ブログ更新している余裕が全くなくなってきた、、、京都編なんていつ書けるのだろう、、、先週は高知出張が終わった後、木曜日は会社で人と会いまくって、原稿一本仕上げて、金・土と石川県出張。石川の農業者はスゴイ!またこれは書きたい。
で、見事に石川県でまたもや37度台後半の発熱。これまでの人生で、20代まではだいたい一年に一度くらい熱が出て寝込んで、あとはぴんぴんしていたのだけれども、30代に入ってから数ヶ月間隔になり、昨年からは出張で無理をしすぎるとすぐにやばくなる状態になってしまっている。
最近数えてみたら、日数ベースでいくと、今年度は軽く100日以上、出張に出ているのだ!うーん、、、現場である産地にこんなに行くことができるという状況は素晴らしいけれども、さすがに気力・体力が持たなくなってきたのも事実。4月は出張回数を最高でも3回までに減らすこととしようと思います。
と、いいつつ明日から島根県二泊。週明けには愛媛。なんとか、生きて残りたい、、、
そうそう、昨日の教育テレビで放送された日曜フォーラムをご覧いただいた方、どうもありがとうございました。どうも「野菜が安過ぎて、おかしくなってしまっているのはスーパーのバイヤーが悪い!」という部分だけが強調されてしまっていた感じもするのですが(今後、スーパーのバイヤーさんに会うのが怖い)、おおむねあんなところでしょうか。会場ではもっと過激なことも言っていたので、なかなか編集は巧みでしたね。
一緒にパネラーとして出ていた、群馬県のグリーンリーフ代表・澤浦さんの発言はサスガの一言でした。
「取引ではなく取り組みを」
ということなのです。また時間のあるときに書きたい。
さて、今日はこれだけ書いて、あとは画像だけ数枚アップしたい。最近、僕の関心は菜種(ナタネ)に集中しているのだ。
ご存じだろうか、日本の油の自給率は13%。その半分以上が動物性油脂(つまりラードとか)だから、一般に使われている植物油は5%未満だ。日本の植物油はほとんど、外国産の脂か、大豆や菜種などの油脂植物を輸入して絞っている。サラダ油なんて、何がどれだけ入っているのか、ほとんどわからない状態だ。
また、知らない人も多いだろうが、油を絞る植物は、遺伝子組み換え作物が使われていても、問題ないとされている。油には遺伝子が由来する蛋白質などは含まれないから、らしい。科学的には問題ないとされるのだろう。けど、それはあまり知られていない。そして、遺伝子組み換え作物から絞られた油は、日本において広く浸透しているのである。
そんな中、日本で菜種(なたね)を生産し、油を絞っている人達は非常に減っている。日本国内で生産するより、カナダなどのキャノーラを持ってきて絞るほうが圧倒的に安いからだ。それでも、景観の保全やエコロジカルな燃料としての油を採油するために、菜種プロジェクトを展開している産地がいくつかあった。
国からは、菜種を作付けした場合、ある程度の補助金がついていた。それでも日本で馬鹿正直に菜種を造って油を絞った商品は、販売価格が、市販のサラダ油の二倍や三倍くらいしてしまうことがザラだ。しかし、その状況に追い打ちを掛けるように、国の補助金の交付は昨年をもって終了となってしまった。
つまり今後、産地は補助金無しで、自力での採算をとらねばならない。
ちなみにこういうことを書くと、「補助金を目当てにして、それがなければ成り立たないのであれば、油なんかやめてしまえ」という人が出てくるだろう。
でも、そんなことを言うのは日本だけですよ。米国のコーンや、フランスの麦など、欧米では重要な農産物には補助を付ける。
「日本の農業は保護されすぎだ」
という人が多いが、農業者自身に入る収入ベースで考えれば、それは正しいとは言えないのである。
そろそろ、日本人が湯水のごとく使うようになった油脂のほとんどを他国に依存しているという事実を見つめる時期が来ているのではないだろうか。
オリーブオイルは素晴らしい文化だ。ピーナツオイルも芳ばしくて最高だ。
でも、その一方で僕らは日本の植物から絞る油の香りや風味を大事にしているだろうか?これは、僕自身もきつく反省していることである。
きっかけは、トマトの「桃太郎」を開発しているタキイ種苗の取り組みに触れてからだ。
タキイ種苗では「なたねのちから」という油を販売している。
この商品の前に、タキイが開発した菜種品種の話をすべきだろう。タキイ種苗をすでにおやめになった役員の方が「タキイはなにか世のためになる品種を作らなければならない」と思い、開発をしたのがT-830という菜種品種だ。
実は菜種は国産の品種がすでにある。しかし、在来品種には、エルシン酸という有害物質が含まれることが多い。また、油を絞った後の菜種カスを、動物の餌などに利用するときに害になるグルコシノレートという物質も含まれることが多かった。
すでに東北農業試験場などがそれを克服した品種を開発しているが、タキイでも、収穫量を多くできる品種開発を続け、T-830という品種を創りだしたのである。
ちなみに、日本では基幹的な作物の品種は、公共の試験場で育種されることが多い。稲やじゃがいも、さつまいもが国の機関で育種されているのはそういうわけだ。菜種もそう。民間企業の種苗会社が菜種の開発をするというのは、初めてのケースなのである。
そのT-830は、まだデビューしたてほやほやであり、実験的な作付けしかされていない。それを増やすためにも、まずはその菜種を絞った油を味わってもらうのがいいのではないか、ということで、タキイが油商品を作ることになった。それが「なたねのちから」だ。
菜種油の多くは、菜種を焙煎して、そのまま圧搾機にかけて絞ったものが多い。これを赤水という。ぶわっと菜種特有の香りがする油になる。芳ばしくて、素晴らしい。しかし、この菜種臭さをいやがる人もいる。そこで「なたねのちから」は、純粋な赤水と、同じな種を白鮫油(しらしめゆ)という、クセのない油にわけ、それをブレンドしている。芳ばしい香りと、シツコサを抜いてあっさりと使えるという両輪を成立させたのだ。
嬉しいことに、立て続けに菜種油の生産者さんに出会い、サンプルをいただいたので舐めくらべをしてみた。左から、長野県の大町で生産されている菜種油。ご覧の通り三種のなかで最も色が濃い。脱ロウ、脱色などを一切していないのだそうだ。真ん中が「なたねのちから」で、色が最も淡い。右は、岩手県の一関で生産をしている工房地あぶらの「まごどさ」。
舐め比べをしてびっくり。三種とも個性が全く違う!大町の油は、もの凄い香り。複数のナッツと花が混ざったような複雑な香りで、強烈だ。そして岩手のまごどさは、これも濃い香りがするが、大町のものよりはやわらかく余韻に残る。そしてなたねのちからは、これら二種にくらべて非常に穏やかで、ゴマの香りが加わったような香りがする。
強烈な菜種の香りを料理に添えたいなら大町かまごどさ、素材に和する使い方をするならばなたねのちから、という使い分けだろうか。どれにしても素晴らしい味、風味である。オリーブオイルの深さに負けないじゃないか、と思ってしまった!
この菜種油についてはもっと深めていきたいと思っている。あ、それもいつになるんだろうか、、、
ちなみに油について僕にいろいろ教えてくれている人が本を出した。
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著者の青木えまちゃんは、なんと東京の油問屋のエキスパート。油使いの達人である。このレシピ本、じつは昨年にも紹介した、富士酢の飯尾醸造のお酢レシピ本のシリーズである。
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どちらも出色のできばえ。調味料へのみかたが深くなるなること間違いない。
とにかく油には、要注目なのである!
さてさて、明日の出張に備えて、寝に帰ります。