岩手県と秋田県の畜産関係者と話しをした。いまのところ、ウイルスの伝播はもちろんないものの、すでに家畜市場で子牛の価格がいつもより5万円近く値上がりしているということだった。圧倒的に頭数の多い宮崎県からの子牛出荷がいきなりなくなったからである。高いから買うのやーめた、と言うわけにはいかない。トンカツ屋さんが、キャベツが一玉500円になったとしても、仕入れなければならないのと同じだ。こうしてまたじわじわと畜産から離れる人が増えてくるだろう。
関東圏の家畜市場ではその倍額の値上がり幅も珍しくないようだ。友人農家より。
やはり、思った以上に本州も混乱しています。昨日、肉牛肥育農家の方から連絡有りまして、一昨日、口蹄疫が出てから初めての競りに参加したそうです。
本来ですと、九州産と本州産が50:50の割合で入ってきているそうですが、もちろん九州産は入ってこない状態で競りが行われ、競売価格も上昇し低価格の仔牛(通常30万円台)の相場が50万円台、高額の仔牛が60万台円とやはり高騰しているそうです。
これだけなら仕方ないと思われますが、今までにない事として肥育農家の方が嘆いていたのが、九州の他の生産県の方達が本州産の仔牛を買い占めに走っていると言うことです。もちろん商売なので近隣の巨大生産県が生産できなくなれば他の産地で調達するしかないのですが、思った以上に早く本州産の仔牛の枯渇を懸念されていました。本当に体力が無いところは、速いペースで淘汰されると心配されています。そこは若い後継者(20代の息子さん)も入ると言うことで喜んでいた矢先にこのようなことになり、とても困惑されていました。
不況の中、牛肉価格の下落、あらぬ噂から始まる風評被害、畜産業者同士の競争、責任無き自由経済って見直す時期になってきたのですかね。
涙が出てきます。
その後、とある県から宮崎へ支援活動として派遣された獣医師の友人と電話が繋がった。彼が現地にいたのは1週間以上前の話なので、そこからさらに現場の状況は進展していると思うがという前置きの上で読んで欲しい。
獣医師の仕事は殺処分だけではなく、検疫業務もあります。感染がないか調べるわけですが、午前中に一つの農場に入ったら、午後は他の農場にはいきません。もちろん感染を防ぐためです。ですから、班分けをして交代で農場の検疫をし、空いた半日は数km圏内の他の農場に電話をします。
電話の内容はもちろん「なにか気になる症状の家畜はいますか?」ということですが、その際に「こんな電話してる暇があったらさっさと仕事しろ!」と怒られるのがつらいですね。理由を説明しても、先方も興奮されているし極限状態なので、お互いにつらいです。なかには号泣されたりする方もいらっしゃいます。大変な状況でした。
犯人がだれだとか政党間の争いをしている場合じゃないです。個人的には、この拡がり方を見ると、隣接県もすべて危ないのではないかと思います。
今回の口蹄疫ウイルスは非常に強力です。結果的に克服できていないのですから、、、われわれは徹底的に車両や人の消毒をします。獣医師はみな一度、裸になって紙パンツなどを着用したうえで現場に入ります。車両も念入りに消毒します。
けれども、タイヤの溝に詰まった泥の奥まで消毒液が浸透するかどうかはわからない。完全な消毒はしようがないのです。
そういう状況で気になったのは、何社かのテレビ局が発生農場の映像を流していることです。私がみたのでは、川南町の映像がありました。農家にカメラを渡して撮影してもらった、と断りがありましたが、これをみて思ったのは
「そのカメラ、ビルコン(消毒薬)で消毒済みなのか?農場から持ち出すときも消毒したのか?」
ということです。みんな、簡単に考えすぎているのではないかと思います。そのカメラが消毒なしで移動していたら、ウイルスがついていると考えるのが自然です。
いま、獣医師の仲間達で、基本的にやらないといけない防疫対策について映像を作っています。現場では混乱していて、情報がきちんといきわたっていない。たとえば、石灰を播いたところへビルコンを散布している方もいるようですが、残念ながら石灰に触れるとビルコンは効力を失います。そんなことも伝わっていない状況なので、僕らにもできることをやろうと思います。
消費者の方にできること、、、宮崎県に義援金を送って上げてください。いくらあっても足りないでしょう。
ということだった。僕はその、発生農場に入ったカメラの映像をみていないが、、、やめてくれよーと思う。それにカメラを消毒するくらいなら、それを他の消毒へ回して欲しい。
よくテレビは消費者の「知る権利」のためにカメラを回していますという言い方をするけれども、それ本当? 消費者はその映像を求めているの? いまはそれより、円滑に対策がなされるための後押しをしましょうよ。
今回の事態で、本当にマスコミのあり方について思うことが多いこの頃です。
それはともかく 時間があれば、和牛のことについて今夜、書いてみたいと思います。これから農水の人と会ってきます。