帯広二日目、交雑牛を大規模に生産する企業であるノベルズの西尾君と会合。もちろん、生産ほ場には立ち入らず、帯広にて会った。
同農場の交雑牛の肉質について意見交換するが、驚くほどに意識が一致。これから、さらに頑張ってください。
んで、メシにつきあってもらうことに。じつは西尾君、おばあちゃんがその昔に食堂をやっていたそうで、炭火焼きの豚丼を供していたという。
「子供の頃は僕も七輪で焼くのを手伝っていました。おばあちゃんは網においた肉をものすごいスピードでひっくり返しまくるんです。きっとそれが味の秘密になっていたと思う。あの味が基本になっているので、実は他の店の豚丼の味を知りません」
おおおおおおおおおおおおおおおおおお なんといい話! では彼にはいずれおばあちゃんの豚丼を再現する店を出してもらうとして、他の店の豚丼もしっとかないといかんでしょうが、ええ? ということで近いところから攻めることに。
まずはJR帯広駅の建物1Fの北側にあるお土産コーナーの中で営業する「ぶたはげ」。実はこの店が侮れない。立地が立地だし、どうでもいい味なのではないかと舐めていたら、ものすごーく旨い本格直火焼き豚丼なのである。
■カメラ GXR+50mmマクロF2,5
何が旨いって豚肉がえらい旨い。脂のかみ方がちょうどよく、絶妙な厚みのカット加減で、肉のかみしめ感と脂がじゅわっとしみ出す感じが両立している。テーブル上にあるタレ壺から3さじほどタレをツツと足していただくのが吉。
西尾君、「う、うまいもんですねぇ!」と驚いていた。いやいや、ぜひおばあちゃんバージョンを復活させてくれい。食後、間髪入れずに駅前にあるレストランふじもりへ。ふじもりは帯広の飲食店の草分けの一つで、あの帯広インデアンカレーの総本山である。
席に着くとまずお冷やと共にメロンソーダが出てくるのがここのすてきなところ。
西尾君いわく、ここでは子供の頃、ナポリタンばっかり食っていたそうだ。メニューを見てたら500円くらいの超・低価格。ワタクシめはナポリタンにカツが着いたスパカツを。
ひとくちナポをすすったとたんに西尾君が「あああああ~ これこれ、ふじもりの匂いだっ!」と天井を向いて叫ぶ。そんなに懐かしい味なのか! さらに僕のカツを一切れ刺して食べ、「うん、このかりかり感!ふじもりのフライヤーじゃないと出ない食感なんですよ!」と感動。
やっぱり、地域の老舗ってのは意味がありますな。こんな皿がほぼワンコイン前後で食べられてしまうのだから、まあ帯広駅近辺にスターバックスやタリーズコーヒーがないのもうなずける。
ちなみに、ふじもりの豚丼は超オーソドックスな味。フライパン煮詰め豚丼と直火焼き豚丼の中間という感じか?かなり厚みのある肉にしっかり火が通った安心できる味といったかんじ。先のぶたはげのトロトロ柔らかじゅわっと系とは正反対の、赤身肉中心ギチッと系の豚丼であった。
ここで、北海道のエゾシカやカモ、キジなどのジビエを撃つところからきちんと食肉処理し、じっくりエージングして出荷するというところまで請け負う「エレゾ・マルシェ・ジャポン」の佐々木君登場。フレンチの修行をしていたキャリアから、シェフが欲しいと思うジビエのスペックを知り尽くしている。最近では熟成庫を作ってしまったらしい。北海道の人たちは投資する思い切りがほんとにいいよね!
ハードボイルドな佐々木君。しかし食べるのはイチゴパフェ、、、
「やまけんさん、野生の獣肉は食肉処理の決まり事がほとんど無いので、いま非常に問題になっています。全国的に、イノシシやシカなどが商品になるということで、あまり経験のないハンターが撃ったものが出回ったりします。それはいいんですが、処理がめちゃくちゃなんです。例えばシカは撃ってできるだけ早くに腹を割いて血を抜かないとガスがたまって、それが全身に廻って使い物にならなくなります。けれどもそんなことを守って処理する人は少ない。いま、農協さんなどと協議しながら、北海道で自主基準やマニュアルを作っているところなんですよ。」
彼の顧客には東京の有名レストランシェフが名を連ねている。彼ならきっとジビエの世界を素材レベルから向上してくれるだろう。
さて空港に向かう前に、十勝のパンと言えばこれしかない!の、「ますや(満寿屋)」のパンを買いに、芽室へ。芽室には「めむろ窯」という、道産小麦を使ったパンしか出さない店があるのだ。しかもその敷地内にはインデアンカレー店舗があるのだ!
この風車が目印。
5時半くらいの段階で、もうパンはほとんど売り切れ状態だった!
さここで驚愕の事実が! レジに並んでふと横を見ると、冷蔵ケースに白スパサンドがおいてある。
あ、ちなみに白スパサンドとは、十勝の子供達が愛してやまないローカルフード170円也です。これが解説。
さすがにここめむろ窯でも白スパサンドは他の店舗とおなじ外麦つかったものなんだろうなぁ、と思いながら店員さんに聴いてみると、、、
「いえ、この店では白スパサンドもほかのサンドウィッチもすべて道産小麦を使ったパンで作っております」
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
まじですか!? びっくりしたよ、もう! ということで買いましたよもちろん!これは、普通の白スパサンドと食い比べをしなければっ!
しかしはやる心を抑えて、やらねばならないことがある。それは、、、
めむろ窯の向かいにそびえ立つインデアンカレー芽室店を詣でることである。ちょうど夕食の準備どきということもあってか、インデアンカレー独特の光景がみられた。それは何かというと、、、
「インデアンルー、鍋で5人前」
「はい~鍋おあずかりしますね」
そう、なんとここではルーを鍋売りしてくれるのである。ほれこの通り。
こんな感じで、ルーだけ買って帰る奥様が、僕らが食べてる時だけで3人ほどいた。僕も嫁さんのために(ウソ 自分のためです)インデアンルーを3人分持って帰ることに。飛行機で東京に戻ることを伝えたら、容器にラップ何重にもしてくれて、匂いもれなくして持って帰れました。ありがとう!
この日は、いままで食べたことがなかった野菜ルーによる野菜カレー&カツ。野菜カレーはやはり道産のジャガイモタマネギにんじんがごろごろはいったものだ。でも、個人的にはやっぱりタマネギのたっぷり入ったベーシックルーが一番好きだな。ちなみにインデアンカレーのカツはその場でシュワッと揚げてくれたもので、肉もちゃんとした豚肉だ。やたら柔らかい、いろんなものを注入してる肉まがいのものではない感じ。
ごちそうさまでした~
さて西尾君に空港に送ってもらって、すぐさま搭乗手続きをして待合へ。
実はこの待合にあるBLUE SKYでは、なんと満寿屋のパンのコーナーがあるのだ! だから、いつも僕はここで白スパサンドを買って帰っている。町中で買うよりも、ここで買った方が温度管理されているので、理想的な買い物スポットなのだ。ただし、たまに白スパが売り切れてピーナツクリームしか無かったりするので要注意。
通常バージョンの白スパサンドと国産小麦パンの白スパサンドを並べてみると、、、
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお 見た目が全然違うぜぇええええええ!
パンの色の深さが違うのがおわかりだろうか?右が道産小麦、左が通常バージョンだ。
もうね、一目瞭然。道産小麦が何の品種をベースにした食パンかはわからないが、灰分(かいぶん)が多いのか、色味が深い。そして味、というか食感が大きく違った。
道産小麦のもの(下)は、全体的な食感が強いのだ。風味もある。ただしそれは外麦中心の通常バージョンが劣るということではない。やはり通常バージョンは一般受けしそうなしっとりした、決めの細かな風味に仕上がっている。さすがに、歴史を経てきた味という感じだ。
発酵過程の性質も大きく異なるのだろう、ごらんのようにむしってみると気泡の大きさやキメが違う。
どっちがいい、と言う話ではなくて、どっちもいい。その上で僕はポリシーの面から、道産麦を使ったバージョンを尊いと思う。だって、通常バージョンが170円なのに対して、たったの10円アップの180円。
めむろ窯、素晴らしい。また行きます。こんな帯広食い倒れ紀行だったのでありました。