元気になっちゃった!
「それに追い打ちで、うなぎのせいろ蒸しを食べていただこうと思って。」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
タレをたっぷり回しかけたご飯にウナギ、錦糸卵をのせてせいろで蒸した一品!
みよ、このタレがギュワーっとしみこんだほこほこのご飯とウナギのコントラスト!素晴らしき茶色である!
ウナギもさることながら、蒸されることで食感がもっちりとしたご飯のうまいことうまいこと。
宮崎におけるウナギのせいろ蒸しは、関東風のウナギで白焼きを蒸すのと少し違うけれども、結果としてウナギの身肉はほろっと軟らかくなり、流れ出た脂のくさみなどはぬけ、旨味だけが残るという素晴らしきフォーメーションになっている気がする。
せいろがいい仕事してる。いやー文句なしにうまいです。
ところで、鰻屋さんでは当然のごとくウナギの骨が残る。骨せんべいなどにして食べるのが普通だが、なんとこの店のおじいちゃんはこれをカルシウムたっぷりの健康食品にしてしまった。その名も「救骨さん」!
たっぷりサンプルをいただいたので、効果のほどは半年ほど後に、僕のカルシウム摂取量にて、、、(笑)
それにしてもうなぎの洗いも、蒲焼きも実にうまかった!マジですぐにでも再訪したいと思った店なのである。今月は26,27日に宮崎出張。さあて食いに行く時間あるかなぁ、、、