滋賀県は僕にとって、なじみがあるようで少ない地域だ。僕の母方の叔母一家が長浜、彦根に住んでいたので、子供の頃に数回足を運んだことがある。鱒の釣り堀にいったとき、従兄弟のお姉ちゃんの方にばかり魚がかかり、僕はビリでしかも小さいのしかかからなかったので泣いた。田舎に遊びに来ているにも関わらず教育パパだった叔父さんが目を光らせる勉強タイムがイヤで嫌でまた泣いた。子供の僕はよく泣いていたのだ。
先日、講演で東近江市に招かれた際、滋賀というか近江という地域は、こんなにも田圃の風景が美しいところだったか、と電車の中で身もだえしてしまったのだ。 米原からローカル線で八日市駅に向かう間、すぐさま電車を飛び降りて写真を撮りたい!という風景ばかりだった。とくに八日市駅に着く3分前くらいの風景、忘れられない。ああ、稲刈り前にもう一度行きたい、、、間に合わないな、こりゃ。
「まず先生に、この辺の蕎麦を食べて貰わないと行けないですわ」
と 、迎えに来てくださった方が永源寺蕎麦という、生産者さんがやっている蕎麦屋に連れて行ってくださる。
永源寺というのは東近江市にある重要な寺らしい。その周辺で蕎麦を栽培する生産者組合があり、組合で運営しているのがこの店だという。
なんとこの店、 一日に15回転以上する店で、蕎麦のシーズンにはもの凄い行列になるという。この日は実は定休日だったのに、僕が来るということであけてくれたという、、、マジ?
そりゃたくさん食べないと罰が当たる!ということでまずは天麩羅盛り蕎麦の大盛り。
うううううううううううううううううううううううううううううううううううううむ
実に美味い!
滋賀県の蕎麦って旨いのね!ビックリした。秋の新蕎麦を控えて、今頃の昨年度産の蕎麦粉は、最もコンディションが悪くへたってしまっているはず。でも、そんなのみじんにも感じさせないほどにすがすがしい香りがし、そしてハッキリわかるほどに甘い。つゆはもう少し辛汁でもいいかなぁと思うけど、近江スタイルなのだろう。これもまた佳し。
生産者が打つ店って結構あるけど、美味しいかどうかは本当に人による。けど、この店はすげーレベルが高い。リピーターが多いのも頷ける話だ。
思わず天麩羅そば大盛りを食いながら、「もう一つ大盛り!」と追加オーダー。するすると腹に入ってしまった。
いやーマジで旨かった。この店にはぜひ再訪したいものだ。もうひたすら盛り蕎麦を食い続けたい。
「先生、そうしましたら、デザートにジェラートを、、、」
と、またもや移動。
「いまから行くのが、酪農家の奥さんがやってる池田牧場というジェラート屋さんです。本当に苦労されていたんですが、いまや国道から店までずっと車の行列が続くような、、、」
ええええええええええええ
近江ってところは、山の中の店に行列ができちまうんだなぁ。素晴らしい!
さて国道からグワッと山を登っていったところに、なんとも癒される風情のお店が。
■池田牧場
http://www.ikeboku.com/
なんと人気店ゆえ、店は夕方には締めてしまう。ここでも閉店後なのに滑り込ませていただいてしまった。
この方が池田牧場の奥様。ほんっとに苦労して店をやってこられたらしい。
「ここ数年でようやく軌道に乗りました、、、」
軌道に乗るもなにも、やっぱりそれはまずジェラートが旨いからである。ご主人が育てたホルスタインの生乳を低温殺菌したものでジェラートを作る。さっぱりした軽い乳脂肪分、口溶けのよさ、そして口には嫌みが残らない美味しいジェラートだ。茶色はエスプレッソ。美味しいけれども、これはプレーンで食った方がいいな。
で、実はこの隣りに建っている香想庵という店舗では、鹿肉や川魚のコースを出していて、これまた大人気だそうだ。こっちにいきたかった、、、けど、ここも夕方早くに仕舞っちゃうのである。
「鹿肉なんて」と、当初は全然お客さんが入らなかったそうだ。地域番組などで取り上げられて火が付いたらしいが、全く勿体ない話だ。いま、全国で森林に餌がないのか、鹿や猪、熊が里に下りてきている。畑の作物を食い荒らすので、これは間引かなければならない。でも、間引いた獣は食べてあげないと、処理にも困ってしまう。ジビエなのだから食べるのが吉。そうじゃないとハンターも食えないしね。
ということで是非ここもまた再訪したいのであった。
池田さんご馳走様でした! そうして東近江の役場ホールにて講演。会場の入り口には今まで僕が書いた著作や連載していた雑誌、農業新聞の掲載誌などがずらっと並んでいる。
「頑張って集めました!」
と言ってくれた中田さん。どうもありがとう。なんだか嬉しかったです。
今度は景観を撮影するためだけに行きたいなぁ、と心から思った近江出張であった。そういやこの辺は日野菜など、カブの在来種が多いところだしね。
必ずや再訪を!ご馳走様でした!