さてと、どでーんと横たわったこの肉塊。肉の表面は酸化して黒ずみ、ガビンガビンになっているのがわかるだろう。ドライエージングビーフ(DAB)をやろうとするとこのガビガビを切りはずさなければならないため、当初の肉の重量から大きく歩留りが悪くなる。
で、さの萬さんの工夫が肉上部に見える骨だ。日本ではロースを部分肉にするときに骨を外して流通するのが普通だが、そうすると肉塊の全面がガビガビになるため歩留りは40%程度になってしまうこともあるという。そこで、骨をつけたままで冷蔵庫内において熟成させる。そうすることによって骨がある部分は空気に触れずガードしてくれるので、歩留りが上がるのだ。もちろん骨を抜くための免許が別途必要なのだが、さの萬さんはそれを取得している。
(実は、今回さちの肉を解体してくれたと畜場に「骨付きで送ってくれ」と伝えた際、前例がなかったらしくかなり渋られたが、結局対応してくれた。感謝である。)
さて、いよいよこの肉の骨とガビガビを除去し、食べられる肉に切り出す工程だ。さの萬で長らくお務めになり、現在は技術アドバイザーとして後進の育成に関わっておられる伊藤さんがこれにあたってくださった!
まずは脊柱の関節ごとに、のこぎりで縦に切り目を入れていく。
こうして脊椎ごとに切れ目を入れた後、横に伸びている骨の周りに包丁を入れ、切り出して骨を抜く。
こうして骨が抜かれていくのだ!
伊藤さんの動きは身体全体をダイナミックに使うものだが、一切の無駄がない。実詰めている広瀬シェフも「むちゃくちゃ、早いです、、、」と嘆息している。
10分程度で、全ての骨が除去された!
この段階で重量を量ってみると13.05キロ。骨抜き前には15キロあったので、すでに1.5キロ減ったわけだ。
さてここからさらに、ガビガビ肉を剥がしていく。
包丁をよく研いで、、、
そして、、、こんなに小さくなりました!
取り去った部分だけでこんなにあるのだから、それも仕方がない。
はかりに乗せてみると、、、
8.94キロ!13.5キロから34%減である。「歩留りはまあまあかな。」と佐野社長がおっしゃるが、肉として販売する際にはこの除去した部分も乗せなければならないから、通常より少なくとも34%価格が上がる。それに肉加工賃も乗せなければならないから、DABは高くて当たり前なのだ。
さて、このロース一本を、まずは5キロ注文してくれている大阪は心斎橋のドゥ・アッシュさんに送り、残りをまずは僕たちで試食する!
一枚は佐野社長に焼いていただき、もう一枚はDAB初体験の広瀬シェフに焼いてもらうという趣向だ。
さて次はいよいよこれをステーキに焼く番である、、、
(続く)