昨日の事業仕分けにおいて、あまりニュースにはならなかったけれども日本の第一次産業にとって重要な予算が仕分けされてしまった。
「普及指導員の配置および普及指導活動の実施等」というもので、各県にいる7500人弱の普及指導員への国からの35億円の補助金を「抜本的に見直し」せよということだ。一言で言えば、全国で農家に対し技術面や経営面でサポートをしている「普及員さん」という人たちの活動予算を大きく仕分けてしまったということだ。
昨日の仕分け会議終了後の時点で、各地で僕がおつきあいしてきた普及員さんからメールが届いた。みなが言っているのが「仕分け担当者は現場を知らないくせに、ペーパーで書かれたことだけで判断をしているが本当にあれでいいのか」ということだ。
普及員という人たちの仕事、一般の人は知らないだろう。各県の公務員であり、農畜産業の生産者に対して様々な支援を行っている人たちだ。「支援」といってもその一言の中身は深い。技術指導であったり経営面でのサポートであったり、地域内の女性グループの活動を補佐したりと幅は広い。
そもそも農畜産業は「一人で出来るもん」という仕事ではなく、関係機関との許認可調整がイヤと言うほどあるもので、農家がひとりで対応出来ることには限界がある。例えば民主党政権になってからの政策の柱である戸別所得保障制度だって、実際に国は行政上の処理フローなどを各地方に任せてしまっているため、対応におおわらわとなる。農家も不安で「来年の作付面積を増やしていいのか減らせばいいのかわからない」など、いってみれば生死に関わる判断をしなければならない。そういうところで行政と現場をつなぐ相談役として機能したり、もっと末端の業務までいけば書類の書き方から何からを指導する役割を果たしている。
なーんて書いていったら、1万字くらい必要になるなこれは。普及事業の内容は日本の農畜産業のバリエーションの多さに比例するんだから、膨大なんだよ。
しかし、35億円程度の金額を杓子定規に仕分けてしまう行政刷新会議の見識を疑うね。結果のペーパーをみると、「国が交付する必要があるのか?県で対応しろ」「普及員数が減少しているのだから額も減少すべき」等書いてある。あのね、そもそも普及員数が減っているのは各都道府県の予算緊縮によって人減らしをされた結果である。そして、各都道府県も財政難だから、普及員の給与は一律で大きくカットされている(一昨年あたりから何人の普及員さんが嘆いていたことか)。
各地の普及所も人員を減らし、広域に合併を進めている。その分、ひとりあたりが面倒をみる農家数も数十人単位で増えていく。つまり業務量は増加しているのだ。各都道府県が埋めきれない予算を国が補助しているわけで、合理性はあるどころか、農畜産業をこの国で続けていく意志がある政権であるなら、増額してあげるのがスジではないだろうか。
WGの結果レポートをみると、評価者のコメントにあきれたものがある。
「参入障壁の問題もあるので、規制緩和とともに考え直すべき」
誰が言ったんだこれ。テレビ見てた人はぜひ教えてください(そもそも映像がどっかにアップされてないかな)。他産業や新規の参入障壁と普及事業は全く関係ないでしょ。というより、新規参入者への指導・支援も普及員がやってるんだよ?「農業の問題は新規参入に障壁があるということだ」と唱えていれば、知ってる人のフリが出来ると思っている無知な人の発言でしかない。日経新聞かおまえは。
しかももっと言ってよかですか。この事業仕分けの次のテーマが「漁業担い手確保・育成対策事業」と「「緑の雇用」現場技能者育成対策事業」という、同じ第一次産業の漁業と林業における新規参入支援の事業なのだが、これも
「予算要求を半額程度縮減・見直し」
である。新規参入支援まで仕分けしてるじゃないか!
片方では「日本の農業を強くする」と言っておきながらもう片方では、世界的にみても高水準にある日本農業を支え創ってきた仕組み自体を弱体化させようとしている。業界にずっといる人間が本当に必要だと思う予算が縮減されていくのを見ていると、この事業仕分けというショーは本当にやっていく意義があるのか?と疑問を呈さずにいられない。
あー 腹が立つ。民主党って本当にバラバラの、統一した意思を持たない政党だね。