やまけんの出張食い倒れ日記

地鶏はやっぱり面白い。 JA日向・大堀さんが心血注いだみやざき地頭鶏のレバーは悶絶するほどに旨かった!

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日本農業新聞に連載している「舌好調」を読んで、僕にメールをくれた人がいる。JA日向(ひゅうが)で地鶏を担当している大堀さんだ。

さて、私は現在「みやざき地頭鶏」の担当をしております。
ご存知のことと思いますが、「みやざき地頭鶏」は県の試験場で平成2年から開発され、現在の知事の宣伝効果のおかげで知名度も上がっております。
JA日向でも平成17年からこの事業に取り組み、平成18年には種鶏場の建設し、現在11名の生産者を募り、来月には食鳥処理場が完成し、いよいよ販売を行う体制になってきました。
みやざき地頭鶏の特筆すべき点は、モモ肉は炭火焼などでご存知のとおり当然おいしいのですが、ムネ肉にしっかり油が乗っており、しっとりとなまめかしい食感であります。私はこの胸肉を薄くスライスしてしゃぶしゃぶし、ぽんずで食べるのが大好き
です。黒豚のしゃぶしゃぶにも劣らないと考えております。

そこでお願いですが、私どものみやざき地頭鶏を使った料理を考えていただけないでしょうか、素材には絶対の自信があります。しかし私どもではモモは炭火焼、ムネはしゃぶしゃぶ、ガラはスープを取って鶏飯(奄美の)くらいしか思いつきません。
山本様はさまざまなフレンチ、イタリアンの料理人をご存知のことと思います。こちらからサンプルの提供はさせていただきますので、もしよろしければご紹介いただけないでしょうか。

ということなのだ!P3260001 
「地頭鶏」は「じとっこ」と読む。大正時代までに日本に在来していた、いわゆる「在来種」の一つだ。在来種は30数種しかない貴重な鶏の遺伝資源だ。この地頭鶏の原種に劣色プリマスロックを掛け合わせた雄をつくり、そこに九州ロードアイランドレッドという、これまた在来種の血が50%はいったものと掛け合わせる。

JAS規格が認定している「地鶏」の定義の第一は、在来種となっている鶏の血が、50%以上入っていることとなっている。みやざき地頭鶏の掛け合わせでは、

祖父 地頭鶏×劣性白色プリマスロック= 父 F1(50パーセント)
祖母 ロードアイランドレッド×劣性白色プリマスロック= 母 F1(50パーセント)

で、ここで生まれた父母を掛け合わせたものがみやざき地頭鶏ということになるのだ。

鶏肉の美味しさの方程式を書くとするなら、

 

品種 × 餌 × 環境 × 飼養期間

 

となるだろう。品種の掛け合わせでそのポテンシャルはだいたい確定されるらしい。そして餌。臭みの出る動物性飼料を食べさせるか、植物性由来のものを食べさせるか、コーンを多投するのかなどで大きく変わる。そして環境とは、飼い方と飼育密度だ。地鶏と言う場合は28日齢以降は平飼いしなければならない。つまりケージで飼うものは地鶏ではない。そして、一平米あたりに10羽以下の密度でなければならない。ご存じない方も多いと思うが、鶏は気性が荒く、密度が濃いと互いにつつき合ってひどいけがをしてしまうのだ。

それにプラスして、品種の次に最も大きい要素が「飼養期間」だ。ブロイラー生産の大手企業にお話を伺ったとき、鶏の味を決める要素は?と聴くとこともなげに「期間ですよ期間。長く飼えば美味しいものができます」と仰った。

JASの地鶏規格では80日以上飼わなければならないことになっている。これはJAS規格の中では非常に理にかなっているもので、鶏の肉には70日を超えたあたりからうま味成分が蓄積去れ始めるらしい。ただし、長く飼うことはその分えさ代がかかるということだ。現在のブロイラー用品種であるチャンキーやコブといった品種は、45日で出荷体重になるように育種されている。

さて、みやざき地頭鶏の飼育はどのようにしているかというと、品種は先に述べた通りだが、飼育環境は一平米あたりたったの二羽! そして、飼養期間はメスが150日、雄が120日以上となっている。実に十分、美味しい鶏ができる条件になっているといってよい。P3260018 
地頭鶏の鶏舎に一歩足を踏み入れる。

「やまけんさん、糞の匂いが全くしないでしょう?」

本当に一切、糞の嫌な匂いがしない。これは、餌に樹皮から抽出された植物性の資材を入れて、鶏の体内における消化促進、糞尿の臭気を分解させているからだ。
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ちなみに上の写真を見ると、茶色いものから白いもの、その中間色、灰色っぽいものなどいろんな模様の鶏が居るが、これらすべてみやざき地頭鶏なのである。

「えっ違う品種じゃないの?」

と思われるかも知れないが、先に挙げたようにこの鶏は3元交配をしているため、地頭鶏・ロードアイランドレッド・白色レグホンの三種の模様が遺伝的な確率で出てくるのだ。ただし、羽をむしってしまえば肉質は同じと言っていい。P3260042 
「じゃあやまけんさん、みやざき地頭鶏を食べてください!」

大堀さんはJA職員として、みやざき地頭鶏の生産農家を指導し、食鳥処理施設の管理をしている人だ。JAという組織が養鶏でどんなことをしているか想像できる人は少ないだろうが、要するに一切合切である。

養鶏というのは、鶏を育てて出荷するまでではない。食鳥処理という工程で、鶏を〆て羽根をとり、肉に仕上げて出荷すると言うところまで入っている。その上、JA職員としてはそれを販売していかなければならない。

「うちは小さな所帯やもんで、僕一人なんですよ。でもね、食べてみればわかりますよ、うちのみやざき地頭鶏は後発組ゆえに練りに練られた味になってます。処理施設のクリンネス、トレーサビリティも完璧です!」

たしかに処理施設も見せてもらったが、素晴らしいものだった!また取り組みが始まって間もないため、出荷先はほとんどない。

「むだに冷凍してます。けれども、最初に価格をいうようなところとはつきあいたくない。うちの鶏の旨さには自信がありますから」

こういう強い物言いをされる生産者はよくいるのだけども、実質が伴っていないこともよくある。しかし、この大堀さんが愛情かけて面倒みているみやざき地頭鶏の品質は、ビックリするほどに高かったのだ!P3259881 
地頭鶏の生産者グループが出しているという「つかさ」に集結。日向市駅からちょっと歩いた中心街にある。

「本当は私が焼くのが一番オススメなんですけどもねー」

と言いながらドスドスと入っていき、大堀さん、持ってきたポスターを壁にバンバン貼る。P3259814

おおっと大丈夫?と思ったけど、どの生産者さんも大堀さんとは一心同体というような、そんな感じだ。それも当然か。生産者は生産で手一杯だ。それを加工処理して売るという行為までは、他の人がやらなければならない。畜産は生産だけでは終わらないものなのだ。

「じゃぁ、まずはやられてください」

と運ばれてきたものをみて、僕はちょっとのけぞった!

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うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
なんだこのレバーは!???????P3259820 
いわゆる白レバーはよくみかけるし食べるけれども、この地頭鶏のレバーのやばい旨さには参ってしまった!P3259823
何も付けず口に運ぶが、臭みのくの字もない!ただただ甘く、白子のようにとろけてしまうが、白子ではないストロングな味が湛えられている。 こ、これは凄まじいレバーだ!

レバーだけではない。刺身を食べれば、そのポテンシャルは明らかだ。

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まずは大堀さんが「胸肉が美味しいんですよ!」と絶賛するのをいただこうではないか。P3259846
たしかに筋繊維がビッシリと綺麗に並んでいるのがよくわかる胸肉だ!
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ところどころにサシが入っているような白い筋が見える。何も付けずに口に入れると、非常に滑らかな肉質。歯が肉の線維を切り裂く時に、確かになまめかしさを感じる。そして、明らかに感じる強い旨味。これは素晴らしい肉だ、とはっきり思う。
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JA日向の地頭鶏では、内臓肉もきちんとセットで販売するという。シェフから観れば内臓を使えるか否かは大きい。この地頭鶏の砂肝、実に美しいではないか! P3259852
砂肝の食感も柔らかくジャクジャクとしたもので、歯に楽しい。臭みはもちろん全くなし。中華で砂肝とクレソンを煮て造るスープがあるが、この砂肝でやれば絶品のものができるだろう。

そして僕が感嘆したのが、ササミである。P3259848
このササミ、胸肉よりも味が強いのではないかと思うほどにアミノ酸が湛えられた味だ!普通、ササミは淡泊なものだろう、しかしみやざき地頭鶏のササミは、段違いな味だ。しかもほのかに酸を感じる。鶏肉には酸味が発生しないのが物足りないと言われるが、このササミには酸が生まれている。もの凄いポテンシャルだ。
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もちろん、焼き物ではもも肉が出てきた。
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このもも肉がまた、150日肥育だとは思えないほどに、程よい柔らかさなのだ。焼き加減も、よくある真っ黒な焼き方ではなかったので、実に美味しい。P3259832
いやぁ、、、

参りました!

たしかにJA日向のみやざき地頭鶏は旨い。

「料理レシピを開発してくれるシェフを紹介してください」

と大堀さんがいうので、定番の東京バルバリ・アルキメーデ・井のなかには送ろうと思うが、それ以外に関心のある料理人さんがいらっしゃったら、ぜひ連絡をください。大堀さんと相談しますので、、、

あーまた食べたい。やっぱり地鶏は面白い。