大分県佐伯市の漁港町・蒲江(かまえ)でブリやハタを養殖する漁師・村松一也さんのことは過去数回掲載したことがあるが、実に「これぞ漁師!」という豪快な体躯と話し方、そして大胆かつ繊細な行動を起こすお人だ。
その村松さんから嬉しい知らせが届いた。
8月13日から18日まで・・・なんと!盆の最中に!
東京新宿伊勢丹にて「大九州展」なるイベントがあります。
我が活き粋船団も初めて新宿伊勢丹に出展しますので・・・初のメルマガで皆様にお知らせしようと思った次第です。
お食事も「熱めし定食」などを準備しております。
物販は、漁師自慢の魚を使った加工品です。
おお! あの「あつめし」を食べることができるのか!
熱めしとは、こういうものである。
薄く切ったブリの切り身を特製の醤油ベースのタレに一晩漬けたものを、熱々の白飯の上に並べ、葉ネギと海苔、お好みでわさびを載せていただく。半分くらい食べ進んだら、、、
ここに湯気が立つ鰹だしを注ぐ!
茶漬けとなり半分ほど火が入り人肌になったブリの切り身とご飯、そして薫り高い出汁をさらさらと啜ると、、、
旨い!
こんなに旨いブリの食い方があったのか!?と思うほどの味だ。
このあつめし、一食の価値ありな食べ物だ。お盆中に在京の方はぜひ、新宿伊勢丹へ行っていただきたい。僕は残念ながら、京都~青森~高知の連戦中で、行けそうにない。
村松さんは息子さんと一緒に出店している。ぜひ声をかけて欲しい。
今、魚の養殖は非常に難しい局面に立っている。いうまでもなく原油の高騰に加えて、えさ代がいままでの2倍近くに上がってきているからだ。知らない人も多いだろうが、養殖魚の餌も輸入穀物が主体となる。トウモロコシ・大豆・麦が高騰しているということはこの餌原料も高騰しているということに他ならない。
養殖魚をイメージで嫌う人がいるが、天然魚はどこの海域で何を食べて育っているかわからない。対して養殖は、陸上の畑のように人間がコントロールできるものだ。だから素性の見え方は養殖魚の方が高いといえる。肉に比べて飼料効率は高いなど、養殖を抜きにして魚食を考えることはできないと言っていいだろう。もし、この辺の事情を知りたければ、村松さんにストレートにきいてみるといい。真摯に答えてくれるはずだ。
僕は先般、漁師の一斉ストライキの際に、各マスコミが非常に冷ややかな報道姿勢だったことに非常に違和感を覚えた。
「結局補助金めあてなのね」
というような声を、いろんな場所で聴いた。
けれども、補助金が出なかったらどうなるかといえば、消費者が直接負担する(店頭での価格が高くなる)ことでしか、漁師が生きていく方策はない。でも、一部報道にもあったとおり、現在の流通システムでは量販店などが店頭価格を決定する力を持っており、消費者に対しては安値で訴求しようという姿勢を崩さないため、価格は上がっていない。
このままでは漁師は、生業を辞めるしかない。企業努力でカバーできる範囲ではないのだから。そうしてこの国の豊かな魚食文化は間違いなく失われていくのである。
でも、あえていいたい。
補助金を交付することで日本の食が一つ支えられるなら、安いものではないか?
各地に建設されている新しい高速道路の建造費をそっちに回す方が、国民生活上重要でないの?
僕はそう思う。
みな、農林漁業は補助金を使いすぎだという。
けれども、いくらなら使いすぎでないワケ?
食は、市場経済のなかに組み込まれてはいけない。市場経済の中で、倫理は守られないと思うから。食にはお金がかかる。でも、お金の使い方として、食より大事なものって、あったっけ?
漁業・農業生産者に対する燃料費等について、補助金が交付されることを、僕は望む。村松さんの一杯の「あつめし」を食べながら、そんなことを考えてみてはいかがだろうか。