中央線で市ヶ谷と飯田橋の間あたりにさしかかると、「家の光」というビルからいろんな本のタイトルの垂れ幕がかかっているのを観ることができる。多くの人が「家の光ってなんか新興宗教?」と間違えているのだけども、まったく違います(笑)
「家の光」とは、農業者に向けて発行されている雑誌で、出版社である家の光協会は農協グループの一員である。教会ではなくて協会なのですよ。
メインの雑誌である「家の光」は一般書店には並ばないが、一般向けに発刊されている雑誌もけっこうある。そのうちの一冊が季刊「やさい畑」だ。
この雑誌で僕はこれまで野菜の品種別食べ比べの記事を担当してきた。いまでこそそうした野菜の品種に関わる食べ比べ記事はいろんな誌面で観られるようになったけれども、初めてメジャーな形で出たのはこのやさい畑で僕が書いた記事であるはずだ。最も、この記事の着想は、故・江澤正平先生が率いておられた識菜会という、野菜の食べ比べ会からいただいている。野菜は品種や旬が産地によってことなるから食べ比べが難しいけれども、それでも食べ比べなければ野菜のことはわからない、という考え方だ。これを誌面で体現できたのは、いまだに僥倖だったと思う。
で、その「やさい畑」2009年春号から、僕の新連載が始まっている。
「やまけんの農の匠探訪」というタイトルで、全国の篤農家(とくのうか)と呼ばれる、高度な技術をもった農家さんの探訪記である。
初回のテーマは「丹波篠山の黒豆」。数々の賞を獲得している、篠山の山本博一さんを訪ねている。白黒ページだけども、写真も僕。気合い入れて、撮ってます。
いま、農業ビジネスとか言われて、若手の農家や新規参入している人達が採り上げられているけれども、僕はそれよりも65歳以上になり、もうすぐリタイアされるであろう篤農家の人達に興味がある。その人達が50年かけて培ってきた技術は、おそらく伝承されないで消えていってしまうだろうと思うからだ。
僕はこれまで農業情報という分野で、篤農家の技術をデータベース化することが必要だと説いてきたのだけれども、その一方で、篤農家のカンは、最終的には数値化はできないと思っている。農業技術は複雑系なのである。
今後、農業構造が変わる中で、これまでの篤農家のように長年農業だけに専心してきたことで導き出した技術というものは、いったん途切れてしまうと思う。だから、いま僕がやりたいことは、「現存する篤農家の技術や精神のアーカイブ」である。
その一つが、この連載で表現されると思っている。たんなる雑観に満ちたインタビューではなく、品種や作型、農法に触れられるだけ触れている。だから生産方式に関心のある人が、読んでいて最も楽しいはずだ。
ちなみに、紙幅が4ページで写真点数も限られているうえに白黒だ。ということでここで数点、写真のみ掲載しよう。
丹波篠山の黒豆は、他産地と比べると3割程度の価格差がある。それは丹波篠山ゆえの気候・土質からくる品質差に由来している、と僕は思う。美味しくできる理由があると思うのだ。
地元でも最も有名な黒大豆農家・山本博一さんだ。
山本さんの黒大豆の株元は信じられないほどに太くなる。きっちり味が乗るためには、肥培管理も肝要なのである。その辺はきっちり誌面に書い てあるのでご覧下さい(笑)
近所の黒豆資料館でいただいた黒豆御膳。
やっぱりカラーがいいな!
やさい畑 2009年 04月号 [雑誌] | |
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現在、次号の誌面が製作されている。そちらのテーマは、、、
トマトである。とはいってもただのトマトじゃない。こうご期待。