そもそも前回、夏に久留米に行ったときのことをずっと書くゆとりがなかったのだけど、実に重要な久留米行になったのだ。
日本酒、とくに純米酒好きであればこの名前に見覚えがあるだろう。
杜の蔵(もりのくら)酒造。福岡で純米酒と焼酎を醸す蔵だ。
僕は、錦糸町「井のなか」の工藤ちゃん経由で、ここの若頭である 森永君とは知り合っていたけれども、まさか久留米で会えるとは思っていなかった。
なにせ、仲間である富松が駅に迎えに来てくれた時、車の運転席に座っていたのが森永君だったからだ!
「やあっどうもどうも!」
「ええええええええ なんでここにいるんだよぉ!」
「だって俺と富松は同級生だもん」
なにいいいいいいいいいいいいいいいい
そう、富松と森永君は学友。ここまで近しい存在だとは思っていなかった、、、
ということではからずも杜の蔵酒造の見学をさせてもらえることになったのである。
うーむこれだけ同学年が並んでいるとちょっと気持ち悪い気もするが(笑)
森永君は、杜の蔵をひっさげて東京などの消費地をガンガン訪れる、エネルギッシュな蔵の跡取りだ。
実に攻撃的な(笑)口調がまた頼もしいやつでもある。
そして、この日紹介してもらった若手の杜氏である村田君。 彼も同学年だというので、わらっちゃう。ちなみに、70~71年産まれの学年ね。
蔵には杜氏長がいらっしゃるが、彼はそのしたで製造の指揮を執っている。この若さで素晴らしい!
「じゃ、今は製造してませんけど、さっと蔵の中を見ていただきましょうか」
(この写真とったのは昨年夏の時点なのです)
この杜の蔵は、純米の熟成酒で有名な蔵だ。 しかし一方では、酒粕を利用した粕とり焼酎のメーカーとしても現地では有名。
「昔は酒粕の匂いが町中に充満してたよなぁ、あれが臭くてなぁ、、、」
というようなことだった。
上の写真に あるのが、粕とり焼酎の製造行程で重要な役割を果たす、蒸し器のようなもの。うーむ、これは呑んでみないとね!
「じゃ、たっぷり呑んでもらいましょう!」
ちなみに、僕は本当は酒よりも水をいただいたほうが嬉しい人間で、仕込み水が大好きだったりする。
「だめだよそんな甘いこといっちゃ!」
と、早速に純米ど真ん中 の酒が出てくる!
僕が杜の蔵の中で最も好きな酒。「大手門」だ。
左が純米吟醸。右が純米大吟醸。
吟醸は余り好きじゃない僕だけど、大手門は実に美味い。なぜかというと派手な吟醸香がなく、ドシッと落ち着いた酒質だからだ。これならば、刺身に合わせてもいい。それどころか、燗にしたときに浮ついた味にならない、線の太い酒なのだ。
「いやー 大好きな酒だよ。もうこれで上がりでもいいなぁ」
といっていたら、、、
予想外に、この蔵のメイン商品である「独楽蔵」がいい出来になっていることを知る。
2005BYということで、3年経過した熟成純米大吟醸。しかも、なんと常温熟成だ。
「やまけんさんは燗がいいんですよね」
と、ちろりで燗につけてくれたのを口に含むと、「大手門」の上品な骨格とはまた違い、図太い野太い、でも上品で豊かな味の酒である! 常温熟成が上手くいっているようで、ひねたような香りは一切無い。ただ旨味が濃縮されているように感じる。
この「豊熟」だけではなく円熟という純米吟醸、さらに純米酒を常温熟成させたものもいただいた。いつもなら「吟醸以上はいらないよ」といってしまう僕だけど、このラインに関しては「豊熟」がうまい!もちろんお値段も張るけれども、その価値ありだ。
そして、、、
こちらが焼酎達だ。
写真右の「吟香露」というのが典型的な粕とり焼酎だ。酒粕を蒸留してできるこの焼酎、メロンのような香気を楽しむ、和製グラッパともいうような酒。その隣りの「歌垣」は対照的に、派手な香りの酒ではなく大麦麹で仕込んだ麦焼酎だ。こちらは酒粕焼酎とはまったく違う野武士のような味の世界。うん、飲み続けるならこっちだ。
いまごろ蔵は造りのピークを迎えているだろう。
森永君、一段落したらまた久留米で呑もうよ。村田君、今年の酒も楽しみにしてます。