僕には逆立ちしても撮れない、そしてどうやってこういう場面でカメラを向けるのかというスナップを撮る名手である角田さん。高知県庁で車のドライバーをしていたのに、「あれ?写真の賞をとったりしちゃって、アナタは県のカメラマンとして動いた方がいいんじゃない?」ということになって県の公式カメラマンになっている方である。
そんな角田さんが開いた写真展は、なぜかロシアのスナップ集。
角田和夫 「MY JOURNEY TO SIBERIA」展
9月27日(月)~10月8日(金)
秋葉原 コダックフォトサロン
〒101-0021 東京都千代田区外神田3-12-8
住友不動産 秋葉原ビル 12F
http://wwwjp.kodak.com/JP/ja/professional/photoSalon/2010/p20100927.shtml
この旅の動機がすさまじい。父親が亡くなり、その死に大いなる衝撃を受けた角田さんは、軍人だった父親からずーっときかされてきたシベリア抑留の話を追体験しに、語学を学んだ上でロシアに渡るのだ。当然、彼の中では「敵国」としてのロシアがあった。楽しい旅行を死に言った訳じゃあなかった。
しかし、ロシアに足を踏み入れ、シベリア抑留のルートを歩いてみると、彼は人々から歓待を受けるのだ。遠い国からようこそ、と。中には父親が属する日本軍捕虜の行進を見ていたという人もいる。そんな人たちが涙して迎えてくれたという。そして、写真家の心も変容していくのである。
そんなストーリーがあるのだけど、簡単な一枚の説明以外はモノクロ写真のオンパレードだ。
じつは角田さんすごいことになっていて、ロンドンのグループ展のファイナリストに残っているのと、あと世界のキュレーターが集まるパリフォトというイベントで大変な好評で迎えられ、数カ国からオファーが来ているというのだ。
それはそうだろうなぁ と思う。角田さんの写真は、日本より海外で評価されそうだもの。
角田さんはニコンF4でコダックのトライエックスという白黒フィルムを使って撮影する。現像も自分だ。というよりも、むしろ現像処理の技術に自信があると彼は言う。
「いいプリントは一日に、できて二枚ですよ。それが限界。」
僕のようにデジタルになってから写真を始めた人間にはわからない世界。うらやましい。
その写真はなんというか圧倒的な存在感だ。
今回の写真の中で最もはっとした写真の一枚。
「このおじいさんがねぇ、捕虜の行進を目撃していた人です。その当時、司祭さんだったそうです」
ああ、そうなのか。この人は角田さんのお父さんをみていたかもしれなかったわけだ。
軽く呑みながら、角田さんの写真にかける情熱に圧倒される。そして、58歳になってからの大きなチャンスをどうしようかと、意欲満々にしている角田さんに心からの応援を送りたくなる。
「来年はアルルに行きましょう、アルルへ!」
うーん、行きたい!
なお角田さんの写真展の会場であるコダックフォトサロンは、秋葉で一番有名なビルといっていいロケーションだが、12階にあがるまで長いエスカレーターで延々3Fまで上る必要があります。もう最終日まで近いけど、ぜひ足を運んでいただきたい。