練馬の南欧料理レストラン ラ・毛利がなんと保谷駅前から大泉の市民農園横に移転! 本物の農園レストランになってしまった!

2007年8月24日 from 首都圏


西武線の保谷駅といえば、農地の少ない東京における貴重な貴重な市民農園・加藤義松さんの農園がある場所だ。その加藤さんの農場にあるキッチンスペースを舞台に貸していただいて、これまで何回も「やさい畑」(家の光協会刊)誌上での野菜食べ比べの連載を書いてきた。

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ちなみにこれ↑は今季号(僕は書いていない)だけど、とても面白い内容!
家庭菜園家むけの本だけど、野菜の栽培の初歩の疑問に答える内容になっているので、万人にお勧めできる。ちなみに版元である「家の光」を「なんか宗教団体みた~い」という人が多いんだけど、これ、れっきとした農協の出版グループなのですぞ。

そのやさい畑での食べ比べ企画に、シェフの立場から参加して貰っていたのが毛利さん。保谷駅そばに南欧食堂「ラ・毛利」という粋な店を出していた。自分でも市民農園で数年野菜を作って、店でも出していたという野菜好きだ。

■ラ・毛利の過去ログ
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2004/01/la.html

そのラ・毛利が移転を考えているという連絡をもらったのは、10ヶ月くらい前のことだ。

「あのさぁ、白石さんの体験農場の脇に移ってこないか、っていうんだよ。どうしようかなぁ、勝負時かなぁとも思って居るんだけど、、、」

ええええええええええ
それは色んな意味で決断が必要な話しだなぁ、と、すぐには返答できなかったことを思い出す。
白石好孝さんは、東京は大泉の専業農家であり、都市農業の全国的な牽引役として著名な方だ。そして一部の農地を市民農園として提供していて、周辺住民に農作業の指導をしている。僕が住んでいる江東区では望むべくもない素晴らしい食農教育の場が大泉には用意されているのである。

しかし!
白石農園は周辺に駅がない場所にある。

都営大江戸線光が丘駅 バス15分 
西武池袋線大泉学園駅 バス15分 
東武東上線和光市駅 バス15分

という、正直言ってアクセスは非常に悪い立地なのだ。
うーん
大丈夫?

「んー 俺も迷ってるんだけど、、、 もう少し考えてみるよ!」

というやりとりがあったのだけど、結局彼は決断し、新天地へと旅だったのだ。
そして今月オープン。 初日から大繁盛して、今に至っても満席で予約なしでは入りにくい店になっているという。このたび、「やさい畑」の編集をしていたカンキ女史が「行ってみようよ!」と誘ってくれたので、陣中見舞いに行ってきたのである。


大江戸線光が丘駅からタクシーで1000円少しの場所、街道沿いにひょこっと店が見える。

街道沿いからの風景だと、大きく「ラ・毛利」の看板が見えるのでご安心を。

■ラ・毛利のWeb
http://www.la-mouri.com/index.html

住所 東京都練馬区大泉町1-54-11
電話番号 03-6750-7001


木が多用され、明るい雰囲気の店内は非常にいい。28席ということで、保谷時代の店舗から大昇格という感じだ。その分、ホールスタッフも、厨房内でのヘルプも増えて5人程度の女性が立ち働いていた。
毛利さんも、開店時から休んでいないようでちょっと疲れてる風だったが、店自体がうまくいっているからか、表情は明るい。

それにしてもなんといってもこの店の「売り」は、すぐ隣に拡がる農場である。

こんな風景なのだ!

「どうする? 前菜盛り合わせと数皿だしてみようか?」

「うん、どかどか出して!」

というやりとりのもと、どかどかと料理が出てきたのである。

ちなみにこの店のパンはすべて毛利シェフの手作り。

木の芽たっぷりのこのパンが美味しいので、結構バクバク食べてしまう。要注意!

イワシを軽く揚げて甘酸っぱいソースに絡めたもの。

前菜盛り合わせ。

農園レストランとはいうものの、毛利さんはガッツリ男飯タイプの人なので、野菜野菜した食べ応えのない料理ばかりというわけではないのだ。

「じゃ、そろそろ野菜ね。ちょっとこないだまで美味しい品種のトマトが出てたんだけど、切り替わっちゃったみたい。味、みてくれる?」

と言いながら出てきたトマト。

白石さんの農場やその近隣農場からやってくる野菜で、季節ごとに品種が切り替わるので、同じメニューでも日によって味が変わるわけだ。

おそらくサカタの品種だと思われるが、生食用トマトのジューシーな食感に自家製ベーコンのしっかりした塩分と燻煙香が混じり合って旨い。手の込んだ料理ではないけど、このロケーションで食べたいものといえばこういうもののはずだ!

「ほい、ニンジンと長イモ(→だったかな)のポタージュ。」


おっとこれは旨い!
見た目にはわからないが、ニンジンのパルプがザクザクと残った、ざらざらした舌触りを残したポタージュなのだ。

だいたいこういうのを出すときには滑らかになるまでミキサーにかけてしまうけど、パルプがざっくりのこっている方が”野菜感”が強くなる。カンキさんと某誌編集者Fさんも「美味しい!美味しい!」とすぐさま飲み干していた。

「はいよ、豚スペアリブとオレンジの煮込み、これはヤマケン盛りだよ!」


おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
豚とオレンジ、これぞ南欧って感じの太陽一杯な感じの一皿である。

ホッコリ崩れるくらいに煮込まれた豚肉とオレンジをざくっと切って一緒に口に運ぶ。

「!」

これは旨いね! オレンジはかなり柔らかくなるまで煮込まれているが、甘さではなくアクセントとしての香りが残っていて、その酸が適度に豚肉に旨みを与えている。

「いやー これは実は偶然の産物でできた料理なんだけどね。ディスプレイ用に飾ってたオレンジがもったいないから、スペアリブの煮込みの鍋にいれてみたら旨かったんだよ!」

ま、マジ?もう少し苦心の上でのレシピかと思ったぞ。けれども実は煮込む際に秘密のスパイスが使われていて、この料理の要は別のところに、繊細にあるということだった。

暑い盛りが旬の空芯菜のパスタ。

基本的にこの店では、通常はニンニクを使わないでパスタを仕上げるそうだ。

「なんかね、うちにくるお客さんがみんなニンニクを抜いてっていうんだよ。だからニンニクが欲しい人は最初に言っていただいた方がいいね。」

そのせいか非常に柔らかくあっさりした味わい。保谷駅前の時からの毛利さんの味だ。

ナスと挽肉のトマトソース

この時期はちょうど夏野菜の端境期で、畑にはあまりカチッとした作物がない。それこそ菜っ葉やツルムラサキといったものしか残っていないので、あまり野菜がガツーンという感じではなかった。けれども、毛利さんに相談すると、メニューに載っていないものも楽しむことが出来る(彼の手が空いていれば、だけど)。

「毛利さん、四角豆ある?」

「あるある。食べたいならパパッと作るよ!」

といって出てきたのがコレだ。

四角豆は「しかくまめ」とそのまま読む。沖縄あたりで作られているが、タイやベトナムで見かけた人もいるだろう。写真のはちょっと小さめで収穫したものだ。カンキさんが「四角豆って美味しいわよねぇ」というのに、僕が「そうかぁ?あまり味家のない豆だと思うけどなぁ」といったので、美味しい美味しくないの大論争に。でも毛利さんが出してくれたこの料理があまりに美味しくて、「ほら見なさい やっぱり美味しいでしょ」ということに落ち着いた。たしかに小さい四角豆にはアスパラのような香りがあり、美味しい。しかもトリュフソースがまたよく絡んで、豆の風味に合う! この店ではこうやって、季節の野菜をそれだけでなにか手をかけて貰って食べるというのがいい楽しみ方かもしれない。

いやー満腹。
腹ごなしに裏の農園へ。


市民体験農園は、一坪づつに区画されており、白石さんのところではみんなが同じ作物を同じように植える。

ちゃんと講義を受けてその通りに実習するという形なのだ。
なんとこの農園では豚も鶏も飼っている。

豚って元来、こうやって農園の脇で、間引きした野菜くずなどを食べさせて太らせるものなのだ。畜産の原風景。

こちらは鶏。

こんな環境の中にレストランがひょこっと建っている。

いままで東京ではきちんとした農園レストランというのは望むべくもなかったが、ラ・毛利はその第一歩を踏み出したといえる。秋の黄金期といえる収穫期には、もっと多様性のある素晴らしい野菜料理が並ぶことだろう。
それにしても
サポートがあるとはいえ料理をすべて毛利さんが作っているから、厨房がなかなか大変そうだ。

「いやー どっか行こうよヤマケン。美味しい店教えて! 刺激が欲しくてさ!」

おうおう、行きましょう! とりあえず身体をこわさない程度にやってくださいな。
ちょっとアクセスは悪いけど、練馬近辺に住んでいる人はぜひ足を運んで欲しい。
野菜をタップリ食べたいな、という方は、この店でシェフにいろいろ相談してみるといいだろう。
頑張れ毛利さん!