しばらく前になるが、事務所を引っ越した。独立してからしばらくは八重洲のレンタルオフィスを利用していたのだけど、さすがに手狭になってしまった。そこで、数社の同じような悩みをもつ仲間と一緒に、日本橋小舟町に20坪のオフィスを借り、シェアすることにしたのだ。会議室もきっちりしたデカイのを創ったし、かなり快適。
オフィス家具も買わないといけないなぁ、と思い、友人がいるIKEAで揃えようかなぁと思っていた矢先に、しんのすけの会社で働いている宇佐見君と出会った。宇佐見君は株式会社音別の社員だが、実家がなんと北海道の帯広。ご両親はウサミ木工という、北海道の木材にこだわった家具屋さんなのである。
■ウサミ木工
http://www.usami-mokkou.com/
※ちなみに、ウサミ木工のWebデザインは、僕の食い倒れ日記のMTの管理をしてくれているウエダ君なのである。
「えっ やまけんさんデスクが欲しいんですか。」
「うん、このね、IKEAのワークステーションっていうのがいいかなって思うんだよね、これで29800円だと安いしね。」
そう、ここで僕は、日頃食べものについて「安い食べものには理由がある!安さだけをものさしにして食に向かってはいけない!」などと言っているにもかかわらず、家具を選ぶ際のモノサシとしは結局「安さ」で評価をしていたのだ!
そのことに気づかされたのは、宇佐見君のお父さん、つまり宇佐見社長から、後日申し入れをいただいた時のことだ。宇佐見君が伝えてくれたのだけど、僕の心の中では社長の口から出た直接の言葉として響いている。
「あんなに「佳い食」を求めるようなことを書いているやまけんが、数年しか保たない、外材ばかり使った家具を使っちゃダメじゃないか! 家具に使われる木材も食材と同じように考えないと。 ちゃーんと100年くらい保つような家具を使わないと、やまけんの主張は信用できないぞ!」
ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
と衝撃を受けた!
全くその通りではないか!
いやIKEAの家具が悪いということは全くないのだけど、それがIKEAであるからということではなく、何より割安さという点に惹かれて、選ぼうとしていたのだ。食べものを自国の中で生産することの大切さについて語っている人間が、安さとかっこよさを尺度にしてモノを選ぼうとしていた!という現実を目の前に突きつけられ、吹っ飛びそうな衝撃を受けてしまったのだ。
「で、ですね、やまけんさん。どうせならウサミ木工に『食い倒れデスク』を創らせてください。いま、うちではストーリー家具という造り方をしていて、その家やオフィスのストーリーに沿ったデザイン、素材で家具を創るということをし始めているんです。その一環で、モニター価格で造りますよ!」
おおおおおおおおおおおおおおお
なるほどぉ ストーリー家具か!
ちなみにストーリー家具の第一弾は、しんのすけの長女・もゆに向けて造られたちゃぶ台、名付けて「もゆちゃぶ」。
■もゆちゃぶ
http://www.usami-mokkou.com/story/moyu.html
「こんな感じで、やまけんさんが欲しいと思う机をプランニングしていきましょう!」
ということでデスク作りがスタートしたのだ。
僕がデスクに求める要素は下記のようなものだ。
・とにかく広い。
・前のパーティション代わりに、目の前にコルクボードとホワイトボードを立てる。
・横のパーティション代わりに、本棚をつける。
シェアオフィスのメインスペースには、特にパーティションはない。そのため、数台並べているだけなので、よくいえばオープン、悪く言えばプライバシーが無く、集中できない感があったのだ。でもパーティション一枚で数万円するので、だったらいいやと思っていた。
ただ、アメリカで流行ったような一人一人が小部屋のようなキューブ内で仕事をするような、閉塞的な環境はいやだ。だから、前と右の二方だけをクローズドにするようなイメージを伝えた。
ほどなくして、ウサミ社長からFAXの設計メモが届いた。
ほぼ、これでOKである!
ウサミ木工もかなりの人気なようで、それから二ヶ月ほど待つ。その間、細かい採寸や仕上げの色について情報を交わす。
そして、凄まじくでかくて重い木材梱包が、オフィスに届いた!
組み立てを自分でやらねばならないとしたらかなり途方にくれる重量である。他の通販家具じゃではこんな分厚い材は使わないだろ、という感じだ。
「100年使える家具」は伊達じゃない。
セットが届いた翌日、宇佐見社長、奥様、若手社員さんが「商談で上京したついでなんで」と、じきじきに組み立てに来てくださった。
荷をほどき、ものすごいスピードで組み立てが始まった!
これが、正面につくパーティション代わりの板。ぶ、分厚いぜ!
この板の僕側には、このようにホワイトボードとコルクボードがついているのだ。
僕は、考え事をまとめる時によくホワイトボードを使う。コルクボードは備忘録代わりにメモや付箋を貼る。それが目の前にあるというのは、超・理想的な環境なのである。
そして右側面には、立派な本棚が着くのだ。
収納とパーティションの二役をこなす、素晴らしいアイデアである。本棚の固定板は机の面と同じ高さになっているので、考え方によっては机の延長としても使うことが可能だ。
完成!
ひゃあああああああああああああああ
写真ではわからないかもしれないが、実に威風堂々、軍艦のような堅牢さをもった机である!
樹脂製のオフィスデスクとの質感の違いたるや、比べものにならない、、、
本物の木を使った机というのが、これほどに心地よさを与えるものだとは思わなかったというのが実感だ。
社長もご満足の様子。
「いやーどうですか? 造っててね、かなりいいモノになるぞって思ったんですよ! こんなデザインは今のところどこにもないですね。とにかくホワイトボードとコルクボードはやまけんさんのオリジナルですよ!」
そう、なんといっても目の前の空間がこのデスクのポイントだ。
ホワイトボードでプランニングをし、ToDoを書き留めておく。コルクボードには目の保養や郵便物など、処理すべきものを留めておくという算段だ。
で、こちらが現状。
いや正直、もうちっと散らかっているのだけど(笑)
本棚が横にあることで、いちいち参考文献をあたる際に壁の本棚まであるく必要がなくなったのが大きい。ここ1ヶ月利用しているが、文句は全くない!
あ、一点だけあった。ホワイトボードにマグネットがつかないのである(笑) 次にだれかに造るときはマグネット対応にしないといけませんぜ。
ちなみにこのデスク、僕に造ってくれた仕様そのままだと20万円を超えるくらいの金額だ。一緒にシェアオフィスをしている仲間に訊いてみると、「あの質感でその価格なら全然安い」と言う。でも、材を贅沢に使っているので、もう少しパーツを薄く、ライトな造りにすれば10万円程度で造ることが可能なのではないだろうか。そんなことをウサミ君と話しているところだ。
もちろん僕は今回、モニターということで格安の支払いに負けていただいた。そういうこともあって、本稿はウサミ木工を強力に推すエントリである。いやー オーダー家具ってホントにスゴイですね。自分にぴったりどころの騒ぎじゃありません。いい仕事をしなきゃ!というモチベーションが上がります。
ウサミ木工は帯広の会社だけど、東京支部営業マンでもある息子のウサミ君が説明・相談に伺うそうなので、関心のある人はWebから連絡されたい。
「ブツをみたい」という方は、僕のオフィスへどーぞ(笑)。
ウサミ木工さん、素晴らしいデスクをありがとうございました!