やまけんの出張食い倒れ日記

石川県の元気な農業者紀行 超ド級に面白い農家達がこんなにいるのであった! その4 これはスゴイ! 超多展開をする「ぶどうの木」本さんは、もはや農家ではない!?

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金沢での一夜が明けると、もともと出ていた熱がさらに高くなっている感じで、ホテルのロビーに降りるだけで足下ふらふら、頭が痛くて大変な状況だった。日頃から、化学合成薬を飲まないことにしているのだけれど、これは仕事にならないということで急遽、迎えに来てくれた県の方にお願いして薬屋さんへ。幸いなことに、生薬でいいものがあるというのでいかにも効きそうなものをゴックン飲み干す。ちなみにこの薬の効果は、帰途に着き飛行機内でだんだん発揮されたのであった(涙)

さて金沢行の最初は、夜の飲みでお会いした、五郎島金時芋の生産農家である河二(かわに)さんの加工場だ。

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背景が黄色いのは、作業場と入り口を隔てたビニールカーテンがあるからだ。

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壁にばーっと並んだオーブンで五郎島金時を焼き、皮をこそげてペーストにして、さましてパックする。単純作業だが、この「焼く」というところがポイントだそうだ。

「実はさつまいものペースト加工では、蒸すのが一般的なんですわ。なぜかというと、蒸すと水分が足されて分量が少し増える。けれども、焼き芋にすると水分が飛んで重量が2割くらい減ります。だから損するわけですわ。でもね、味は焼いた方がはっきりわかるほど旨い。だからうちは焼きでこだわってます。」

その甲斐あってか、いまのところ引く手あまた。通年で出荷するための在庫量を確保することが大変なほどだそうだ。

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五郎島金時の生産農家は50軒。出荷量は限られているから、焼き芋加工については競合は出てきようがない。しかしそれでも、仲間内の農家さんから、B級品の芋を出荷してもらうのは大変だという。ここは頑張ってほしいものだ。

このところ全国的に動きが多いのは、いままで農産物の原体としてしか出荷してこなかった生産者自身が、二次加工・三次加工をして付加価値を高めたものを販売することで、成功している事例だ。蕎麦がいい例で、蕎麦を収穫して出荷しても手取りは低いが、製粉して自分のところで蕎麦屋を開いて売れば、当たればものすごい収益になる。もちろん美味しくないとダメだけどね。つまり、一次産品の生産者が、その後の部分もやるという時代に成りつつあるのだ。

面白いもので、飲食業界もそれを歓迎するような状況になってきている。いままでは菓子製造業者が小豆を買って、煮て裏ごししてあんこにしていたわけだけれども、もうそんなことをする和菓子業者がどれだけいることか。こだわったところはやるとしても、量産型の業者はあんこになったものを購入して味を調えるということをしているところが多いわけだ。つまり、食材の加工がだんだん上流へと集約されてきているということだ。

もうひとつ、以前も書いたかも知れないが、食材加工については保健所の指導が厳しくなっていて、工場に泥のついた芋を持ち込んだりすることが厭われている。だから、農家が加工したものを仕入れるのは時代の趨勢に叶っているのである。

とはいえ、加工を行う農家の施設も、衛生基準に適合していなければならないのは当然だ。そうした壁を乗り越えた農家が、第二次・第三次加工の領域に踏み込んでいるということなのである。

河二さんにはぜひ、ペースト加工が軌道に乗ったら、今度は自前で菓子製造までやっていただければ、と期待する。そりゃさぞかし旨いだろうなぁ、、、

 

さて、県の人から「講演前のランチは、ぶどうの木という店で、、、」と言われていた。ぶどうの木という店名には覚えがあったが、果たして金沢だったっけ?と思いながら店へ。

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いやーようこそ、と迎えて下さったのが、本(もと)さんだ。

「え、本さんって農家さんなんですよね?」

「ええ、ぶどう農家ですよ! ま、いろいろ手を広げてますが、、、」

と言うのだけれども、手を広げているなんてもんじゃない!この瀟洒な建物全てが、彼が展開する「ぶどうの木」の店舗やレストランや、ウェディング施設なのである!

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本さんは本当にぶどう農家だけれども、ぶどうを生産して出荷するだけではダメだと、自ら加工したり、飲食店を出店するようになったという。それはよくある話だけれども、徹底ぶりが非常にすごい。

洋菓子の並ぶ店内に入ってみると、こんな感じだ。

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店の主力商品であるコンフィチュールやぶどうのジュース、ドレッシングなどが並ぶ。数種ではない。数十種類のアイテムが並ぶ!圧巻なボリュームである。

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下の写真が、 小松空港でも販売している、バカ売れ商品のジンジャーシロップだ。

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その場で焼き上げている洋菓子類も秀逸。

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うーん すごい!しかも、必ずしもアクセスのいい場所ではないのに、お客さんがひっきりなしに訪れている。それもほぼ女性ばかり!だから本さんもこのショップについては、女性スタッフにいろいろ任せて店作りをしているということだった。

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「スタッフがやりたい、ということは基本的にはやらせるんですよ。まあ中には途中で「自信が無くなりました」っていって辞めていく子もいますけどね」

ということだが、この繁盛ぶりをみると、彼の人的マネジメントの腕がすごいのだろうと夢想してしまう。

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こちらはオーベルジュ。

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そして、ウエディングスペース!
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実はこれら施設はすべて「農地」である。農地の中に、椅子があってたまたま料理を出したりしているという寸法。だから、もちろん収穫のできる、きちんとしたぶどうが至る所に栽培されているのである!

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「ぶどうの木の生命力はすごいんでね!どんなところでも生育するんですよ。」

その本さんがこの地で最初に植えたぶどうの木が、河に面した入り口にまだ植えてある。

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「この木なんかね、道路を隔てた川から養分を取って生きている。すごい生命力ですよ!」

と、ぶどうの話をしているときの本さんの顔はやはり生産者の顔なのであった。

ちなみに、この「ぶどうの木」という名前とコンフィチュールの組み合わせ、どこかで効いたと思ったら、、、なんと、銀座にある専門店「コンフィチュール・エ・プロヴァンス」は、このぶどうの木の直営店なのであった!

一昨年、コンフィチュールブームが来たときの立役者となった同店に足を運んだ人も多いだろう。なんと、ブロバンスに現地法人を立ち上げ、コンフィチュールを現地生産して輸入・販売しているのは本さんである。いやーびっくりした。

「フランスにずっと一緒に仕事をしてきた、信頼できる人がいましてね。その人と一緒に現地法人を立ち上げてやってます。大変ですけどね~」

いやしかしコンフィチュール商品を買った人で同店の商品を知らない人はあまりいないだろう。日本橋高島屋にも出店しているのだから。

「まあまあ、それじゃオーベルジュでご飯食べましょう」

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このオーベルジュも、ウエディングの人気が非常に高くなってきた頃、一般客が予約をとれないことでクレームが多くなり、それで急遽、ウェディングスペースを造ったという、ものすごいエピソードがあるくらい人気があるようだ。確かに、メシは旨い!

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ジンジャー&ぶどうシロップの炭酸割り。

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本日の魚(カワハギ)のタルタルと野菜のサラダ仕立て。カワハギには肝を裏ごししたものがまぶされていて、しっかり美味しい!

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ホワイトアスパラとホタテ貝、フランスから空輸したモリーユにトリュフ。ちなみにこのトリュフは本さんが向こうで職人と一緒に掘ってきたものだそうだ。

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「残念ながら、金沢の食材じゃありませんが」かごしま黒豚のグリル。

これがなかなかの火入れ加減で、黒豚の質感がしっとり、旨味も活性化して美味しくなる適度なものだった。

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いやー

もう圧巻である!

金沢の元気な農家の中でも「あの人は別格!」といわれる存在であることはいろんな人から聞いたが、本当にすごい。農家を軸に置いた事業家である。

でも、本業はぶどう農家。農に対する情熱があって初めて事業があるというところに、共感を覚える。

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「ほら、そこのぶどうの枝から芽が出てますね」

ぶどうが生る季節には、この施設すべてで鈴なりになったぶどうを観ることができるという。よし、次はシーズンにこよう!

ちなみに「ぶどうの樹」というビュッフェスタイルで有名なレストランが、福岡にある。それとここの「ぶどうの木」とは別ものである。

■ぶどうの木
http://www.budoo.co.jp/index.html

まずは銀座のコンフィチュール店を、再度覗きにいってこようかな。

この後、県のイベントで90分講演、そしてパネルディスカッション。ふらふらになりながら帰宅したのであった。またいくぞ、金沢!