ほんとーに久しぶりに、渋谷は神泉駅前にある「アルキメーデ」へ顔を出す。さちの肉のブリスケとバラを送っておいたのだが、「ラグーにしたのが少しだけ残ってるよ」というので、だいぶさちの肉漬けになっているこの頃だけど、やっぱり食べておきたいと思ったからだ。
考えてみればシェフであるキーコこと重とのつきあいも、彼がまだ下北沢の「無二路」のシェフを務めていた2003年あたりからだから、7年を超えた。ああ、そういや無二路にもずーっと行ってないなぁ、義理を忘れてしまって申し訳ないと思うけど、行く余裕がないんだゴメン。出張先では強制的に外食ばかりになるから、東京にいる間にはできるだけ外食をしたくない。可能であれば納豆ご飯とぬか漬けだけ食いたいというライフスタイルになっているので、都内でヘビーなものは食べたくないんだぁっ という感じなのだ。
アルキメーデ開店後、紆余曲折しながらも5年目に突入できているというのは素晴らしいことだ。ただ、その道のりの中では「とにかく量が多すぎてイヤだ」という人が多いことが密やかな問題になってきた。
もともとキーコは「もうイヤだって言うくらいにお腹いっぱいにして帰って欲しい」というシチリアン魂でいるわけだけど、彼が思っている以上にお客さんは満腹になり、快楽を通り越して苦しくなっちゃうのである。最近、僕もようやくそれがよくわかるようになってきた(笑)
というわけで、今回も「頼むからさ、前菜ちょっととパスタだけで終わらせてくれ」といって入ったのだが、「わかった、前菜とパスタね!」といいつつ出てきたのはこんな感じである。
トマトのブルスケッタと長島農園野菜のスープ、レバーペースト。
こんな何気ない前菜が旨いんだよね、、、
そして名物・前菜盛り合わせ。カポナータは相変わらず濃厚に仕上げたナスが美味しい。
む、まだ前菜続くのか?あ、でも白身魚のフリットおいしい。
え、なんだよこれで終わりじゃないの?揚げ物?うわーなんだよぉ
しかし、、、キーコのアホはここで終わらないのである。
「うん、前菜だからさ」とこんなのをボンッ!
うーむ と思いつつ、キーコの焼く羊は旨いので食べてしまう。何でだろうか、イタリアでよくやる野菜の水分を吸わせつつ火を通していくローストなのだけど、味(とくにヴィネガー)がパシンと効いているので食べられてしまうのだ。
とはいえ、パスタがまた二種類来やがった!
これは思い出のパスタだ!
2005年に一緒にシチリアに行った際に、キーコの師匠・パスカリーノの弟であるロベルトの店(複雑でごめん)で出てきたスペシャリテだ。ムール貝をワイン蒸しにしたものをフードプロセッサーでクレマ状にしたものをラグーにし、細いタリオリーニにまとわせる。
「それだけじゃ暑い中、食欲が沸かないだろうと思って、下に敷いてるのはプッタネスカのソースを冷たくしたものなんだ。」
!
冷たく、ひねた酸味の効いたトマトソースの上に温かなタリオリーニ!これは旨そうだね!
実際、エライ旨い! やっぱり麺が温かくてソースが冷たい、というような温度差って、舌に面白く、心地よい。ムール貝も気持ち、粗めにブレンダーかけているのがいい。
そして、待ってましたさちの肉のラグーをかけたショートパスタ!
この見慣れないショートパスタは、シチリアのクラシックスタイルのもので「オルガネッティ」と言うそうだ。下の写真の真ん中。
4つに並んだ山がオルガンの鍵盤みたいに見えるからだろう。小麦の風味がブアッときますよ、といわれたが、確かに風味を強く感じることができるおもしろいパスタだ。
ラグーはストイックな作りで、さちの肉の塊がゴロゴロゴロと入っているだけで、ソフリットやトマトの断片がほとんど見えない。
「トマトは使ってないんだよ。ほら、シラクーサの市場で一緒にみたトマトペーストをさらに煮詰めたやつ、あったろ?アレ使ってるんだ。」
なるほど、これは実にオトナの味のラグーだ。
それにしても満腹。もうーーーーあの羊がなければ。いや、その前の魚の揚げ物もなければ。と悔やむが結局食いきれなかったのである。
「そうなんだよねー 俺の夢って言うか、”こういう店にしたい”っていう希望はいちおうこの5年間でかなえたから、そろそろ次の段階を模索しないとな、って思ってるんだ。」
というキーコ。うん、うん、それはいいと思うよ! さていったいどんな方向にアルキメーデは進むのだろうか。一皿の完成度を目指すか、素材のセレクトで意表を突くのか、、、
期待してます。そして、さちの肉を料理してくれてありがとう! 特に宣伝はしていなかったようだけど、さちのラグー、誰か食べたひといますか?いたらぜひ感想きかせてください~!