ああ写真って素晴らしい! 二戸市在住の名写真家 高村さんのスタジオにて、中判カメラに思いをはせる

2009年6月 8日 from カメラ,出張

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恒例の岩手県二戸市での仕事の後、十文字さんと落ち合った。十文字チキンカンパニーという、ブロイラーの業界で5本の指に入る会社の社長さんである。初めてお会いした時に、カメラ好きだということを伺って以来、どちらかというとカメラ情報交換相手として交流が続いている。なにせこの方、カメラの購入・売り払いのサイクルが凄まじく早くて、持っているカメラ類がころころと変わっていくのだ。

「今日は、自宅へいらして下さい」

とお招きいただいて、二戸駅からも近いご自宅の自室へ。「整理整頓」が仕事上のモットーとおっしゃるだけあって、自分の部屋がすさまじく片付いている!俺には無理だぁ、、、

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もちろん、二人が集まればカメラ談義。十文字さんは古くからのマニアだから、銀塩写真の名機をいろいろと持っておられる。とはいっても、「これは!」と思うもの以外は手元に残さないで売ってしまっているらしく、所有物は絞り込まれていた。

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その中でぼくが惹かれたのがこれ。

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リトルニコンというらしく、本当に小さなボディのカメラ。でも、ファインダーを覗くとくっきりした視野が開ける。ああ、銀塩のマニュアルフォーカスの時代は、とにかくファインダーを覗きながら手で合わせていたんだな、という当たり前のことに思いをはせる。

そんな十文字さんが最近使っているのは、コンパクトデジタルカメラだと写真のLUMIX LX3と、意外にもオリンパスのSPシリーズ。下の写真の中段にボケッと写っているやつだ。

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「これ、便利なんですよ。ズームが20倍でよく寄れるのと、ワイヤレスフラッシュを使えるんです」

え、マジ?

オリンパスのフラッシュであるFLシリーズを使うと、ほんとにワイヤレスでの撮影ができた。これ、もしかして俺の使い道もカバーできる?なんて思ったり。

ちなみに一眼レフは、キヤノン、ニコン、オリンパスの三大システムすべてをTPOにあわせて使い分けておられる。かなりのヘビーユーザーなのである。

「さて、と。じゃあ、今日はやまけんさんにぜひ会わせたい人がいるんで」

と、移動。二戸市の合同庁舎のすぐ前に、レストランなどが入っている小さな商業施設があるのだが、そこに写真館がある。

 

■高村正彦冩眞舘
http://www.excelgarden.net/norihiko/

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いやーーーー

久しぶりにうちのめされましたな!
実は、写真集のたぐいはあまり観ないので、どういう写真が佳い写真なのかというのはあまり識らなかったりする。dancyuや専門料理などの料理専門写真に関しては、自分なりに好みというものが存在するが、ポートレート写真などについては僕は定見をまったくもっていない。

しかし!

この高村さんが写す、農村の老夫婦の写真にはマイッタ!本当に参ってしまった!
スタジオのエントランス入ってすぐにかけられたプリントをみて、心から素晴らしい写真だと思ったのだ。

そして、それは彼のWebに縮小版で掲載されている画像からは全くわからない、静かな空気のようなものが充ち満ちていた。

例えば下記の写真。高村さんのWebにサンプルとして掲示されているものを引用させていただく。

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これを見ただけでも「わ! 素敵!」と思われるだろう。ちなみに背後に写っているのはタバコの葉。二戸市はタバコ栽培で賑わう産地なのだ。

けどね。

全っ然 違うのですよ! ホンモノのプリントを観たときに味わう感動とは!そこにはまさに「空気感」といえるようなものが漂っていて、たんなる「画像」とは違う「写真」があるといえるものなのだ。

実は高村さんは、地域密着型の写真館を営まれながら、ご自分のライフワークとして地域のご老人の記念写真を撮影していらっしゃる。彼のWebではその一端にふれることができる。

なんと、十文字社長はこの高村さんとずーーーーっと古くからのつきあいで、家族の写真を全て記念撮影してもらっているのだ。さっきの高村さんのサンプルの写真の中にも一枚あるので(笑)探してみると面白いかも。そして、おそれおおいことに、高村さんは僕のブログの写真を非常に評価して下さっているのだという。

「われわれ、フィルムを使う世代にはデジタルでの光の入れ方などはまだ把握しかねている部分が大きいんですが、やまけんさんのは、、、」というのを書くのも恥ずかしい。行き当たりばったり写真しか撮っていない僕がこんなスーパー写真家にほめていただくなんて、10年早いのである。

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しっかし

ほんとうに高村さんの写真はすごい!
プリントされたものをみているだけで、写真ではない他のメディアのような、ふしぎな存在感が放射されてくるのだ。

「これが僕の仕事用カメラです。」

と見せていただいたのがこの二台。

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フジのGX645と、なんとローライフレックスの中判だ。

「どうしても使いたいレンズがありましてね、、、」

とおっしゃっていたが、やっぱりなんとなく、腑に落ちるものがあった。

今僕はニコンのD700という、35mm版カメラと同じサイズの撮像素子を持ったカメラをメインで使っている。これまで使っていたオリンパスのカメラは、撮像素子のサイズが35mm版の1/2の大きさだ。そうなると何が違うかというと、同じ被写体を同じ大きさで撮影した場合に、前景や背景のぼける量が少なくなる。D700を持って撮影するたびに「おおっ」と驚くほどに違う。

けれども実は、それ以上の違いがあるな、と思っている。オリンパスのカメラの前には、キヤノンのEOSを使っていた。これは、オリンパスの撮像素子よりは一回り大きい撮像素子をもっているものの、35mm版よりは小さいサイズのものだ。それを使っていても感じなかった変化が、D700を手にしてから起きた。明らかに撮影した画像の質が違うのだ。それは、単にボケの量の問題じゃない。言葉にしようがないんだけど、写真からでてくるものが違うと言う気がしてならないのだ。

誤解無きように願いたいが、オリンパスのフォーサーズというシステムから産まれてくる写真は、素晴らしい。自分の欲しい画角とボケの量をきちんと計算して撮れば、スペック的には遜色のない画像を得ることが出来る。オリンパスからは、もうすぐ一眼レフが大型になってしまう最大の要因であるミラー部を除いた「マイクロフォーサーズ」という規格のカメラが発表されるが、間違いなく買うと思う。

けど、それとは全く別の写真を撮る道具として、D700があると思っている。同じ写真は撮れないのである。

そして、高村さんの写真を見て思うのは、35mm版のカメラでは絶対にだせない空気感のようなものが、中判以上のフォーマットのカメラにはある、ということだ。僕が4×5の大判カメラを買い求めたのも、それが欲しいからだ。残念ながら、D700に夢中でポラを切っただけでまだお蔵入り中なのだけど(笑)

高村さんの写真には空気が写り込んでいる。写真を見た瞬間に感じるのは、背景に拡がる畑の清冽な空気がこちらにまで漂ってきそうな臨場感。それは、実物を超えた世界ともいえるように思う。

高村さんの写真を観て、東京に帰ってきてしばらくして、日本のカメラメーカーであるPENTAXが、来年中に中判のデジタルカメラを発売するという報に触れた。価格はなんとか100万円を切るくらいにするという。

「なんじゃそれは、高い!」

と思われるかも知れないが、大きい撮像素子を使ったカメラを造ろうとすると、価格はどうしても高くなる。業務用で中判カメラをカバーするデジタルバックという製品など300万円以上するんだから、、、100万円なら、安いと思う。ま、それにレンズを標準・広角・望遠・マクロと足していくと170万円くらいになっちゃうと思うけど、、、

僕は今から、来年度にむけて貯金しようと思う。デジタルで果たしてあの「空気感」を画像に定着させることができるのかはわからないけれども、試してみる価値はあるだろうと思うからだ。僕も、農村の風景を撮りたい!

さー 仕事頑張るモチベーションができた!

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高村さんの奥様のお手製の麦もち。岩手ではもち米が出来なかった時代があったので、麦を練って餅にするのだ。

そして、中にあんこが仕込まれた、これまた麦のまんじゅう。

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絶品に美味しい。

大変に佳いお茶をいただきました、、、
ちなみに高村さんは家族の記念写真を得意にしておられるが、被写体のみんなが素晴らしい笑顔をしているものが多い。それはひとえに奥様が「笑わせ役」をしていらっしゃるからだという。いや、それは一番重要な役回りだ。結局、人を撮る写真の善し悪しとは、コミュニケーション力が全てだと思うからだ。

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素敵なお二人。たくさんの示唆をいただきました。どうもありがとうございました!
そうそう、高村さんには4×5の大判カメラ用のフィルムホルダーと、なんとお父様の遺品である大判用レンズをプレゼントしていただいた!申し訳ありません、まだ大判のフィルムで撮影を出来ておりません、、、(苦)

それにしても写真って深い!
この分だと、写真にはまだまだ飽きずに自分のライフワークにできそうだ。