23日20:40 一部修正
岩手・陸前高田編はまだまだ続く。
素晴らしい醤油蔵である八木澤商店と、酔仙酒造を訪れた後に向かったのは、夕暮れに染まる広田湾である。
「いやー 本当は3時半くらいにはここに着いて海に出ていたはずだったんだけどねぇ!」
とS藤氏。盛りだくさんなのでホントにスケジュールが押し押しになっている。果たして、岩手県南部の陸高から北部の久慈市まで本日中にたどり着けるのかちょっと心配!でもまあいいや、、、
「ぜひやまけんちゃんにこの広田湾の旨いもんを食べて欲しいのよ! 俺の仲間の最高の漁師を紹介するからね、、、」
と言いながら、車を着けたところは、中型の漁船がスタンバイしている真横である。
「彼がね、漁師・佐藤カズオちゃんです!」
と紹介していただいたのが、ビシリッと海の男っぽい雰囲気を漂わせたこの方だ。
「じゃあまあ、ライフジャケットだけ付けて貰って、すぐに牡蠣の養殖場までお連れしますよ」
ブオンと唸るエンジン、そして急速発進。グワーっという舟の推進力と、正面からの風を感じて鳥肌立つ。
写真は、EOS KISS DN をISO1200(だったっけ)にして、しかもF2.8と明るく、手ブレ補正機能がついたレンズで撮影したので明るく見える。しかし実はもうかなり真っ暗に近くなっている状態なのであった。
ちなみに
この広田湾の牡蠣は非常に有名なブランド牡蠣である。高級料亭やレストランにしか並ばないといわれる、最盛期の牡蠣は本当にブリンとデカク旨い、という。
広田湾の牡蠣が有名なファクターの一つが「森は海の恋人」というフレーズである。訊いたことある人もいるだろう、この陸前高田の港の向かって右側の半島は宮城県唐桑(からくわ)町(現在は、市町村合併で宮城県気仙沼市)で牡蠣養殖を行う畠山重篤さんが書いた本のタイトルだ。畠山さんは気仙沼に注ぐ川の上流に植林活動をし、湾に注ぎ込む水の浄化を推進している人だ。その彼が、気仙川が注ぐ広田湾の牡蠣は素晴らしい品質だと書いている。もの凄い説得力なのである。
※畠山さんは陸高ではなくお隣の気仙沼市の方でした。間違えましてもうis訳ありません。
森は海の恋人 畠山 重篤 文藝春秋 2006-09 by G-Tools |
牡蠣礼讃 畠山 重篤 文藝春秋 2006-11 by G-Tools |
「まあそれもあるけど、まずは牡蠣を観て、そんで食べてみてください! それじゃあ養殖中の牡蠣を引き上げますよ!」
というが早いか、養殖場の生け簀のなかにフックを入れ、ガラガラガラとモーター駆動で引き上げ始めた!
佐藤さんが、海藻などにまみれた牡蠣の殻をバシッと音を立ててつかみ取り、牡蠣剥きナイフをシャカシャカっと牡蠣殻に差し込み剥き始めた!
この牡蠣剥き、実は僕も大好きだ。手ではなく肘をやわらかく、大きく振りながら刃先をねじ込んでいくと、ある瞬間に貝柱が切れ、スカッと力を入れなくても殻が開く、あの瞬間がいいんだよね。
と思ってる内に、見事に短時間で牡蠣殻がシャカッと音を立てて開いた!
うお で、デカイ!
僕の手はおおかたの人より小さいんだけど、この写真に出ているのは、実寸大から一回り小さくした位。ひとまわり小さくしたってデカイ! いま手を重ねてみて確認したのでホントなのである!
これはもう、タマランね!
ツルリっと一呑み!
口の中に瞬間的に溢れる磯の香りと、思ったより強い塩分!
冷たく滑らかな流体に歯を入れると、塩分に旨みが加わる。牡蠣の身がジュースを滲ませながらとろけていくのだ!海のミルクとよく言うけれども、クリーミーというのとはちょっと違う、もっと潔い上品なとろけ加減。そしてあまりに芳醇な旨み成分!
「ぐああああああああああああああああ 旨いッスよ!!!!!」
ヤバイ、これは本当にヤバイと思った。マジで激ウマである。
これを観ていた皆さん、佐藤さんがひたすら剥き続ける牡蠣に殺到!
スミマセンおいら3個も食べちゃいました。
それにしてもデカイ!
この、殻からはみ出そうな、ていうかまさにはみ出たお下品な大きさは何なの!?
しかして味は上品、濃厚、芳醇!
食べながらクラクラしてしまったのである。
広田湾の牡蠣は、漁師や農家が共に森や川を守りながら成立させているものだ。植林や保全のコスト負担は、漁師だけの論理では受け入れられるものではないだろう。この地域の資源全体を守るために立ち上がった人たちがどれくらい居るんだろうか、すげえなぁと思う。八木澤商店の人々や、船上では寡黙な佐藤さんを観ていると、この陸高はやたらと意識の高い人たちがいるんだなと嘆息してしまうのだ。
ここから2週間ほど後日、佐藤さんから牡蠣が届いた。
牡蠣剥きナイフが同梱され、15個ほどの牡蠣が殻付きで入っている。
築地市場では驚くべき高値で売られているこの広田湾の牡蠣が、漁師直送だと本当に驚倒すべき安値で販売されていることを知った、、、
佐藤さんが今年度の販売を開始する時には、このブログでも紹介したいと思う。もう、マジでスゴイ牡蠣ですよ。
とりあえずビジュアルだけ味わっておいて欲しい。
「さてじゃあ、この牡蠣と魚を使って旨~い料理を作ってくれるところに行きましょう!」
時計の針はもう18時を指している。
しかし旨いものがあるならば、行かざるを得ないのである。