べつにまだ今年を〆る必要はないんだけど、食べものの話以外で今年をまとめるならば、表題の通り。これまでとは比べものにならないほど、写真に力を入れた年だった。
先日のカレンダー応募の際の一言欄の回答をみると、けっこうカメラの話に関心を持ってくれている人が多いようなので、大いに書かせてもらおうと思う。
ブログではあまり公にしてこなかったけど、いま、雑誌などの連載執筆を6本持っている。泣く子もだまる超定番料理雑誌である「NHKきょうの料理」、土井善晴さんの番組テキスト「おかずのクッキング」、柴田書店のプロ料理人向け「専門料理」、これは一般では手に入らないけど「健康保険」、家庭菜園家むけの「やさい畑」、肉業界向けの「ミートビジネス」。
このうち「専門料理」以外はすべて僕の撮った写真が使用されている。「健康保険」なんかは4ページ僕の写真ばかりの旅紀行ものだ。つまり、僕は職業カメラマンではないけれども「仕事でカメラを使う」という状況になってしまっている。大学生時代など、僕がこんなにカメラに夢中になるとは夢にも思っていなかったから、本当に不思議だ。「食べる」ということを人生の中心に据えていることで、新たな領域に足を踏み入れることが出来た。とても幸せなことだと思う。
それにしてもまだ手に入れて一年経ってないんだなぁ、とビックリしたことがある。それは、いまメインカメラとしているニコンのD700のことだ。昨年、会社の決算で利益が出たら自分へのご褒美としてカメラでも買おうと思っていたのに、メインシステムとしていたオリンパスからはいいカメラが発売されていなかった。
じゃあ他社のカメラか、と思ったとき、どうせなら35mmフルサイズ機が欲しいと思った。きっと今までと違う写真が撮れるという予感があったからだ。そうなると、昨年の段階ではキヤノンかニコンという選択肢しかない。でもキヤノンのカメラは偽装請負事件以降、資本主義の悪い見本となる会社だと思ったので一切買わないことにした。本音を言うと、キヤノンの5DMarkⅡはすごく欲しいカメラだった。しかも魅力的なレンズラインナップがある。けど、「日本の食は安すぎる」などの著作で「佳いものを選ぶ消費行動によって世界を変えよう」という呼びかけをしている僕が、他のものを選択する際に軸がぶれるのは佳くないと歯を食いしばって買わないことにした。
で、ニコンだ。正直いってニコンのカメラは触ったことがなかった。週アスの連載でお世話になっていた、僕のカメラの師匠である八木澤さんはニコンでシステムを組んでいたのでみていたけど、そう言うのをみればみるほど「俺は違うメーカーで」などと思っていたのだ。
しかし今年の1月時点では、フルサイズ機で僕に手が届くのはニコンD700以外に選択肢がなかった。だから正直なところ「好きになれなかったら、売ればいいかぁ」などという不遜な気持ちでD700を買った。レンズも特に気合いを入れず、単焦点でマニュアルフォーカスのカールツァイスのマクロプラナー50mmF2.0。
しかし、、、このフルサイズ機を手にしたことで、僕のカメラ人生は変わってしまったのである。
「な、なんだこのボケの大きさは!」
その時の衝撃はこのエントリにある。
■2009年01月18日 はい買いました 初めてのニコン D700 そしてレンズはカールツァイスのマクロ・プラナー50mmf2.0! 果たして今後の食い倒れ日記の写真環境がどんな展開になるのか、自分でもわからない!https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2009/01/d700_50mmf20.html
オリンパスのデジカメの規格であるフォーサーズ規格は、撮像センサーの大きさがフルサイズの約1/2だ。このため、同じ画角となるレンズを用いたとき、フルサイズよりもぼけにくくなる。それを識らなかった僕は、カメラの教則本などで「風景はF10くらいに絞って」などと書いてあるのをみて、フォーサーズ機でF10に絞っていた。それはフルサイズだとF14くらいになるので、明らかに絞りすぎなのだ!人物写真を撮る時もF5.6とかで撮っていたから、フルサイズ換算するとF9くらいの深い深い被写界深度になっていたはずだ。
僕は元々、料理写真でしばらく前に流行った、一点だけピントが合ってあとはボケボケになっているのが好きじゃなかった。ビシッと全体にピントあっててくれ!というのが好きなので、フォーサーズはその点では非常によいシステムだった。けど、それ以外の人物や風景を撮るときに、なんとなくもう少し味わいのある絵にしたいなあ、とも思っていたのだ。
それが、D700ではなんなく手に入った。僕はD700を手にして始めて、これまでの歴史のなかで磨かれてきたカメラの感覚を知るに至ったわけである。
その後、サブ機としてD90を買った。先日のサンフランシスコ訪問に持っていったのはD90である。悪くない。というか中級機としては異様に素晴らしいカメラだ。
でも、やっぱりフルサイズがいいと思ってしまうのであった。
さて、その一方で今年話題になったのがこいつだ。
オリンパスE-P1。先述のフォーサーズ機の弟分、マイクロフォーサーズ規格に乗っ取ったカメラだ。一眼レフ機の基本的な機構であるミラーを無くしたことで、眼で覗く光学ファインダーはなくなったが、その代わり大幅に筐体を小型化できた。
ご覧の通り、超・小型。しかもレンズは交換できる。パナソニックもこのマイクロフォーサーズ機を出している、というよりオリンパスよりも先行しておりもう三台も世に出している。レンズも魅力的なものを揃えているので、パナには感謝という感じだ。
E-P1の欠点は、オートフォーカス(AF)がコンパクトデジカメと同じ方式のため、遅い。一眼レフ機ならばバシバシとピントを合わせて撮影できるところが、ジーコ、ジーコとゆっくりとしか合わないため、鍋を振っているところなどはとりづらい。じゃあマニュアルでやれば、といっても、よほど経験を積まないと難しい。
けど、クリップオンストロボを併用して撮影すると、かなりの写真が撮れる。全くの初心者にはお勧めしないけど(やはり一眼レフ機のほうがお薦めできる)、一眼レフを使ってて嫌気がさしているひとには奨められる。と思ってたら最近、うちの嫁さんが「これいいわね」といって使い始めた。僕は一切使わないアートフィルター機能にご執心だ。やっぱ、世間一般的にはああいうのがいいのね、、、
ちなみに嫁さんに渡してしまったのはなぜかというと、、、
こいつが来たからである!
そう、E-P1にビューファインダー(EVF)を搭載した、E-P2である。さっそく入手してしまいました。やっぱりオリンパスはこの規格をつくった先駆者だし、ある意味、デジカメの歴史に残る流れを作った当事者ですからね。応援しなきゃね。
EVFもついたし、これでE-P1よりいい写真が撮れるか?といわれると、実はなんとも微妙。僕としては出てくる写真に変わりはないと思う。ただ、撮り方が変わることは間違いない。EVFは、上の写真のように、カメラ背面に向けるだけではなく、こんな風にも出来る。
斜めにもできるし、90度開いて真上からのぞき込むようにもできる。これで構えて街角で撮ると、たしかにあまり警戒されないのである。以下に例(笑)
ちなみに僕のブログは横幅が500ピクセルに設定しているので、横位置の写真だとおおはばに縮小することになってしまう。ので、E-P2を使うときには、縦横同じの正方形フォーマットで撮影することにしている。これが結構よいかんじだ。
あとはとにかくレンズラインナップを充実させて欲しいという感じだ。
オリンパスの担当者さんからも「このズームいかがですか?」と言われるのだけど、f値も暗いし、僕としては好きになれない。そうではなくて、単焦点でF2.0クラスの24mm相当の広角レンズと、60mm相当のマクロレンズを出して欲しい。それさえあればかなりカバーできるのだ。
さて、それはともかく年の瀬になって、もう一台新しいカメラを手にしている。
こいつです! そう、リコーのレンズユニット交換式カメラ、GXR。
これは買ったのではなくて、新年明けて第二週目くらいの週アスで掲載するテストレポート用だ。プロカメラマンの阿部さんに先日お会いした際に「いいよ、これ!」と教えてもらったやつである。その時も実にいいよなぁ、と思ったのだけど、実際に使ってみて、かなりワクワクしてしまった。
手が写ってないからわからないかも知れないけど、これ、実に小さいのですよ。なのに、このレンズユニットはフォーサーズ規格より大きい、APS-Cサイズの撮像センサーを持っている50mm相当のF2.5レンズだ。すげー明るくて高画質。
ストロボ無しのISO400くらいで、けっこうちゃんと撮れてしまう。
うーんこれはかなりいいですよ。しかもですね、ショッキングなことに、操作には慣れているはずのE-P2よりもこちらの方が操作しやすい。ユーザーインターフェースの設計が優秀だ。
ちょっと、買ってしまおうかと食指が動いてしまった。けど、結局ふみとどまっている。それはなぜかというと、このA12という単焦点レンズユニット以外にもうひとつ出ている、24-72mm相当のズームユニットが、あまり好きになれない。
まあ要するにリコーのGR-DシリーズやGXシリーズと同じ写真になるわけですよ。残念だけどぼくは初代GR-Dでかなりがっくしきてしまったので、これじゃあなぁ、、、と思ってしまうのである。だから、リコーさんにも同じようにレンズの充実をお願いしたいところだ。
ということで、また続きます。