ちょうどいま、店頭に並んでいる「美味サライ」を手に取った方は居るだろうか。
サライの増刊号で、食のことだけに注力した特別号だ。実はこの編集長の尾崎さんが、昨年度に開催された、藤田千恵子さんの醗酵リンク大会で僕の話を聴いてくれていて、「ぜひあの話を誌面で展開したい」ということになり、少しだけ力をお貸しすることになった。
それはまあいいんだけど、尾崎さんがえらいのは「日本の食が佳くなって、しかも生産者さんが幸せになれるように、サライで力をお貸しできることはありませんか?」といってくれたことだ。じゃあ、面白い食材がありますよ、と言うことをお話しした。
「プレミアム短角牛」である。
「おお!じゃあそれ、一頭まるごとサライで買って、読者のかたに提案したい!」
ということで、スペシャルページが実現。
以前、週刊アスキーでも誌上通販をしたが、今回はプレミアム短角である。しかも、なんと念の入ったことに、三國シェフの短角牛レシピつきなのである!
一頭まるごとだから、ウデやスネといった硬い部位もある。そうした部分はハンバーグである! 実は三國シェフに、事前にサンプルを送付する際に、肉の部分と脂身の部分を双方送り、「最適な割合を指示してくれ」とお願いした。その結果連絡いただいた赤身と脂身の割合で、挽肉を造っているのだ。
ということで、プレミアム短角牛の小売に関しては、このサライとあと一社、某有名百貨店の贈答用だけで並ぶことになる。でも、美味サライの通販の方が安いと思います(笑)ぜひ買ってあげて下さい。
で、もうひとつ、このプレミアム短角牛が銀座のベージュ東京にて、期間限定で食べられることになった。
プレミアム短角牛については、このブログで過去、イヤと言うほど(笑)採り上げてきたので、まだ識らない人は右上にある検索窓から「プレミアム」と入力して検索してみていただきたい。いろいろ記事が出てくるが、一言で言えば「日本の国産飼料を7割以上食べて育った和牛」である。
牛は、デントコーンという飼料用コーンを食べて育つ。日本の黒毛和牛は、出荷されるまでに2トン以上のコーンを食べる。そしてそれはほとんどが米国産の輸入コーンだ。畜産に限らず第一次産品(米・野菜・肉・魚)はすべて、「何を食べたか」で味がかなり変わる。その一番重要な部分を海外に依存しているのが、日本の食の現状だ。
しかしこのプレミアム短角牛は、幼い子牛の頃は放牧で草を食べ、牛舎に入ってからの餌の7割を、同じ岩手県で栽培されたデントコーンが給餌される。これはすごいことである。
昨日の記事をみてくれればおわかりのとおり、短角牛は幼年期を牧野という広大な草地で育つ。
半年ほど草と乳のみで育った後、草が枯れる秋に牛舎に入り、肥育という段階に入る。
この肥育段階では、通常は配合飼料を与えて育てる。配合飼料とは飼料メーカーが畜種ごとに最適な栄養設計をして造ったパッケージ商品である。そしてその50%以上が輸入穀物で造られている。
でも、プレミアム短角牛は、岩手県内で育てられたデントコーンという飼料用コーンを食べて育つのだ。
これが、デントコーンの種まきをしている風景。
デントコーンの種と肥料を同時に播く特殊なアタッチメントをつけたトラクターで、不耕起栽培を行うのである。
コーンの種が赤いのは、消毒薬が塗布されているからなので、これを食べてはいけませんよ(笑)
これを農家さんが集まり、大きな圃場に播いていたのである。
で、これが伸びてあのトウモロコシの実を付けるのだが、葉の先が茶色になるくらいまで完熟させた後に、これまた特殊な大型機械で刈り取る。トウモロコシの樹を茎から葉から実まですべて細かく裁断して、それを巨大なラップで七重くらいに包んで、巨大なタイヤのようにしてくれる機械だ。北海道などで黒や白の巨大タイヤのようなオブジェが並ぶシーンをみたことあるひとがいるだろうが、あれは牧草なのである。
ああしておくと、きっちり密閉されているので、中の植物が自分が持っている水分で醗酵する。外気と遮断されているので嫌気性醗酵になる。つまり乳酸発酵になる。それがこれだ。
これがまた、実にすばらしい漬物の香り!そう、ぬか漬けのような香りと味なのである。
僕の尊敬する獣医師の松本大策先生は、「牛に与える餌は、必ず自分でも食べて確認する」と仰っている。ので、僕もこのデントコーンサイレージを食べた。茎の部分も実の部分も。これが本当に、漬物の味!きっちり醗酵した古漬けの味なのである。感動してしまった!
このおばあちゃんが、プレミアム短角牛の生産農家のお母さん。「ご隠居さんなのよ、わたし」と言うが、第一線バリバリである
この肉を昨日、ベージュ東京のシェフであるジェロームと一緒に視察に行ったわけである。
ジェロームが握手している方が、今回ベージュ東京で食べるプレミアム短角牛を生産した農家さんである!ていうか、上のおばあちゃんの息子さんね。
岩泉のプレミアム短角牛の販売を一手に担う岩泉産業開発という会社の人達にふるまわれた短角の肉、焼き加減と塩加減はジェロムが見極める!
牛舎では牛たちと積極的にコミュニケーション!
こんな濃密な旅をした彼が、今日食関係のプレス向けに、試食会を開催した。僕も、岩手県の担当の高橋さんもプレゼンテイターとして出席。皆さんより先に、試食させてもらったのである。
サーロインを岩塩に載せてオーブンでギリギリの火加減で焼いたもの。
ソースも何も無しで、塩のみで食べたが、実に絶妙な味!さすがの火入れである。とはいっても、はやりの低温調理とは全く違う。きっちりと肉の旨味を引き出していた。
二品目はこれ。
ラビオリ、、、実は中に入っているのは、ウデ肉である。牛はサーロイン だけで出来ているわけではない。様々な部位のなかで、西洋料理ではあまり歓迎されない硬い部位もある。でもそこもきちんと引き取って料理してくれるのが彼のウデである。
これにパルミジャーノチーズの薄切りが乗って完成!
具のウデ肉はリエットのようにほぐされて、バジルなど香草とともに詰められている。ソースもフォン・ド・ブフ。牛のフォンを煮詰めたものだ。
あんまり味について言う必要もないだろうけど、、、素晴らしい! ウデ肉がほぐされて再構築されているが、その旨味は黒毛では絶対に出し得ないものだ。
そして、、、これがメインだ!
プレミアム短角牛のウェリントン風!
支配人の石田さんいわく 「ジェロームがこの料理をベージュでやる気になったのは、短角牛と出会ったからこそですね」とのこと。黒毛ではこんな料理したって美味しくならないということが、イヤと言うほどわかっていたのである。
味は、、、 何も言う必要、ないですよね。もう、とてつもない火入れです。フォアグラが、なぜかこのプレミアム短角牛のサーロインとすさまじくマッチ。脂の美味しさではなく、肉の旨味を増幅し合うのだ。
さて、試食終了後、プレスの方々(そうとう選び抜かれています)がご来場。
僕も高橋さんも説明をさせていただきながら、かなりハイテンションに試食が進んだ。
プレスの方々も大満足してくれたと思う。
ベージュ東京のWebにも、このプレミアム短角牛の件については書いてある。
■http://beige-tokyo.com/j/mailmag/40th/
これじゃあよくわからないかもしれないが、基本的にはアラカルトで供することになる。ので、コース6500円ではありませんよ!それと、ウェリントン風はかたまり肉で焼かなければならないので、複数人のオーダーが必要になる。なので、是非食べたい向きは、予約をお願いします。
えーと、基本的にそうお安い店ではありません。銀座のシャネルビルですからね。けど、食べる価値はあると思う!
実はオフ会をやろうかとも考えた。けど、会期中に全然日程がない(出張ばっかり)。なので、関心のある人はぜひベージュ東京に連絡を。
そして、自宅でステーキやハンバーグを食べたいという人は、発売中の「美味サライ」をお買い求めいただき、内容に協賛していただけるなら、ぜひ通販のご利用を。
まあこの肉、美味しいことは間違いないですよ。それは、信じていただいて佳いと思う。日本人が食べて佳い肉。それは、少なくとも50%以上は日本でできる餌を食べて育った肉ではないだろうか、と思うのである。
さて明日は広島。玄米の米麺を旅してきます。