感動の郷土色「まめぶ」を堪能した後は、いよいよ短角牛だ。肥育農家の落安さんの牛舎へ向かう。
山形村では、大地を守る会と短角牛の契約取引を行っている。日本では非常に珍しい、国産100%の飼料を給餌した短角牛を出荷しているのだ。
落安さんは、大地との契約取引が始まってからの最初の短角牛生産部会長を務めた人だ。牛舎に入っても全く糞尿の匂い無し。非常に綺麗な管理をしているのが見て取れた。
しかし、山形村の短角牛を巡る状況は厳しい。
山形村の短角は大地を守る会との契約取引だけではなく、高級スーパーである明治屋にも出荷している。ただここのところ、メインの大地の取引が、不況の影響もあって大きく落ち込んでいる。
大地のシステムは10万世帯の会員からの事前発注システムだ。短角牛はつねにレギュラーメニューとして掲載されているけれども、もちろん安い値段ではない。一般の流通が、生産者を叩きまくった割安な価格をつけているのに対し、大地の場合は生産者の生活を保障しうる正当な価格をつけているからだ。
しかし、家計における食費の割合を下げようとする人達が多い中、やはり短角牛の受注数は減っているという。そうなると大地としても、売れる見込みのない短角を仕入れるわけにはいかない。
「だから、この牛舎の一番端っこにいる牛たちは、本当はもう出荷しているはずなんですよ。でも売れないので、溜まっているわけです。」
そうなると、えさ代が毎日かかっていくので、コストがどんどん上がっていく。畜産という仕事は、数年をかけて産物を得るものだ。1年先の景気など、どうしたって予測できない。常に大きなリスクを抱えながら生産をしている。消費者は危機が来れば財布の紐を締めて緊縮できるけれども、生産者はそうはいかない。消費者一人一人がこうした事情を理解して、できれば「支える消費」に加わってほしいものだと思う。
道の向こうには、収穫期を迎えたデントコーン畑が拡がっていた。これぞ国産の餌のエース。カロリーも十分で、短角なのにサシも入るくらいの佳い餌だ。他国に依存しない、他国の取り分を横取りしない畜産を日本が行う日は、いつになったらくるのだろうか。それは、生産者の意識よりは消費の意識の問題なのだと改めて感じながら、牧野に向かった。
去年は二戸が誇る浄法寺の稲庭牧野の広大な風景を楽しんだが、今年は晴れ渡った空の下、最高のコンディションで久慈市山形村の牧野を訪れることができた!
僕らが到着すると、放牧されていた牛たちが「何なに?何かくれるの~!!!」と勘違いして寄ってくる。
参加者一同、初めてみる短角牛の大きな体躯におっかなビックリしている。
でもせっかくの牧野。ホカホカの糞に気をつけながら、どうぞ足を踏み入れてくださいな。
皆さんたっぷりと短角牛のいる風景を堪能。
畜産の世界では、鶏や豚は中小家畜、牛は大型家畜と分類されている。その中でも大型家畜である牛や馬は、やっぱりその存在感が大きく、正しく相対するととても癒される。僕がなんでここのところ牛達との時間が長いのか、参加者にはわかってもらえたことと思う。
久慈振興局の畜産部長さまよりご挨拶をいただき、牧野を後にする。参加者一同、長かったようであっという間に過ぎた行程に思いをはせる。バスは二戸駅に隣接する「なにゃーと」へ到着。
解散式を行い、スタッフの皆さんに大感謝の拍手を送る。
久慈・二戸の双方の振興局が手を取り合って調整してくださったこの企画、他の県の関係者からみると「すごく異例なこと、でもお見事!」という評価らしい。僕も行く先々で「あの企画はすごいです」とよく言われる。県の出先機関が、管轄の違う区域をまたがってこのようなイベントを行うことは、予算の配分や人員の配置に至るまでを連携しなければならず、定常業務外のことばかりのはずだ。それを厭うことなく遂行して下さった皆様に、心から感謝したいと思う。
ありがとうございました。
そして、参加して下さった皆様。今回一番遠いところというと、大阪からの参加が2名!いつも不思議だけど、なんで皆さんこんなに探求熱心なのだろうか。無理して盛り上げる必要ないほどにノリのいい皆さんと一緒にいて、僕は大変幸せでした。また一緒に遊びたい人ばかり。
こうして岩手県北部の探訪ツアーは大団円を迎えることとなった。皆さん、ありがとうございました!
追伸:
すでに決まっていることとして、年明けに岩手県の雑穀料理セミナーを東京で開催します。これは言ってみれば料理教室!ご飯と一緒に炊くだけじゃなく、雑穀ならではの美味しい料理を一般向けにお教えします。時期が来たら募集しますので、どうぞよろしくお願いします!