4WD車の雑誌で有名な4×4マガジン社で、僕の食い倒れガイド(全国版)を担当してくれたM島さんから久々に連絡があった。
「やまけんさん、盛岡じゃじゃ麺、好きですよね? 僕の飲み仲間がぜひ連れて行きたい、東京のじゃじゃ麺屋があるっていうんで、行きましょうよ!」
彼は会社を辞め、北砂であたらしい仕事をしている。今読むと、よくあんな殺人的なスケジュールでこの本が出たもんだと思わざるを得ない。そういえばこの本を出す時に、デジタル一眼レフカメラを購入したのだ。M島さんに相談して、EOS KISS Digital N を購入。交換レンズにはEF-S10-22mmという超広角レンズを購入した。その頃はレンズに広角・標準・マクロという区分けがあることも知らず、よくわからないままにプログラムモードでカシャカシャやっていたのだ。今は昔、、、
さて目指す店は駒澤大学駅から歩いてすぐの、246と環七の交差点付近にあるという。M島さんの飲み仲間というのは、やはり4×4社をお辞めになったO木女史。年齢を訊いてびっくりの美女である!
「あのね、やまけんさん盛岡じゃじゃ麺は「白龍」も「香醤」も行ってるでしょう?これから行く店は、その両店のどちらでもない味なんですよぉ~」
白龍は盛岡市のじゃじゃ麺のオリジナル店である。
そして香醤は繁華街で夜遅くまで営業してくれている、コッテリ味の店だ。
■白龍
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2005/03/post_500.html
■香醤
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2007/02/post_974.html
その両店の中間値を目指す、てことなのだろうか、興味がわく!
ちなみにこの近辺にはじゃじゃ麺を出す店がもう一軒ある。三軒茶屋にある「じゃじゃおい軒」である。
■じゃじゃおい軒
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2004/01/1.html
「じゃじゃおい軒も美味しいんだけど、これから行く店はまた違う味なんですよぉ~。 ただ、最初からじゃじゃ麺だとそれで終わっちゃうんで、その三軒となりにある魚の美味しい店にお連れします。実はそこのご主人が、そのじゃじゃ麺の味も監修しているんですよ。もちろん盛岡出身です。」
話がややこしくなってきた!
整理すると、その新しい盛岡じゃじゃ麺屋は盛岡出身の人がオーナーで立ち上げた店だ。しかしそのオーナーは料理人ではないので、友人である魚料理店のご主人に味の監修をお願いした。そしてじゃじゃ麺屋の立地は、魚料理店の3軒となりである。
「しかもね、その二人は出身校が一緒、盛岡一高の同級生なんですよ。」
ほほーう
なるほどね。学閥とはことほどさように強い絆なのである!
「ここです、ここがその魚料理の店「壱番館」です!」
■くいもの市場 壱番館
東京都世田谷区野沢2-34-1
魚が旨い店ということで、和風居酒屋風のしつらえを予想していたら全然違った!
ご主人の小野さん。カウンターとテーブルだが、品書きには鮮魚のポワレだとか、洋風のメニューもずらずらと並ぶ。
「刺身も寿司も、洋風料理も美味しい店なんですよ! あとね、今日はやめときますけどカレーが絶品なんですよ。でも、じゃじゃ麺があるから、ここは軽~く」
とO木女史が仰るが、この店、予想外に実にしっかりと、気の利いた美味しい魚を食べさせる店だったのである!
メニューを見ると、たいがいの品が1000円前後。ネタにもよるが、この日出てきた魚の内容を見ると、かなりリーズナブルな内容だった!
白海老のブルスケッタ
オクラと叩いて、カリッと仕上げたバゲットに乗せ、オランデーズ風のソースを軽くかけてある。
薄く焼いたベーコンを敷いてあるのが、ワインを誘う、、、けど後があるので呑まなかった!
金目の昆布締め。
「普通の、水分が脱水しきっちゃう昆布締めじゃなくて、水分を残した〆め方です」
というとおり、確かにジューシーで身のしっとり感が残っている。
マコガレイとあん肝も美味しゅうございました。
そしてこいつが実に秀逸。
ハモの骨切りを軽く炙って、梅肉を添えたものだ。
梅肉も火を通してあることに注目。焦げ目のついた紀州の梅干し(本干し)はサツマイモのような風味がつく。これを、身側はほぼ生のハモに巻く。ちなみにハモは皮付き。
身がふんわりと口の中で広がり、細かな骨の食感を感じつつ、酸味のおとなしくなった梅肉の塩分を愉しむ。これはイケル!
「ハモは皮が美味しいんですよ。ぜんぶ愉しむ方法としてこういうのを考えました」
キンキの刺身。
金目に似てるくせに、身の旨さはまったく違う。モロモロモロ~っと溶けていくのだ!
鳥貝の生。ビシッと皿にたたきつけるとクニョーリとのたうつ。身は限りなく甘し!
ツユイサキ と エボダイの炙り。
ツユイサキの清廉な味わいがたまらん。エボダイも、干物を食べるのと世界が違う!
こんなに旨い刺身になるんだよな、、、
鰹とマグロ。
サザエ、どこのだったかな。ちなみに全部、出てくる魚は産地を言ってくれていた。
佐島のタコ。穴子のツメをたっぷり塗ってある。
サザエ。
ウニをアワビの貝にぎっしり詰めて焼いたもの。
ウニには当たり前のように、ミョウバン無し。
貝の下の方には海藻を詰めて底上げしているかと思ったら、まったくしてない。最後までウニがぎっしり。
「この、貝のキワの部分の焦げてるところが旨いんだよね!」
と、一同でがじがじとスプーンでこそぐ。
キスの昆布締めとコハダ。まだシンコには早かったが、寿司も旨し!
小野さん、いろいろと魚の解説をしてくれながら、ネタをひろげては料理にしてくれている。
「これ、なかなか手に入らない純国産の筋子です!」
筋子の汁が酢飯に滲むのが溜まらなく旨い。何も漬けずに純粋に筋子の熟れた塩分で堪能できた。
赤なまこ。これも国産の立派なものだった。
断面の滑かさ、美しさ、そしてシクーっと歯の通っていく食感がイイ。
「はい、じゃあそろそろじゃじゃ麺もあるからここまで!」
といって出てきたのが、島らっきょうの浅漬けを天ぷらにしたもの。
いやー
マジで旨い。駒澤大学でこんなに旨い魚を食えるとは思わなかった!
訊けば近くに魚の卸があり、それ以外にも重要なネタは小野さんがじっこんにする産地から直取引で買い求めているそうだ。
それにしても、この料理群を愉しんでいる間中もずっと、話題は岩手県、そして盛岡一高のネタであった。
「やまけんさん、福田パンをブログに書いてたけど、俺たちは給食であのこっぺを食べてて、不味いパンの代名詞だったよ!」
えええええ マジすか?
「いまNHKでやってる連続ドラマ、盛岡が舞台で主人公がじゃじゃ麺食べてるシーンが出てくるけど、あのじゃじゃ麺の肉味噌は赤色すぎて、盛岡じゃじゃ麺とは違う! あれは中華料理のジャージャー麺の味噌だ! 実はNHKに相当の抗議電話が殺到してるらしい。岩手を舐めたらいかんよ!」
などと、岩手話しで盛り上がり続けたのである。
「さぁーて、じゃあ3軒となりでじゃじゃ麺を食べましょうか!」
(つづく)