出雲で醤油といえば、井上醤油店が有名だ。僕もしばらく前まで一升瓶で買い求め使っていた。「使っていた」というのは、いま僕が気に入っているだけでも7種類くらいの醤油があるのだけど、そうすぐに使い切れないから、「お、これ美味しい!」と思っても、リピート利用するのが翌年になっちゃったりする。
そこにもう一つ銘柄が仲間入りしそうだ。
安来市にて 大正15年から醤油と金山寺味噌を仕込んでいる、その名も「大正屋醤油店」。
四代目・山本周作さんが蔵を案内してくれた。これまた若いぜ!
手に持っているのは原料大豆。上げている方が国産の丸大豆で、下にあるのが小麦だ。下の写真はこの原料を蒸す大釜。
この蔵では、いわゆる速醸ではなくきちんとした仕込みを中心に醤油造りをしている。
「きちんとした」というと語弊があるかも知れない。醤油の近代的な製法は、もろみの発酵を促進するために様々な技術を駆使して、数週間で醤油を仕込んでしまう。お酢を一日~二日で造ってしまう速醸と同じように、醤油も短期間で仕込むわけだ。それだと、奥深いうま味成分は生まれにくく、キレはあるが後を引かない醤油になってしまう。
大正屋が目指すのは、国産の丸大豆を使用し、しっかり時間をかけてモロミの旨さを引き出す方式だ。当然時間もお金もかかるけれども、周作さんはそれに注力したいという。
実は九州地域と同じく出雲地方でも、刺身などにつける醤油には甘味料が使われている。原材料名の表記にステビアや甘草、糖類とあるならば、その醤油の甘みはそれら甘味料に由来するものだ。
元々、こうした地域の醤油の甘さは、再仕込み醤油という技法で作られてきたものだったはずだ。再仕込み醤油というのは、当年度に仕込んだ醤油のもろみに、なんと昨年度絞った生醤油を加えて再度仕込むという、いわば濃縮バージョンの醤油。当然仕上がりはこっくり濃い風味になり、熟成によってまろやかな旨味甘みが生まれる。が、その甘みを増幅するために糖類が添加されてきたのが、いまでは最初から糖類で味をつけるようになっている。これはやっぱり問題だ。
「島根県で受け入れられている醤油もいいんですが、やっぱりそうしたものに頼らない、丸大豆と小麦から産み出された美味しい醤油を世に出していきたいと思っています」
と周作さんが力を入れているのが、丸大豆生醤油と、火入れをした丸大豆醤油だ。これと、ご自慢の金山寺味噌を味わせていただいた。
生醤油は火入れをしていないから、瓶の中で熟成が進む、いわば活きた醤油だ。この醤油をカップに注いでチュッと口に含むが、刺すような塩分は全く感じられない。丸い、とっても丸いイメージの旨味の塊。鼻に息を通すと、意図的に芳醇さを少し押さえたような、節度のある香りがグウッと抜けていく。いや、これは佳い醤油ですよ、、、
そして美味しかったのが金山寺味噌。
観ておわかりのように、ネットリと味噌成分が多い金山寺味噌ではなく、大豆と小麦の形がポロポロと残った中に、野菜がべっこう色に漬かっている。
スプーンですくって口にすると、もろみのつぶつぶがしっかり食感を残していて楽しい。うーん、ペースト状の味噌で、やけに甘さが口に残るような金山寺味噌が多いなぁと思っていたけど、これはいいね。ご飯と合わせて食べたいです。
この4代目・周作さんも30代の若手だ。この調子で突き進んでいってくれると、また日本の醤油文化の幅が拡がるんだろうなぁ、ものすごく楽しみだ!ぜひ頑張ってください。
■大正屋醤油店
http://www.taishoya.jp/
さて
移動中、雨が降ってきた。僕は自称・晴れ男で、週アスに連載していた「旅三昧」の取材の際の晴れ率は95%以上だったのだけども、連勝記録がストップ。うーむ本当に久しぶりである。
さてこの田んぼに囲まれた地にとつじょ何も飢えられていない池は、一体何のスペースかおわかりだろうか?僕は魚については勉強不足なのだけども、この魚種についてノウハウを持っているところも少ないだろう。
ドジョウである!
安来といえば、ドジョウすくいの源流とも言われる安来節の地だが、それだけに市がドジョウの養殖に取り組んでいるのである!
ドジョウの養殖は実はかなり難しいそうだ。何が難しいかと言えばもちろん餌の配合などを中心とした飼料設計。これがペレット状の餌だ。
餌の形状がマッシュだとロスが大きく水質汚染になるので、ペレットを利用している。そうしたノウハウの蓄積に、実に時間がかかっているようだ。
この方が市から生産組合へ出向されているキーパーソン。いま出先なので名刺が無くてお名前を失念!後ほど修正します!
このドジョウ、最大の出荷先はやはり関東でドジョウ鍋の有名なアノ店やコノ店。だが、かなり安く買い叩かれているらしい。日常的に家庭でドジョウを食べる習慣がもっと根付かないと、拡がらないという状況らしい。それならばさっそくドジョウを食べよう!と思ったのだけども、安来市内にもそれほどドジョウ料理を食べられる場所がない。この日も旅程にはドジョウ料理が入っていなかった。これは残念なことだ。やっぱり、食材にスポットを当てるならば、食べられる店があることが重要。次回行ったときにはドジョウ鍋食べたいですよ~
とこうして安来の時間が過ぎていくのであった。