やまけんの出張食い倒れ日記

日本の畜産の未来をここまで考えている人がいたか! 和牛スペシャリスト獣医師 松本大策さんとの邂逅!

さて先日の宮崎出張ではあまりにも大きな出会いがあった。獣医師・松本大策さんとの初顔合わせだ。
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獣医師というと、一般にはペットを直す獣医さん、というくらいに思われるかもしれないが、この国で圧倒的に多いのは、県の機関や家畜保健衛生所などの公的機関に属し、酪農や肉牛、養豚など、畜産の家畜に対する医療行為を行う獣医師なのである。畜産農家にとってみれば獣医師の先生たちがいなければ、医薬品の投与もできず、まさに打つ手無し。獣医さんあっての畜産なのである。

松本さんは、そうした機関に属している獣医師ではなく、独立開業した畜産専門獣医さんである。そして彼の専門分野は肉牛。

■シェパード(有)がおくる 松本大策のサイト
http://www.shepherd-clc.com/

このサイトの、松本さんのコラムをちらっと開いて欲しい。専門家でなければ意味がわからないかもしれないが、比較的平易で一般人でも読めるような語り口で、牛の病気の見分け方や処方箋などを書いている。

ていうか、なんでこれタダなの?
すっごい高度な情報じゃん!

それだけではない。彼は全国を回って畜産農家に、ごく定額な講演料で、その数十倍の価値がある畜産情報を講演して回っているのだ。

出会いは二戸経由だ。以前、岩手県の畜産課で短角牛を担当している坂田さんとどぶろくを呑んだ訳だが、その坂田さんから連絡があったのだ。

さて、先日の11月29日に肉用牛管理指導者の講習会(200人)を開催しました。
その際に、講師を依頼したのは、肉牛コンサルティング業界では超有名人の松本大策
先生でした。(先生には個人的に前から面識があります)

その日の懇親会の席でした。
『私はヤマケンという人のブログのファンで、是非、ああいう畜産を消費者向けに熱
心に紹介できる方と知り合い仕事がしたい』(松本氏)
『私、ヤマケンさん知ってます!二戸で短角飼ってますよ~』(坂田)
『何で?紹介して~』(松本氏)

とのことで、今、メールしています。

うひゃぁ
これは会わないとなぁ!

と思ったわけである。松本さんは鹿児島が本拠。でも、東京に出てくるよりは宮崎にいらしていただいたほうがいいかな、と思い、先日の講演の場に招待申し上げたわけだ。

その後、第二次懇親会でご一緒し、歓談したのだが、、、

予想以上にものすごい人であった!

「やまけんさん、私は実は、中国で大規模な肉牛肥育牧場の指導をしているんですよ。それは実は、日本の国益を守るためなんです!」

え?
中国に日本の最新肉牛肥育技術情報を流出しているの?と思ってしまうわけだ。しかしそういうことではなかったのだ。

中国ではこれまで豚肉・鶏肉が圧倒的に好まれてきていたわけだが、ここ数年の経済成長とともに、日本とおなじく牛肉をものすごい勢いで食べるようになってきている。そしてあろうことか、アメリカなどから飼料を輸入して与えるという、完全に他国依存型の肉牛生産方式へとシフトしようとしているのだ。

これを続けられると、世界の穀物相場がますます高騰し、日本の畜産がダメージを受けてしまう。だから、俺が中国に行って、アメリカ型の集約的な肉牛生産方式ではなく、できるだけ自国内の飼料で再生産でき、かつ糞尿処理問題などの環境負荷をあまりかけないような生産方式を広めてやればいいじゃないか、と松本さんは考えたのだ。つまりひいてはそれが日本のためになる、ということなのだ。

この辺のいきさつは、どんな映画にも負けないストーリーである。第二次懇親会の席は、ほぼ松本さんのこのスペクタクル満載なお話に終始したといっても過言ではないのである!

その彼が、翌日に鹿児島に移動する私を車で送ってくださった。車中での会話は相当に濃いものだった。

「日本の肉牛の格付け評価はおかしいです。ほとんどが脂みたいなA5の肉がいい、と言いますけど、黒毛和牛の一番美味しいのはBMS(霜降りの度合い)3程度のものだと思います。現に、肉牛関連の集まりにいって、お肉屋さんたちが、目の前のA5の肉をほとんど食べません。おかしな話でしょう?」

「牛さんにも農家さんにも無理をかけない。環境にも負荷をかけない。それで、健全な肉が流通して、みんなが幸せになるのが一番いいわけです。」

また、衝撃を受けたことがある。彼は、牛に食べさせる餌はすべて自分でも味わうのだそうだ。

「ぜんぶ味見します。最近では牛さんが好むもの、体にいいもの悪いものがわかるようになってきました。
最近では、コーンからエタノール燃料を生成した後に残る滓が飼料用に利用されるようになってきていますが、食べてみて非常に嫌な感じがします。おそらく、温度管理をきちんとしていないゆえにカビ毒が発生しています。これを食べさせると、家畜は病気になってしまうと思いますよ。エタノールは食用ではないので、収穫後の温度管理をきちんと徹底してません。ですから、エサ用にするなんてとんでもないことなんです」

ううううううううううううううううううううううむ。
なんとすごみのあるお話だろうか!
こんなところにもエタノール燃料による他産業への影響があるのだ。

それ以外にもいろんなお話をしたが、これから長いおつきあいになりそうだし、この辺にしておこう。
前述の松本さんのWebサイトはぜひごらんいただきたい。肉牛飼養コンサルティングいっぽんで食べていける人が、なぜかそのノウハウを公開しちゃっている。

「それがですね、情報を出せば出すほど、新しい情報が入ってくるんですよ!」

うーん
本当にすごい人である!
二戸の短角牛に限らず、日本の牛を考えていくきっかけになりそうだ。

ちなみに鹿児島にご案内いただいた後、黒豚視察調査の仕事をこなし、友人の原田君と会う。
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鹿児島のとある高校の先生である彼は、しんのすけ宅で出会った熱血漢だ。

「やまけんさん、飛行機に間に合うように、じゃんぼ餅ってのを食べましょう!」

な、なんだそりゃ?

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あ、書き方が違った。「ぢゃんぼ餅」であった。
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なんともゆるい、おばちゃんが餅を練って焼いている店内。
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これがぢゃんぼ餅である!
甘辛いタレをまとった餅が、あたたかくフカフカしてて旨い!

「この辺とおる人たちは車の中で器用に餅食ってドライブしてます」

そうかぁ、、、
この緩さがまたいい感じ。
それにしても一泊二日とは思えない密度の宮崎~鹿児島行であったのだ!