イオンが新聞広告に「反省文」を出したことは、人から聞いた。流通業界のトップであるイトーヨーカドーとイオンは、どちらも相次いで主力商品の値下げを敢行している。そして、西友が298円弁当を発売するという。
これらのプロモーションを観て、消費者はいったいどういう感想を抱くのだろうか。
「イオンは反省しているんだな、偉いぞ!」
「298円弁当は、一括調達や効率的な生産で、内容は変わらず安くなるんだってさ。素晴らしいね!」
などと受け取っているのだろうか。
僕には、腹立たしく思えてならない。小売業界は、食べものの価値をまた下げようとしている。しかも、彼ら自身は「頑張ってます」というメッセージを出しているけれども、真実は、彼らの前にいる生産者やメーカー、流通業者を絞り尽くすことで、これを実現させているからだ。
小売業者が「いいこちゃんぶって」いるケースはこれまでも多々あった。例えばよく「台風落下リンゴ」というのが販売されることがある。収穫直前に台風を受けてしまい、落下して傷つき、売り物にならなくなってしまったリンゴを、私たちは無駄にしません!買ってください!というアレだ。「あ、これは買ってあげなきゃ」と思って手に取った人もいるだろう。
でも、それは実は生産者のためにはなっていない。
台風落下リンゴの価格は安い。「安くても、売り物にならないものなんだから、ちょっとでも助かるでしょ?」と思うなら、大間違いだ。安いということは、生産者に渡されるお金だって安いのだから。スーパーは、断言するけれども、自分自身は損をしないように利益を載せている。または、それ自体で収益がでなくても、集客の目玉になれば、告知効果になるからそれでいい。
もっとまずいことは、格安で販売される台風落下リンゴの横にある、ぴかぴかの、高い値段がついている無傷のリンゴが売れなくなることだ。生産者という存在をマクロにとらえてみたら、台風で落下したリンゴを安く仕入れられ、それが売れることでもともと高く売れるはずだった佳い品物が売れなくなるという状況のほうが困るのだ。
だから、本当に台風や雹(ひょう)害で困る地域を助けたいと思うならば、落下リンゴではなくて、産地表示をみて、その産地のリンゴを買ってあげる方がいくぶん貢献できるはずだと僕は思う。
まあ、これは一例だ。小売業者(だけではないけれども)は、巧妙に消費者を欺き、自分の利益を最大化しようとする。企業活動としてはもっともなことだけれども、言い換えてみれば、生産や流通の段階の知識をあまりもたない消費者をだましているということに他ならない。
そしてこの時期に来た「値下げ」だ。値下げの犠牲になっているのは、イオンやイトーヨーカドーではない。中間にいる流通業者と生産者、製造業者である。
先日、納豆メーカーの富士食品が倒産してしまって悲しい、というエントリを書いたら、思いもかけず、いろんなところから連絡をいただいた。その多くが食品メーカー、農協、そしてなんと小売業者ご自身!
「大手スーパーは「消費者の味方,価格据え置き・応援値下げ」なんてやっていても
自分のマージンは確保していることがみえみえで、余りおつきあいしたくありません。
最近は「イオンはダイエー化しつつある」なんてことを聞いたりしますね。」「やまけんさん!「富士食品」書いていただきありがとうございます。あんな良い会長の会社が潰れるなんて、悔しいです。」
「今日のブログは、私たちの今の悩みそのものでした。まさしく和日配の現実です。」
まだまだあるのだけれども、、、
メーカーは、怒ってますゾよ。
「美味しくて、新鮮で、栄養があって、安全で、、、そういう食べものを、安くちょうだい!」
などというわがままな消費者と、その消費者におもねって、とにかく「消費者がこの価格じゃないと買ってくれないんだから」という理由で、価格を押しつける小売業者。これが続くと、常識はずれの安値にするために、劣悪な材料や、膨大な添加物や、偽装といったことをする業者が現れる。それは、本当は消費者と小売業者自身がつくり出したものなのに、一方的に非難・糾弾され、退場を迫られる。
そして、この国には大手のメーカー数社しか残らない、寡占状態になる、、、この状況が長く続けば、そうなってしまう。おそらく想像力のない人は「それでいいじゃん、何が悪いの?」と言うだろうが、、、
西友の298円弁当、怖くて僕は食えない。イオン、イトーヨーカドー店頭でも、安売りしているモノは買いたくない。僕は生産者・流通業者叩きに荷担したくないからだ。