糀(こうじ)納豆という奇天烈な食べ物が、主に東北でよく食べられている。糀菌と納豆菌という、互いにケンカしそうな菌が共存してしまっている食べ物だが、もちろんすこぶる美味。しかし、東北に分布しているはずのこの糀納豆というイカした食品が、なんと先日、週アスの旅三昧取材ででかけた大分県の漁港町である佐伯市にもあったのである!
佐伯市にて創業300年(元禄からやってる!)となる糀(こうじ)屋と営む、その名も「糀屋本店」。
■糀屋本店
http://www.saikikoujiya.com/koujinatto.html
引き戸をくぐると、九代目の店主・麹師である浅利良得さんと、そのお母さんが迎えてくださる。まずは、麹から造った本物の甘酒!
酒粕を溶かして造るものだと思っている人が多いが、違うのだ。本当の甘酒は、発酵によって造られるもので、甘さはすべて米が麹菌によって糖化することで出てくるもので、実に上品でまろやかな甘みだ。
ちなみに「麹」と「糀」、どちらも「こうじ」と読む。浅利さんの名刺をみると、「麹師」とあるが、屋号は「糀屋」である。
「そうなんですよ! 一般的には”麹”を使うんですが、みてください、この麹を。菌糸が外に出て、綺麗な花のようになっているでしょう?」
といって麹をみせてくれる。
アップでみると、本当に米粒から菌糸が外に伸びて、麹花が咲いている!
「日本酒に使う麹は、米の内部に菌が張るようにします。でも、味噌などに使う麹、外側に菌糸が出てきます。みためも花のようでしょう?ですから、米に咲いた花、というイメージを大切にして、”糀”の漢字を屋号にあてているんです!」
おおおおお! 実に明快で、すばらしい話だ!
」
浅利良得さんはなんとまだ24歳!
世界を旅したりしてきた中で、家業を継ぐことを決意した頼もしい若者だ。
蔵の中は、発酵食品とくゆうの雰囲気が漂っている。
麹室は残念ながら入室禁止。デリケートな発酵をここでしているのだ。
麹室の壁にはびっしりと、元禄からの菌が住み着いているわけである。
日本酒の蔵や、東京の居酒屋でもよくみかける麹蓋(こうじぶた)。
これもずいぶん昔から使っているものが紛れ込んでいるそうだ。マニア(?)には垂涎のものだろう。
さて
糀屋という商売は、その名の通り麹を販売することが主業務であろう。しかしこんにち、首都圏などで麹なんてものを買う人はあんまりいない。なのに、佐伯市のこの店にはけっこうひっきりなしにお客さんがくるのである。そんなに手作り味噌とかを造っている人がいっぱいいるんだろうか?
「けっこうお客さんはいらっしゃいますよ! それに、うちでも味噌づくり教室やってますしね!やまけんさんも是非やってみましょう!」
ということでいきなり味噌造りである。
しかし、コレがむちゃくちゃに簡単なのだ!
まずは、すでに柔らかく茹でられた大豆をビニール袋に入れて、拳でギュッギュッとつぶす。
ペースト状につぶしたのはボウルへ。
ここに、主役の糀を入れる。
九州では麦味噌が好まれていることもあるのだろう。麦の蒸したのを投入。
これで原材料がそろった。これを手で10分ほどこねながら混ぜていく。
十分に混ざり合ったら、ゴルフボール大に丸めて容器に隙間なくびっしりと詰め込んでいく。この辺の作業は素手でやったので、手がねとねとになるので写真撮ってない。週アスに掲載されるのを待ってくだされ。
完成!塩でふたをして、雑菌が繁殖したり黴びるのを防ぐ。これで数ヶ月冷暗所に置いておけば、味噌になるのである。なんとも簡単!
「そうなんですよ、けっこう簡単なんです。これでやり方がわかって、分量も見当がつくようになったら、大豆を変えたりしてもらえば、味も変わるし自分好みに加減をできるわけです。糀はもちろん通信販売もできますから、もしよかったらご自宅で味噌を造り続けてください!」
おおおおおおおおおおおおおおおお
それは楽しいぜ!
味噌造りは数回やったことがあるが、もっと面倒なものだったと記憶していた。ちょっと俺のずぼらな性格では無理か、、、と思っていたが、これなら結構簡単だし、モチベーションが沸く!これからチャレンジしてみようと思ったのである。
「はい、おやつですよ!」
と出てきたのが、、、なにをかくそうこのエントリの主役である!
お母さんが「即席なのよ~」と謙遜するが、そんなわけがない!
中華風の具無しまんじゅうに、これまた中華餡風の小豆あんに、糀納豆なのである!
「糀納豆って、大分のこの辺じゃまったく食べたことがないものです。でも、そういう美味しいものがあるって聴いて、勝手に造っちゃいました!」
というのだが、、、
はっきり言って天才である!
こいつぁああ旨い!
糀納豆はわりとストイックに塩分濃度が高く、そんなにばかばかと食べられるものではないことが多い。純粋にご飯の友といったかんじだ。しかし、浅利オリジナルの糀納豆は、にんじんや昆布の千切りがはいり、じつに大粒納豆と糀の割合が絶妙で、ご飯がなくともばくばくと食べてしまえる柔らかめの塩分濃度だ。
すげーーーーーーーーーーーーー旨い!
何を隠そう、お土産に2パックいただいてしまったのだが、嫁さんと取り合いしながら2日で食べきってしまった。これは、いわゆる糀納豆とは別の、オリジナル商品だといっていいだろう。
いやー
感動の糀屋訪問であった。
そして朗報。新宿伊勢丹にて、このお二人がやってきて、糀納豆の直接販売をしてくれているそうだ!
新宿伊勢丹にて、
2月13日~19日の10:00~20:00まで。
場所は、催事場とかではなく、地下一階(?)の食品売り場のどこか、である。すまんそこまでわからんかった。と思って糀屋本店の女将のブログを観たら、書いてあった!
「地階シェフズセレクションのコーナー」
だそうだ。
僕も土曜日に、会いに行くつもり。
これは買って損のない食べ物だと思う。だって、糀って、日本の発酵食品の大本だ。その糀屋さんがつくってる食品なんだから。