心斎橋のドゥ・アッシュといえば関西では有名なレストラン。僕は以前、辻調グループの卒業生向けの雑誌である「コンピトゥム」の中で、辻調の先生とドライエージングビーフについての対談を行ったことがあるのだけど、その対談の場がこのドゥ・アッシュだった。ここの支配人の坂口さんが辻調出身なのだ。
その時食べた、さの萬さんのホルスタインのドライエージングビーフ(DAB)は、絶妙な焼き加減であった! シェフの中田さん、若いのにやるなぁ、研究熱心だなぁと感じ入ったのを覚えている。以来、ドライエージング関連のイベントがあると彼は参加しに来てくれて、実に熱意のほどがうかがえる態度だった。何より、ドゥ・アッシュのスタンダードメニューに常にDABが記載されているそうで、関西方面で「さの萬」のDABが食べられる店としてはまずここを挙げれば間違いがないといってもいいだろう。
久しぶりに入ったけれども、実に壮麗なインテリア!昼時でもマダムで一杯だ、、、やっぱり西も東も消費を引っ張るのは女性だと実感する。
今回のメンバーは、昨晩にひきつづき高知県の畜産関係者に加えて、僕の大阪水先案内人のニシガイチ、そして以前、週刊アスキーの「旅三昧」の大阪編で出てもらったトラットリア「MAZE」のシェフ・潤ちゃんだ。
今回はランチでは普通でてこない特別メニューをお願いすることになってしまった。DABは時間がかかるので、ランチ対応はできないのだ。そこを、8名で伺うと言うことで塊肉を焼いてもらった。ありがとうね、中田シェフ。
アスパラベーコンの前菜。ベーコンは実体が見えないが、アスパラのポタージュとミキシングしてエスプーマにしてあるようで、口に含むと燻煙香がフッと立ちのぼり、肉の旨さが表れる。
マスと青リンゴのサラダ仕立て、インドの香りのスパイスと共に。いいねぇ、じらされて肉に対する精神的希求が高まっていくのを感じるよ。
そして真打ち登場。
ホルスタインのDABのステーキである。定石通り、表面だけ焼き目をつけて、あとはオーブンでじっくりと火を通してある。DABは水分の蒸発が激しく、普通に火入れをするとバサバサになってしまうことがある。普通のステーキならバンバンとストレスを与えるような火入れをしたものが僕は好きだが、DABに関してはギリギリの火加減が肝要だ。
今回いただいたDABは焼きについては文句なし!
ただし、元々の肉の熟度が少し浅いように感じた。もうすこし熟成香がブワッと香ってもいい。そう思ったら、帰りがけに中田シェフが「さの萬さんから、今日の分はもう少し追い込みたいんだけど、在庫の都合でこれしかないので申し訳ないと言われていたんですよ」とのこと。やっぱりそうかあ
それにしても、ホルスタインのDABと昨晩の土佐あかうしのDABは、味わいに違いが大きかった。単純にいってしまえば、やっぱり素となる牛のポテンシャルの高い土佐あかうしの方が、より芳醇で赤身肉の旨味も濃かった。もちろんそれは比較すればの話であって、ホルスタインのDABも通常の熟成をした肉に比べれば段違いの美味しさ、いや別の世界の美味しさになるのだけど、異なる品種をDABにして食べ比べするのは本当に面白いな、と思った次第だ。
それにしても中田シェフはひたむきにDABの焼き方研究に邁進している。前回来たときにいただいた肉が素晴らしくて、びっくりしたのだけれども、今回の火入れはまたそれを上回っていたように感じる。関西では有数のDABの焼き手といっていいのではないだろうか。
そんな余韻にひたる間もなく、僕は伊丹空港から帰京せねばならない。大急ぎで空港行きのバスに乗り込んだのであった。