実はむちゃくちゃなスケジュールを入れてしまっていて、心斎橋ドゥ・アッシュに入店したのが12時半、伊丹空港からの飛行機が15時なので逆算すると1時半くらいには店を出なければならないという、忙しい昼食になってしまった。中田シェフと握手の後、空港行きのバス停へ。
伊丹空港の手荷物検査を終え、東京行きのカウンターに着くと、最近はいつものことだけど「羽田空港混雑のため、15分遅れ」ですと。うーむ
しかしね、、、航空運賃も値下げ合戦で、各社とも体力が落ちているのでしょう。そんな中で空のスケジュールもギュウギュウなんだろう。ちょっとくらい値上げしてくれていいから、その分、安全確保をお願いしますね。JALも頑張れ。
と思いながら、空港内にある本屋さんで時間を潰そうとしたら、、、レジに居る女性の顔が、「ターミネーター サラ・コナークロニクル」に出てくるキャサリン・ウィーバー(実はターミネーターである、ゼイラ社の女社長ね)にそっくりだったのですげービックリした!ストーカーみたいにちらちらと見てしまった、、、髪型までにてたのは、もしかして本人も似てるのわかってるんだろうか?
そんなこんなで東京に戻り、一路神楽坂へ。
飯田橋駅の法政大学側の出口から、神楽坂下から道を登って右に曲がり、飯田橋の反対側の方へちょっともどったところに「神楽坂しゅうご」がある。
僕が短角牛や土佐あかうしについてガンガン書いている料理人向け雑誌「専門料理」(柴田書店)の読者さんは、やっぱりプロの料理人が多い。実はタイトルやテーマを変えつつ、連載そのものは4年目に入っている。
しかし最初の頃はまったく「読まれている」という実感がなかった。読者さんからの反響が全くなかったから、、、それが、一昨年から始まった「牛を飼う~日本の食を考える」という連載からは大きく変わった。野菜など農産物中心の話から肉の話に変わったわけだが、稀少な牛肉というテーマは多くの料理人にとって必要な情報らしい。いきなり、編集部や僕に直接連絡してくる人が出てきた。
そのうちの一人がここ神楽坂しゅうごの広瀬シェフだ。
北大農学部で静内牧場の責任者でもある秦(はた)先生との交歓の中で、先生が手がけているヘレフォード種×短角和種の掛け合わせの赤身肉の販売に協力した。その際、彼が真っ先に問い合わせをしてくれたのだ。
■2009年06月29日 畜産システム研究会の会場となったのは北大の静内キャンパス。なんと470haもの敷地内は、動物ワンダーランドだったのである! 肉牛のヘレフォード種と短角種、そして本物の道産子・馬を観た!https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2009/06/470ha.html
サンプルを食べた広瀬さんから興奮した電話が入ったときのことは忘れられない。
「これ、スゴイ肉じゃないですか!? 昆布をたべているみたいな、旨味の塊ですよ!」
というものだったのだ。あいにく、このヘレ短については季節繁殖なので12月を過ぎると肉の出荷が無くなってしまう。次回は6月からだ。なのでそれを待つ間、広瀬シェフは土佐あかうしも頼んでくれたのだ。
「いやー 土佐あかうしもすごーく美味しいですよ!赤身と脂のバランスがちょうどいいです。」
で、、、実は昼まで一緒だった、高知県の土佐あかうし取り扱い業者である三谷ミートの社長から「ヤマケンが来るっていってたからとっておきのメスのモモ送っといたよ。」と貴課されていたのだ!うひょー楽しみ。
もちろんこの日は秦先生と、以前北海道で馬の牧場を経営していたX女史ともご一緒させていただいた。秦先生としても、自分の牛を評価してくれた店がどんなところだったか知りたいわけだ。「いやーどんな料理が出るんだろうね」とワクワクドキドキ。
で、、、
この小呈な店が、実に驚くほど素晴らしい料理をだしてくれたのである!
プンタレッラのポタージュ。イタリアのほろにがい春の味であるプンタレッラの風味そのままに。チーズの塩気と舌の端に残るほろ苦さが食欲をそそってくれる。
イチゴとトマトチーズの前菜。これがまた、イチゴの生臭さをうまくオカズ化できている。
そして出ました土佐あかうしのメス牛のモモ肉タルタル。
これがですね、みなが「おおおおっ」と声を上げたほどの美味しさ。赤身肉の旨味成分の含量では短角牛に分があるとおもっていたけれども、このメスの土佐あかうしは、口に入れて舌に触りひと噛みした瞬間に、落ち着いた女性的な旨味を感じる。よくメス牛の味を去勢牛にくらべてきめが細かいと表現することにしているけれども、本当に肉の食感も味もキメが細かいのだ。
ジュレをまとわせたタルタルの技法もいい。ちなみに載っている青物などはほぼ広瀬シェフの実家の畑で作っている野菜だという!
「経費削減のためですよ、、、」と笑うけど、違うだろうなぁ。とっても食材に気を配っている。原価率高いだろうなぁ。
イベリコ豚の生ハム。
トリッパ
そしてこれも秦先生が紹介した、十勝の放牧豚。
どの料理にも季節感一杯の野菜ベースのソースが合わせられている。この放牧豚は空豆に、桜の花びらが。
そしてサウスダウン種の子羊のローストが!
骨にむしゃぶりついていただくのが最高!火入れも抜群。ソースはアンチョビニンニクベースだろう、羊の脂のキレをよく感じさせる塩味だ。
さーていよいよメインディッシュだ。土佐あかうしのローストにタケノコのフリットを添えたものが、こんなドカッと盛りで出てきた!
「これ、軽く焼き目を付けた土佐あかうしを、うちの実家の稲ワラで即席の燻製にしたんです。ワラの香りがついていると思います。」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ
そうきたか!
大きく肉を切り取りかぶりついてみる。稲ワラのクセのない燻煙の薫りをまとった土佐あかうしのモモ肉は、噛めばジュースをシュッと滲ませ、その汁を呑めばほどよい酸味と旨味、そして燻された薫りと絶妙な塩味が感じられる。
絶品だ!
いやーこれは素晴らしい。こんなのが食えるとは思いませんでした、完全に見誤っていた。広瀬シェフ、スゴイ!
〆のごぼうリゾット。ゴルゴンゾーラを少し混ぜていただくと、ごぼうの土の香りと発酵の美味しさが混ざり合ってたまらん。赤ワインに確実に合う味。
実はこの後、パスタも食べました。ラムのパンチェッタをタップリ入れたトマトソース、、、ものすっごい旨いじゃないの!
いやー こんな穴場的な店、今まで知らなかったのが残念だ。
大満足。こうして熟成肉と土佐あかうしをめぐる一泊二日の旅が終了した。肉ばかり食べていたのに、なぜか身体は軽い!黒毛ではこうはいかないはずだ。
6月からはいよいよ北大牧場のヘレ短も出荷される。その際にはまた食べにこようと思う。
広瀬さん、どうもご馳走様でした!