いやもう言葉もない。
タイトルに書いたとおりだ。地下鉄豊洲駅の真上という超・好立地で、気取らぬ大盛りガテン系ながら、かなり高品質な中華を、しかもムチャ安な価格で提供しつづけてきたあの「秀栄」が本日25日をもって閉店するという。
この情報は、T洋経済新報社の、門仲にて数回遭遇させていただいたブログ読者さんであるY田さんからもたらされた。
僕はと言えば、納豆の登喜和食品さんのエントリに気合いが入りすぎて、通常なら1時間以上はかけないと自分で決めているブログ執筆時間を大幅に超過し2時間半くらいを費やしてしまい、かなり茫然としている時間帯であった。あーもう今週あたらしいエントリを書く気力ないな、、、と思っていたら、とんでもないニュースで本当にビックリしてしまったのだ。
よくわからないうちに、いまや埼玉県議となったモロイさんに連絡。もとはといえば彼が秀栄に連れて行ってくれたのである。
「え、まじ? 聴いてない聴いてない。俺からも連絡しておくよ」
そして秀栄に連絡。店長の小林君に「どーなってるの?」と聴くと、、、
「そうなんです。いろいろありまして、店を閉めます。もしお時間があるならぜひいらっしゃってください。写真もバンバン撮って下さい!」
と言う。これはもう訳がわからないけど行くしかない。しかし秀栄は超・盛りのいい店である。一人でいっても数皿で撃沈してしまう。ということで嫁さんを連れて自転車をとばし、豊洲の交差点脇の秀栄に入店したのであった。
明日、僕はエコール辻でのナスの食べ比べ会があるため、駆けつけることができない。
とにかく今日が食い納めだ。時間をかけてゆっくりこの店の料理を味わおう、という静かな決意を持っていた。ていっても、この店の盛りは価格対比でいえば半端ではない。一品料理で1000円を超えるのは数品。麺もご飯ものも量が多いというのがこの店のいいところだ。
「とりあえず食いたいものをガンガンいくぞ!」
ということで回鍋肉、唐揚げチリソース、四川サラダ、謎のメニューである「あれ」をオーダー。
「はいよっ!」
と店長が厨房に声を掛けてからわずか4分、回鍋肉が仕上がってくる!激速である!
甜麺醤の香りと甘辛さが絡んだ、豚肉とキャベツたっぷりのホイコーローである。この時点で飯が食いたいけど我慢!
このホイコーローを2口たべた時点で、四川サラダ到着。各種野菜の上にピータンが載り、甘辛い四川風ドレッシングがかけられたものだ。
このサラダの奥にあるホイコーローの皿をみれば、あまり減っていないことがおわかりだろう。激速で出てきたのである。
さらに!
そこにたたみかけるように「あれ」到着!
メニューにもちゃんと「あれ」と載っているこれは、豚ヒレ肉をカリッと揚げ、タマネギのみと合わせた黒酢酢豚なのである。
本当にあっという間に三品集結。
僕もかなり食べるの早いほうなんだけど、この店のスピードにはついていけない。
しかも味もきっちりとアタリがついている。
「まあウチは、どれか一つが美味しいっていうんじゃなくて、どれ食べても飯をガンガン食べられる味にしてますから!」
と店長が言う。
そう、ここは中華の一流名店ではない。
とにかく我々、飢えたやつらの満腹欲を満たす、ガッツリ濃い味大盛り系の名店なのである。
と言ってるうちにチリ唐揚げ到着。
ああ、最後だからと思って、定評のあるこの店の鶏から揚げをと思ったのだけど、色気を出して普通の唐揚げではなくてチリソースがけを頼んでしまった。
甘いスイートチリソースがかかったこれも旨いが、カリッと揚がった薄い衣の下からジュワッと肉汁が沸いてくる、この店のプレーンな唐揚げにしたほうが佳かった。うーむ失策。
続いて海鮮塩炒め。
この店、ガッツリ系と先ほどから書いているけど、実はこうしたあっさりめの味付けでも美味しい。
飾り切りされたイカの油通し加減が実にクニュクニュと素晴らしいのである。本当はXO醤炒めで濃ゆく食べたかったが、嫁さんが「あっさり系がいい」というのに負けた。これも旨い。けど、今から考えると万事濃い系で攻めるべきであった、、、
そして究極の選択!
僕の大好きなナス&肉料理をどうするか。麻婆ナスにするか、ナス味噌炒めにするか、、、
しばし悩む。そう言えば今思い出したけど、初めてこの店にモロイさんと来たときも同じ悩みをしたんだった!そして小林店長に「どっちがお奨め?」と尋ねると、彼は「どっちかというと、、、ナス味噌の方がご飯には合います!」と断言してくれたのだった。今回も同じ答えが返ってきた!
「ナス味噌が旨いと思いますよ、個人的には。」
うーむ
やっぱりこれだ!
ナス味噌の味噌は、甜麺醤ではなく八丁味噌のような(違うと想うけど)どろりと濃い味噌をベースに、海鮮醤のような甘辛めの味がからんだものだ。正直、この一皿でドンブリ二杯分の白飯を食える推進力をもった、強力な米消費用エンジンなのである。
いやーしかし
さすがに僕もこの辺で失速してきた。
白飯を一口食った瞬間に、胃袋にズシーンと来たのである。
「当たり前ですよ、うちで一人2000円も払えば絶対満腹するはずなのに、今日のヤマケンさんのペースは凄まじいです、、、」
でもこれが最後なんだもーん、、、
ということで何とかもう一皿!
「あっさりした麺が食べたい」
という嫁の願いに負け、エビそば。
広東麺的ねっとり片栗餡のスープでまったり。これはこれで美味しい。でもさすがにここでスタミナ系肉そばとかは頼めなかった。残念無念!
超満腹である。
あーもっと色々食べたかったなぁ、、、カガヤや竹にも連絡する間もなく来てしまったし、モロイさんも来られないわけだけど、もっと多人数で来れば全メニュー制覇もできたかも、、、
と思っていたら!
ブーンと自動ドアが開いて 「おっヤマケンさん!」
あーーーーー
某最大手データベース企業であるO社の敏腕営業であり、僕の大学の後輩であるミッチー夫妻が登場である! 彼はこの近くに住んでいるのであった、、、
「なんだよ 君たちあと30分早く来てくれたらさぁ、、、」
と本気で嘆いたのであった。
「あ、ヤマケンさん、うちの社長です。」
おおお!
小林店長のお父さんであられる社長さんがいらっしゃった!初対面が最後の訪問になるとはなぁ、、、
「いやぁ 本当に申し訳ありません、、、 ”諸事情で”としか言えないんですが、辞めざるを得なくなりました。この店はお客様も沢山入っていただけて、経営的にも全く問題はないんです。でも、、、 仕方がないんです。」
うーん うーん 詳細はわからないのだけども、どうにも仕方がないことらしい。
「うちは昭和47年から店をやってました。今年で35年ですか、、、前の店舗はこんなに綺麗な店じゃなかったんですけど、豊洲の再開発でこうして綺麗な店にして。」
え、昭和47年創業!? 俺の一つ下ってことだ、、、
「でもね、うちはとにかく『美味しい店』ていうよりも「『どこよりも盛りが多くて、安い、そんで速い!』という店にしようと思ってたんですよ! だからね、うちは中華鍋は常にガンガンに火を当てて、注文が入ったらすぐさま料理できるようにしてます。そのせいで、普通なら一年くらいは使っていられる中華鍋が、数ヶ月でベコベコになって穴があいちゃう。そんな店なんです。」
なるほど!
激速で料理が出てくるのは、ちゃーんとこの店を貫くポリシーだったのだ!常に鍋を温めておくことでとにかく初動を速くすることができているという訳だったのである。
しかも、この店の揚げ物や炒め物を食べても、劣化した油のいやな風味がしないし、あまり胃がもたれることがない。これは油が新しいからだと思っていた。
「はい、うちはとにかく一杯食べていただいて、回転をよくして、ていうかんじでやってますから、、、」
そう、美味しくて安いということでお客さんがどんどん入る。利は薄いかも知れないけど、材料も回転していつも新鮮、中華の質の大部分を決める油も、酸化しないうちに使い切ることが出来るという訳だろう。
「本当はあんまりお客さんには言わないで、静かに閉めようとおもってたんですけどネ。やっぱりもういいや、やまけんさん、書いてくださいョ。明日は夜の12時くらいまでは店を開けますんで」(社長)
「そうそう、ばーんと話を大きくしておいてくださいね(笑)」(店長)
ということで、ここに告知である。
豊洲の宝物のような店 「秀栄」 が本日で閉店である。ガッツリ系に別れを告げるなら今日しかないようです。心おきなく食べられますよう、、、「12時までやってる」というのはおそらく変動する(材料がなくなったりね)はずなので、遅くなりそうならお店に確認の連絡をした方がいいと思います。
最後に小林親子を記念撮影。
「社長、もう店、やらないんですか?」
「うーん 今はね、気持ちが下向いちゃってます。けどね。しばらくして、こうグワッと気持ちが持ち上がってきたら、、、私もまだまだ引退には速いですし、、、やってみたくなるかもしれません。」
小林社長、そして店長。豊洲でなくても、この味と盛りと激速を体現する店をまたオープンするのであれば、駆けつけますよ! 一ファンとしてその日を夢見ています。
それにしても
豊洲での秀栄伝説は今日でいったん終わりを告げる。素晴らしい店でした。
スタッフの皆さん、お疲れ様でした。最後の一日、有終の美を飾ってください。ありがとうございました。