報告が遅くなりましたが、2月8日に開催された「岩手食材の魅力を探る~ 雑穀、やまぶどう in アクアヴィーノ」の会は、大盛況のうちに開催されました。
実はその前日の夜中にドイツ・フランスから東京へ戻ってきたので、へろへろだったけれども、その内容は素晴らしいものでした! さすがは日高シェフと山崎シェフ、さすがは岩手食財という気持ちで一杯。
広尾駅から歩いて3分、アクアパッツァの入るビルの1Fが「アクアヴィーノ」だ。アクアパッツァはリストランテでちょっと緊張するけど、ヴィーノの方は気軽に入ることができる雰囲気で、いつも満杯。
朝9時から、二戸から駆けつけた雑穀料理家である安藤直美さんが雑穀おにぎりを握ってくれる。
ご飯炊きのために山崎シェフも早めに厨房入りしてくれた。
スタッフも総動員!
この日は貸し切りとなるため、その告知とイベントのための黒板イラストを書いてくれるスタッフ女史!
「彼女は黒板絵を描くのがすごく上手いんですよ」
とシェフ。本当にすごい!
開催時間に遅れること5分で全員着席。募集から15時間程度で速攻で埋まってしまっただけあって、みなさんの意気込みもスゴイ!年齢層も様々なひとが集まったのである。
最初の飲み物は、スプマンテでやまぶどう原液を割ったもの。これ、実はアクアパッツァのソムリエである瀧原さんの手によるものだ。
「最初、いただいたやまぶどう原液をそのまま呑んだときには、強い酸味にううっとなってしまったんです。正直、これをどうしようかな、と。けれども、ひらめいてスプマンテで割ってみたんです。そうすると、強い酸味が消えて、代わりに素晴らしい香りと複雑な旨味が味わえるようになったんです」
と話してくれた通り、スプマンテの炭酸が酸味を消してくれ、奥に隠れていたやまぶどうの甘さ、旨味が立ち現れてくるのだ。すばらしい!
ちなみにアルコールを飲めない人には、岩手県北の地サイダーである光泉サイダーで原液を割ったものが振る舞われたのだった。
今回のメニューは超・特別!
素晴らしいラインナップなのだ。
MENU
安藤直美さんの雑穀おにぎり3種(ひえ・粟・きび)
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高きびとじゃがいものピューレを詰めたオリーブのフライ
鱈とじゃがいものコロッケ アマランサス衣揚げ
きびのフォカッチャ 粟のフォカッチャ 蓮根ハンバーグを挟んで
きびと生ハムで和えたサラダ トマトを器にして・・・
野田村産帆立と白髪葱のサラダ仕立て きびのビネグレットソース
三種類の雑穀と人参、キュウリ、マグロが入った生春巻き わさびの香り
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ひえの入ったイタリアのトマト味のパン粥
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岩手県産“菜・彩・鶏”からとったガラスープ 雑穀と寒締ほうれん草
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雑穀と岩手県産“菜・彩・鶏”の焼きリゾット
2種類のアスパラガスのソテー 山葡萄ピューレと共に
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あんこうの生ハム巻きソテー マルサラ風味のきびソース 粟のクスクス風添え
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きびのジェラート 山葡萄ピューレがけ
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安藤直美さんのへっちょこだんご
なんと堂々14品!(14皿じゃないよ)
それでは一つ一つ追っていきたい。
■安藤直美さんの雑穀おにぎり3種(ひえ・粟・きび)
まずは、雑穀に様々な手を入れた料理が出てくる前に、それぞれの雑穀の味を識っていただくため、シンプルな塩むすびを。奥からひえ・粟・きびの順だ。塩も久慈市の野田の塩を使っている。これが、どれも味と香りが少しずつ違うのである。家庭だと、一度に数種類の雑穀ご飯を食べることは少ない。「あー 違うね!」とみな言いながら口にしていた。
さて、山崎シェフ渾身の料理の始まりだ。
■前菜盛り合わせ
■高きびとじゃがいものピューレを詰めたオリーブのフライ
これ、実は来場者の人気ナンバーワンとなった一品。小さな楕円形のフライはオリーブの中身に、粒の大きなタカキビとじゃがいもピュレを入れたものだ。オリーブという強い個性を持つ素材なのに、きっちりとタカキビの食感と香りがするのが、こちらも強い個性をもつタカキビの持ち味だ。
■鱈とじゃがいものコロッケ アマランサス衣揚げ
日高シェフによると、イタリアでは干しだらを戻したものをジャガイモとあわせて食べることがよくあるそうだ。その衣になんとアマランサスの小さな粒を使った一品。揚げたアマランサスはカリリッと素敵な歯ごたえで、違和感全くなし。
■きびのフォカッチャ 粟のフォカッチャ 蓮根ハンバーグを挟んで
このフォカッチャにはキビや粟が入っている。レンコンハンバーグのしっかりした味と相まって、商品化できてしまいそうな美味しさだ。
そして二皿目の前菜盛り合わせ。
■きびと生ハムで和えたサラダ トマトを器にして・・・
きびだんごのイメージが強いいなきびだけど、実はトマトなどのイタリア食材との親和性は非常に高い。穀物というよりパスタのようになじむのだ。
■野田村産帆立と白髪葱のサラダ仕立て きびのビネグレットソース
同じくキビをホタテとあわせる。不味いわけがない、、、控えめのビネグレットの味が実にほどよい。
■三種類の雑穀と人参、キュウリ、マグロが入った生春巻き わさびの香り
雑穀入り春巻き。「口やすめになるからね」と日高シェフが言っていたけれども、口安めなんて軽さではなく美味しい一皿だ。
■ひえの入ったイタリアのトマト味のパン粥
テーブルに皿が運ばれ、香りを嗅いだ参加者のみんなから「うわーーー」っという声が上がった一皿。
やっぱり、雑穀はトマトソースとの相性が抜群によい!
パン粥の楽しい食感に、プチプチと大きさと硬さの違う雑穀がはいることで、風味も食感も楽しくなるのだ。
■岩手県産“菜・彩・鶏”からとったガラスープ 雑穀と寒締ほうれん草
岩手県二戸市の養鶏企業である十文字チキンカンパニーの銘柄鶏「菜彩鶏」からスープをとり、岩手県のちじみほうれん草を具にしたスープ。十文字チキン社の鶏は信頼していい。サッパリしながら芯のあるスープ。そしてここに、イタリアンならではの技法を。
なんと、やまぶどうワインを少量垂らすのだ!
「イタリアのある州の技法なんですが、こうすることで風味ががらっと変わるんですよ!」
という日高シェフのお言葉通り、やまぶどうの香りがブワッとスープ全体に行き渡る。これは美味しい!一椀で二度楽しめるというお得な料理だった!
そして美しい一皿が、、、
■雑穀と岩手県産“菜・彩・鶏”の焼きリゾット 2種類のアスパラガスのソテー 山葡萄ピューレと共に
糖度が非常に高くなる県産アスパラガスと、雑穀主体の焼きリゾットを合わせたもの。ソースは、やまぶどうの風味を活かすために、産地で果汁をピュレにしたものをそのままあたためてかけただけという。
美しいし、美味しい! 雑穀リゾットは鶏のスープを吸って旨味十分。リゾットというよりも焼きおにぎりのようで、日本人なら誰でも好きになる味だ。それにやまぶどうピュレが加わるだけで、横方向に縦方向のベクトルが加わる。複雑な酸味、甘み、渋みが陰影を添える、奥行きのある一皿になった。
さてそしていよいよセコンドだ!
■あんこうの生ハム巻きソテー マルサラ風味のきびソース 粟のクスクス風添え
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
俺はこの一皿にノックアウトされた!
マルサラソースが甘やかでかぐわしく香る中、キビがそれを十分に吸って上質なクスクスのように舌の上で遊んでくれる。絶妙に薄く巻かれた生ハムを断ち割ると、白いアンコウのフィレの身がホックリと加熱されている。旨味十分のアンコウとマルサラソースのマッチングで、さらにキビが旨くなる。これは脱帽! この料理、また食べたい!
いやー 各席でも参加者のみなさんは楽しんでいただいているようだった。
■きびのジェラート 山葡萄ピューレがけと、安藤直美さんのへっちょこだんご
デザートはへっちょこ団子とキビジェラートだ。
観ていただければ、味もわかっていただけるだろう。キビのジェラート、芳ばしくて美味しい。やまぶどうのピュレは、甘いものにも辛いものにもソースとしては非常にマッチ。この方向性がいいんだろう。
いやーーーーーーーーーーーーーーーー
旨かった! ちなみに全ての料理が出るタイミングで日高シェフに解説をしていただいたのだが、その際、僕が司会進行をしている関係上、写真撮影をできなかった。残念!
そして会の後半は、久慈市のやまぶどう担当者である川原さんと、雑穀生産者である高村さんにご登壇いただく。
料理人と生産者の声を両方聞くことができる機会は少ない。参加した方達は、説得力ある話を聞いてもらってどんな感想をもっただろうか。僕も知りたいところだ。
そういうわけで、会は大盛況のうちに終了!
素晴らしいひとときでした。
終了後、日高シェフと高村さんがずーーーーっと熱心に話し込んでおられた。この両雄、どのような話題になったのだろう。
山崎シェフ、お疲れ様!彼は来る日も来る日もプレッシャーで眠れなかったそうだけど、本当に素晴らしい料理だった。お疲れ様でした! ちなみに彼と僕は同い年であることが判明。イタリアンでは、ラ・グラディスカの堀江シェフ、アルキメーデの重も同い年だ。と言うわけで今度飲みに行こうということになる。日程合わせないとな、、、
この一年間、岩手県北部地域とがっぷり組み合って、短角牛、雑穀、やまぶどうという食材をどのように伝えるかということを考えてきた。
そして、来年もこのつきあいは続きそうだ。今年の内容よりパワーアップした企画を、読者の皆さんにお届けしたいと思うので、よろしくお願いします。
関係者のみなさん、お疲れ様でした!そしてご参加下さった皆さん、ありがとうございました!