宇都宮からローカル線の烏山線にて1時間。僕は初めて南那須に足を踏み入れた。
「遠いでしょう?ようこそようこそ。何にもないと思われがちだけど、宝物がいっぱいある土地なんですよ」
と、農業振興事務所の方々が出迎えてくださった。
栃木県は有力な農業県であることは間違いないが、意外なことに北海道を除く都府県では酪農規模が最も大きな県だそうだ。
「何より面白いのはですね、みかん栽培の北限地があるんですよ。」
ええっ 栃木でもみかんができるのか!さっそく烏山市の山を登った、小木須という地区にあるみかん園へと向かう。
ほんとうにみかんが生っている!
品種は宮川らしい。宮川早生なら知ってるけど、こちらは普通の宮川。さすがにこの辺でみかんが生るということは、専門家にとってもすごいことらしく、以前招いた研究者が驚嘆していたらしい。
同行の方々が「酸っぱくて頭がしびれるみかんですけどね」と言うと、生産者の川俣さんが「最近じゃそんなことないぞ!」と返す。実際に食べてみたが、、、美味しい!はっきりと際だった酸味は強いが、糖度もきちんと乗っている。酸の強さで、味全体が濃く感じられ、とっても美味しい。
もう収穫末期なので、小玉しか残っていない。けれども僕は小玉みかんのほうが好きなのだ。
いや、実に感動。
喜ぶ僕をみて、川俣さんが「これもってけ!」と、たわわにみかんが生った枝をバチンと切ってくれる。ええっこれ持って帰れるかな!?
園地を降りていくと、やっぱりあった、棚田!
日光の角度がよくなる5月の田植え時期に、きっと綺麗な写真が撮れるはずだ。来年、再訪を誓ったのである。
南那須地方だけで10カ所以上の直売所があるそうだが、そのうちの一つに立ち寄り、鷹の爪などを買い求める。写真は、たくわん用の理想系大根を干したものと、米ヌカのセットだ。つまりこれを買って、でかいバケツに全部混ぜて重しをすれば、自家製たくわんができるということ。思わず買いたくなったが、どうやら宅配便の手配とかができないようなので、なくなくあきらめた。うーん、これでたくわん漬けたい!
「やまけんさん、実はこの先にものすごい風景があるんですよ!」
と高野さんが言うので身構えていたら、予想以上に素晴らしい景観が現れた。
幹線道路のすぐ脇に、黒毛和種が放牧されているのだ! ひゃああ、これは面白い。
ご覧の通り、道路の脇に、電線は張られているものの、すぐに放牧場が拡がっているのだ。すんごい風景である。
もともと2haの梨畑だったところが、もう高齢化で続けられなくなり、樹を切ったあとに牧草の種を播いて繁殖牛を放牧し始めたのだという。モシャモシャと草をはむ牛たちがいる風景は、ずっとここに立ち止まっていたいと思わせるものだった。ちなみに、この畑の横に建っているのはニコンのレンズ工場! レンズの工場直売なんてやってないかなぁ、と思ったが、そんなのは無いようだ。残念。
「お昼ですが、やっぱりこの辺では蕎麦が美味しいですから、風情のあるところで蕎麦を食べていただこうと思います」
といって車を走らせると、古い茅葺きの民家が見えてきた。
「あそこで食べます!」
ええええええ!? マジ?
車が入っていったのは、那珂川町ふるさとの森公園。茅葺きの古民家を移築した建物と、手打ちそば屋「ふれあいの舎」があるのだ。
残念ながらいま、メインの茅葺き民家が茅の葺き替えの最中で、そこでは食べられないらしい。けれども、高野さんが頼み込んで、一回り小さな茅葺き民家の中で食べられることになった!
茅の上にこけがビッシリと生えている。歴史を感じさせる、、、
足を踏み入れると、綺麗に保存されている内部は、実に素晴らしいものだった!
自在鉤の横では、川魚を藁束に刺して囲炉裏の煙で燻している!これが保存食になるそうだ。
ここで、囲炉裏を囲み、蕎麦をいただくこととあいなった。
、、、結論をいわずともおわかりだろうが、、、
凄まじく美味しい蕎麦だったのだ!
ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
何キロメートルも先まで見通せそうなほどに透き通ったクリアな風味の蕎麦である。高貴にしてすがすがしい香りと甘み、清冽な風味のつゆ。
「水、ですかねぇ。この辺の水は、水道水でも凄まじく美味しいですから、、、」
ほんとうに透明感のある水分を感じる!
しかも、あとで調べてみたらこの店、激安である。このWebをみていただきたい。
■那珂川町のWeb (→ちなみに那珂川と書いてなかがわと読みます)
http://www.town.tochigi-nakagawa.lg.jp/sights/fureai/
盛り蕎麦500円。天盛りそば600円。
なんだそりゃぁあああああああああああああああああああああああああああ
激烈に旨くて安い!
蕎麦が旨い季節のうちに、ぜぇったいにまた来るぞ!と誓いながら、蕎麦だけ二枚お代わり。もちろん盛りも非常によく、東京のそば屋の1.5倍程度の盛りである。素晴らしい!
「まあね、この辺では自分とこで蕎麦を作って、自分で打つってのが多いんですよ。この店だってはえぬきのプロってわけじゃなくて、蕎麦の生産者が集まって蕎麦打って出してるんですから。」
うーん どえらい話だ。栃木の蕎麦ってそんなに注目していなかったが、、、やっぱり水がいいところは蕎麦が旨い。これからはぜひ肝に銘じておきたいと思う。
そんなこんなで無事、講演も終了。非常に重たい原稿〆切を二本抱えた僕は、トンボ帰りで事務所に戻った。残念だ、、、帰りにまた蕎麦を食べたかった。
ちなみに、土産はこれだ。
川俣みかん園の、たわわに実ったみかんの枝(笑)
新幹線に乗ってる間と、東京駅の人混みの中、これをもって歩くのはなかなかに目立つ。でも、とてもいいお土産だった。
南那須でお世話になったみなさま、どうも有り難うございました。また、必ず伺いたいと思います。