「じゃばら」という柑橘をご存じだろうか。和歌山県の北山村で発見され、栽培されている柑橘類で、同地では薬味として様々な料理に使われるものだ。10年ほど前、このじゃばらで村おこしが試みられ、かなり人気を呼んで現在に至る。僕も前前職の時代にこのじゃばらの名前は聞いていたけれども、実際に味わったのはごく最近のことだ。
東京農工大の客員教授をしている福井さんが、「ぜひ一緒に飯を食べたい。ついては門前仲町の匠にて寿司など食べませんか」というお誘いを打診してくれたのが2ヶ月ほど前。その席に彼はこのじゃばらの果汁を持ち込んでくれた。折しもシンコの季節。シンコにじゃばら果汁を軽く塗ったものを握って貰って堪能したのだ。
「このじゃばらを、もう少し違う商品に開発したいと思ってるんです。力を貸してください」というお話しをいただいたのだ。きけばこの北山村という地は、南紀白浜空港からさらに車で二時間半かかる、陸の孤島的な場所である。しかも和歌山・三重・奈良の三県が入り組んだ飛び地に存在する、不思議な場所なのである。
いや、、、本当に遠かった。それが実感だ。しかし、それだけに他所では味わえないものがいっぱいあったのだ!
実は南紀白浜空港には初めて降り立った。和歌山はよく行くけれども、こちらの方面は足を踏み入れたことが一度、しかも陸路でしかなかったのだ。
途中通ったこの川は、河原を掘ると温泉が出てくるというところ。道を歩くのは水着を着た男女で、河原に降りて掘って湯を出し、それに浸かっているのである。
「北山村の隣村に千枚田があるんですけど、観に行きますか?」
と言ってくださったので、ぜひぜひ、と思ったら、隣村でもたっぷり30分以上かかる場所なのであった(汗)
刈り取りはほぼ終了し、刈り干しもだいたい終了しているシーズンだった。
さて北山村に到着。村長さんにご挨拶。
実はここに至るまで、この旅路がいったいどういう仕事に帰結していくのか、ほとんど福井さんには教えて貰っていない。きっと、そういうスタイルなんだろうと思って、半ばそういうブラックボックス状態を楽しみながらここまで来たのである。
で、北山村が直面しているのは、キラーコンテンツである「じゃばら」の魅力を、もっとしっかりと外に向けて発信していくということに加えて、北山村ならではの文化を振興させていくために、刺激が必要だということだった。詳しくはまだここには書けないが、実に面白いプロジェクトを数本立てて、この山間地ど真ん中の北山村からいろんな文化を発信しようとしているのであった!
ま、それはいいや。とにかく「じゃばら」である。
村が管理する園地で、じゃばらが一面に植えられている。一部は転換中有機で、来年度には完全な有機農産物としてJAS認証を取得可能になるようだ。
これがじゃばらの花。実に可憐だ、、、
そして、じゃばらがたわわになっている光景は実に賑やかなものだった!
以下、じゃばらポートレート群である。
なんだか、不思議に非現実的な写りに見えるだろうが、これは明るい日中に、日光と逆方向からフラッシュを焚く、いわゆる日中シンクロという技術で撮影しているからだ。この日は非常に日差しが強かったので、f16で撮影している。さすがにオリンパスのレンズは優秀で、くっきりした画質を得ることができた。カメラボディはE-3。もっともっと評価されていいカメラだ。
中央の赤いのは、このじゃばらの花の蜂蜜を採っているところ。「じゃばら」ドリンクはすでに大人気を博しているのだけれども、これに地元産の蜂蜜を甘味料として使った飲料品を作ろうじゃないか、ということなのだ。素晴らしい!
町中(というより「村中」のほうがいいのか?)に戻り、このじゃばらを最初に発見・育種した人のご自宅に向かう。あいにくと留守だったのだけど、じゃばらの最初の樹が生えていた場所を見せていただく。
ここに、最初の樹が生えていた、という。ちなみに他県でも「じゃばら」を商品化しているところがあるようだが、どうも「あれ、品種がちょっと違っちゃってると思うんですよ、、、純粋なじゃばらではないと思う」というようなこともあるらしい。じゃばらはこの北山村で生まれた。とにかくそれは確かなことらしい。
それにしても、北山村は山の世界である。神社や滝、美しい川の景観に囲まれている。あまりに豊かすぎて、しばらくはどこにも動かないでもいいや、ここにずっと居たいと思ってしまうポイントが、そこかしこにあるのだ。
さあ、メシだ!
北山村のお母さん達が、地元の味を今日してくれる「かからの店」を訪れると、可愛いお母ちゃんが出迎えてくれたのである。
(つづく)