「専門料理」の柴田書店とエコール辻 国立校、そしてうちの会社のコラボレーションで開催される「料理人のための食材研究会」の第三回が10月28日(日)に開催されます!これまで、平日だと営業のための仕込みがあるのでゆっくり参加できないというところに配慮して、日曜日開催にするという試みです。
詳細はこちら↓
http://www.shibatashoten.co.jp/modules/eguide/event.php?eid=73
今回とりあげる品種は
ホッカイコガネ
サヤカ
シンシア
インカのめざめ(新芋と一年貯蔵芋の双方)
シャドークイーン
ノーザンルビー
こがね丸
+2品種くらいとなる予定。
聞いたことがない品種が多いと思うが、最後の3品種は昨年度、北海道の試験機関が発表したモノで、ばりばりのニューフェースなのである。ジャガイモは実は年間3万品種程度が作付けされ、選抜されている。毎年新品種が世に問われているのに、まだ世間では「男爵」か「メークイン」と言われている、変な構造になっている。本当のところ、男爵とメークはもう時代遅れもいいところなのだ。
さて実は今回の帯広出張は、そのジャガイモに関しての日本最高の研究機関にいろいろご協力をいただくためのものだった。
何度来ても、帯広の風景は最高だ。都府県では味わえないダイナミックな広がりとうねりに圧倒される。
オリンパスE-410、510のWレンズキットに付いてくる、望遠ズームの方で撮影。
標準域のレンズよりも味のある風景が撮れるなぁ。持っていって佳かった!
さて
ジャガイモの育種については、北海道農業研究センター 芽室研究拠点の森先生が権威であられる。この先生には以前、季刊「やさい畑」誌面でご協力いただいたことがある。その森先生の研究室で2年半、研究助手の仕事をしていたのが、なんとこのブログにも数回登場し、ジャガイモ販売もした十勝やっちの弟さんなのである!
今回、森先生の研究室を訪問する際に「ちょうど彼も帰っているから、足になってもらいましょう」と、車で空港まで迎えに来てくれたのである。
せっかくなので、森先生の研究室に向かうまえに、更別市の岡田家の農場を訪問。
ちょうどトヨシロの収穫期にぶち当たった。でかいハーベスターが4ヘクタールの圃場で収穫作業をしているのだ。
機械が掘り出した芋が車上に流れてくるのを、一部太陽に当たって緑化してしまったものや腐敗果を眼でみて捨て去る作業をしているのだ。
通常、スーパーで並んでいるジャガイモはM~Lサイズの中くらいのものだが、業務用向けに出回っている大玉はとにかくでかい。この写真のもので2Lくらいか。まだまだ上がある。
ちなみにこれだけの広さがあると、ハーベスターも一往復するのに一時間半かかるそうだ。ハーベスターには灯がついているので、夜になっても作業は続く。
「久しぶりに帰ってきて、昨日は午前中から作業手伝いで筋肉痛です」
と笑う岡田君だった。
生食用の芋畑から数キロのところに、種芋畑があった。
ここでは岡田君が務めるジャパンポテトという、キリン系のジャガイモ販売企業の取り扱い商品だ。
赤いのがシェリー。黄色いのが、、、名前を忘れた!実は日本には多数のジャガイモが入ってきているのだ。それこそ覚えきれない。
さて森先生の研究室へと急いで移動だ。
ほいほいっと10分くらいで着くかと思ったら、40分くらいは車をぶっ飛ばしていた。北海道はやっぱりだだっ広い。
ここが、日本のジャガイモ育種の総本山だ。
先にも書いたが森先生とは、4年前に家庭菜園家むけの雑誌「やさい畑」のジャガイモ食べ比べの記事執筆の際にお話しを伺って以来だ。
このたびの「食材研究会」のために、座学部分のご指導と新品種のご提供をお願いしに来たわけだが、本当に快く受けて下さった。暗くなりかけていたのだけど、青空はとてもダイナミックなグラデーションで綺麗という状況で、ストロボを焚いて撮影。やった!意図していた絵を撮れた!
実験圃場では想像を遙かに超える年月をかけてジャガイモが育種されていた。この辺の詳細は研究会当日に詳しくお伝えしたいと思う。とにかく毎年、研究のためにどれだけの品種数が植えられているかを知ったらビビルよ!ものすごい選抜の中、くぐり抜けてきたエリートのみが品種名を与えられるのである。
「あー もうお腹減ったな。うちの育成試験中のジャガイモをいろいろと料理に使って評価してくれるレストランがありますから、そこに行きましょう」
その店は、僕が帯広の定宿にしている温泉ビジネスホテル「パコ」の道を挟んだ向かいにある福井ホテル2Fにある「バイプレーン」というレストランだ。岡田君の兄貴である十勝やっちも合流。
あいにくシェフはご不在だったが、森先生との関係を勝手知ったるスタッフにより、素晴らしいジャガイモ料理のオンパレードとなった。
↓この料理に使われている薄切りジャガイモは北海97号という新品種だ。
ジャガイモといえばチーズ。ここでジャガイモに合わせるのは有名な協同学舎のチーズだ。
芋は、紫色のが今回とりあげるシャドークイーン、赤いのがノーザンルビー、黄色いのがインカのめざめである。
出てくる料理はジャガイモが使われており、かつ豪快。
どでかい鮭の筒切りのグリルの上にはグアッとイクラがのっている。付け合わせは三色のジャガイモのサワークリーム和え。
今回の白眉は、牛ヒレステーキとフライドポテト。
皿の左側のポテトが今回の研究会で採りあげる「こがねまる」。フライドポテト適性が異様に高く、ホクホクしていて実に旨い!それもそのはず、この品種の父方はあの名品種「トカチコガネ」なのだ。冷めても旨いという特性まで受け継いでいる。
向かって左側のポテトが新品種の北海97号。ネットリ系の肉質のはずなんだけど、フライにすると若干のポクポク感がでて、煮物にして味わえるようなネトネトした食感なくなる。メークが苦手な僕でもこれは旨い!しかもこの店の技術で、この二品種は全然違うあげ方をしている。北海97号にはどうも軽く粉がはたかれ、味付けも塩のみではなくなされているようだ。こんなに旨いフライドポテトにはなかなか出会えない。しかも、ヒレ肉のステーキはモロに赤身肉で、しっかりミディアムに火が通されている。さすが北海道、牛肉の旨い食い方を熟知している!
それにしてもジャガイモを巡る状況は非常に面白い!
とにかく消費者にとってはまだ「男爵」「メーク」の世界なわけだけど、育種の世界からすれば「こんなに旨い品種がたくさん出てきているのに、なんで誰も売らないの?」という感じだ。料理人がみたら、「こんな特性のジャガイモがあるのか!」と目を輝かせること間違いなしのキャラクターが勢揃いしているのである。
ということで10月28日、関心のある料理人さんはぜひ国立に集合!していただきたい。まだ食べたことのない品種が絶対にあると思います。