柴田書店の「専門料理」の連載が3年目を迎えているが、ここ3ヶ月くらいは短角牛ではなく、「褐毛和種」の話題となる。「褐毛」と書いて、正式には「あかげ」と読む。「かつもう」と読む人も多く、常用漢字的にはどうしたって「かつもう」と読んだ方が自然なので、それでも間違いではないとされるが、正式には「褐毛=あかげ」と読む。
この褐毛和種はれっきとした和牛の一つに数えられるが、実は熊本系と高知系の二種が存在する。どちらも朝鮮系の在来牛にシンメンタール種を掛け合わせたものだが、その後の細かな改良の歴史のなかで、熊本系はよりシンメンタール種の影響が濃く、高知系は朝鮮系の血が濃いという違いがある。肉質も味もちろん違う。これをこれから掘り下げていくつもりだ。
詳しくは、来月号からの「専門料理」を楽しみにして欲しい。
それにしても、取材で訪れた褐毛和牛の牧野はすばらしい景観だった。岩手県二戸市周辺の牧野は、さすがに冬のあいだは雪に閉ざされてしまい、短角牛たちは里へ降りる。いわゆる「夏山冬里」という方式だ。しかし、阿蘇では周年、つまり一年中放牧が可能な地域がある。これはもの凄いメリットである。その総面積は2000ha以上! びびってしまった、、、
「それだけの面積を切り開くのは大変だったでしょうねぇ、、、」
と訪ねると、牧野組合の方がフフッと笑って「まあ、阿蘇の放牧は歴史がありますからね。室町時代から続いてますから、、、」と仰る。
んー
スケールがでかい!
ご覧の通り、見渡す限り牧野!なのである。
牛たちは離れたところで草をはんでいる。「ホイホーイ!」と生産者さんが呼ぶと、ぞろぞろとこちらに向かってやってきた。
「あれはね、今朝がた産まれたばかりの子牛なんですよ、」
と組合員さんが指さした方を観ると、バンビちゃんのように可愛らしい仔牛が、もう母親についてちょこまかと歩いている!人間の赤ん坊と比べるとあまりにも早い成長である。
熊本系の褐毛和種は、高知系よりも体毛が濃い褐色だ。阿蘇の自然にぴったりマッチしている。女の子(メス牛)はとてもめんこい。性質もおとなしく、ホルスタインや黒毛のような神経質さを持ち合わせていないので、和む。
もちろん肉は、非常に旨い!
サーロインやヒレよりも断然、モモが旨い!味が乗っていて、脂はほどよし。堪能しました。今年はこの熊本系の褐毛和種を一頭、持たせていただきたいというお願いをして、帰京した。
右端が、全国的に有名な牛飼いのかあちゃんである那須マリコさん。彼女の存在なしには僕と阿蘇のあかべこ接近遭遇はありえないのであった。
さて、原稿書くか、、、