愛媛県は東予・中予・南予と地域が区分されているのだけど、東予は大阪などに近いせいか商人気質が強いとされている。ちなみに僕が産み落とされた今治市もバリバリの東予。うちの母方のじいちゃんは今治市でドレメ(ドレスメーカーね)を始めた起業家で、やはり商才があったようだ。母が「むかしは使用人さん達を連れて山に登って、生えてるマツタケをすき焼きにして食べたもんだわ」というのがあまりに羨ましいものだった。
その東予は松山市から近い松前町に、ものすごい調味料メーカーがある。義農味噌株式会社、と書くと南都読むのかわからないだろうが、ギノー味噌と読む。
この義農みそ、実はある特定の業界で有名になりつつある。それは全国に13000店にまで増加した、農家やJAによる直売所の業界だ。この会社、各地の直売所向けに、オリジナルドレッシングなどを製造しているのだ。
今回、僕が関わっている、来年4月にオープンする大洲市の直売所のオリジナル調味料を作ってくれないか?という企画のための田中正志社長に会いにいったのである。いやー もの凄いバイタリティの方であった!
「あのですね、直売所は自分の地域の野菜や果物を活かした調味料を売っていかないと、意味がありません!大手メーカーの商品を仕入れて売ったって、スーパーと同じ安売り合戦になってしまうでしょ?柑橘が獲れる産地なら、ポン酢やドレッシングを自分の原料でつくればいいんです。」
でも、あまり大きなロットになると、作っても売り切れないかも知れないですよね?
「うちはたったの1000本から製造を請け負いますよ!それに、材料を安く買い叩くこともしません。その産地に根ざした特産品をおいしく食べてもらう仕掛けを作りたいと思ってますから!」
実はギノー味噌さんではすでに、四国以外の全国各地の直売所のオリジナルドレッシングを手がけている。商品を持っていくと、「うちのブルーベリー、なんとかならんかな?」「うちでは落花生作ってるんだけど」など、いろんな相談が舞い込むのだそうだ。
しかし、先にも書いたように通常はロットの問題が立ちはだかる。工場の利益が出るくらいの量は通常、数万本という単位が普通だ。それを1000本から引き受けるという! これは考えようによってはものすごく新しい製造スタイルではないだろうか。
さっそく、すでに爆発的に売れている商品をいただいてみる。
おいおいまじかよ、と声が出そうな「伊予柑ドレッシング」。いよかんですぞ、いよかん!甘すぎるんじゃないの?いやしかしこれがうまく調整されているのだ。ドレッシングとしてきっちり美味しい。
これは、東予でものすごい売上を記録している直売所「いよっこら」のオリジナル商品、たまねぎドレッシング。地元産タマネギを使用してるのだ。
定番の柚子ポン酢に、おろし大根を入れたもの。
柚子、橙(だいだい)、いよかん、すだちを使った4つの果汁入りポン酢「四果汁」。
どれも果汁の香りがきちんと残ったしあがりだ。
しかもこのメーカーの素晴らしいところは、ものすごく商品作りが面白いところ。例えば乳化剤などの添加物を使いたくないよ、という相手には「じゃあ寒天で代用しましょう」などと面白いアイデア商品を逆提案するのだ。寒天入りドレッシングは、寒天粒のとろみで簡単に乳化する。これはいいアイデアだ。
製造部長さんは大分の醤油メーカーで調味料開発をしてきたプロ。
「原料を預けていただければ、うちのほうで数種の味を作ってサンプルを試していただきます。どんなご要望にもお応えしますよ!」とおっしゃるのがすごい。
田中社長が「これは絶対にやった方がいい」とおっしゃるのが、ミニドレッシング。
ドレッシングを手のひらサイズの小瓶に入れたものを数種パックにして、開店時や催事に非常に安い価格で販売する。ドレッシングって、味がわからないと買えない。だったら、最初の垣根をグッと低くすればいいという発想だ。実際、これをプレゼント配布したりするところからリピーターが続出するらしい。
さて、大洲市の名産といえば、、、サトイモ、タマネギ、柚子あたりだろうか。いったいどんなオリジナルドレッシングができるのか、とても楽しみだ。田中社長、どうぞよろしくお願いいたします。
ギノーみその最新工場。ここで1000本単位の極小ロット製造も行われているのだろうか。全国の直売所を相手にするギノー味噌から、これからどんなオリジナル調味料が生まれるのか、楽しみにしたいと思う。